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  • 2016.02.24

ビートたけし主演!中年男と若い女に覗き見る狂気『女が眠る時』

一週間の休暇で妻とともにリゾートホテルに訪れた作家の健二は、妻との倦怠期を迎え、作家としてもスランプに陥っていた。そんな彼が目を奪われたのは、初老の男・佐原と若い女性・美樹の怪しげなカップルだった――。ビートたけし×西島秀俊の豪華タッグで描く、ウェイン・ワン監督最新作。

たけうちんぐ 映画 女が眠る時 ウェイン・ワン
©2016 映画「女が眠る時」製作委員会

 好奇心は欠かせない。そうじゃないと映画はまず観ないし、このサイトだって開かない。「なぜ?」が生まれるとその理由を見たくなるし、この世のすべてが知り尽くされたと思いきや、まだまだ未知なことがたくさんある。

 人の心もその一つだ。男と女の違いだって、いくら辞書を読んでもネットで検索しても、その答えは出てこない。本作の健二はそれを自らの足で探し、現実と妄想の狭間でもがき苦しむ。

『スモーク』などの香港出身のウェイン・ワン監督が、スペイン人作家ハビエル・マリアスの短編小説を映画化したミステリー。

ビートたけしが醸し出す“狂気”

 海外のクリエイターの才能を取り入れながら、キャストは日本映画界屈指の俳優陣が勢ぞろいしている。ビートたけし、西島秀俊、忽那汐里、小山田サユリ、リリー・フランキー、新井浩文といった顔ぶれが、現実と妄想が入り混じる“狂気”の物語を組み立てる。

 ビートたけしが自作以外の主演を務めるのは12年ぶり。彼が演じる中年男・佐原のキャラクターだけでも一見の価値があり、その存在感が作品全体から醸し出す“狂気”を支えている。

その好奇心は男の哀しい性なのか?

たけうちんぐ 映画 女が眠る時 ウェイン・ワン
©2016 映画「女が眠る時」製作委員会

 健二(西島)には理解のある編集者の妻がいる。作家としてスランプに陥ってるとはいえ、新たに就職先も決まっている。小説がヒットとして世間に一度は才能が認められたんなら、別にいいじゃん。結婚してるし、リア充じゃん。

 でも、そう上手くはいかない。人間とはこうも欲が深く、好奇心に突き動かされる生き物なのか。健二の行動からそれを思い知らされ、男の哀しい習性が浮かび上がる。佐原(ビートたけし)と美樹(忽那汐里)の謎めいたカップルが引き金となり、好奇心ゆえに健二は窮地に追い込まれていく。

 プールサイドで佇む健二の冷めた目つきよ。妻の話し声を聞き入れず、セックスも最後までいかない。妻はもはや女ではないのか、物語として完結してしまっているのか。女は多少謎めいていたほうが、物語として次のページをめくりたくなるものか。そこに安全なんて約束されていないのに、男はなぜ、わざわざ茨の道を進もうとするのか。

 そこには健二の作家としてのプライドだけでなく、男としての本能が詰め込まれている。リリー・フランキー扮する居酒屋店主のセリフ、「面倒くせえ女とか振り回すような女とかに追いすがるってのは、オスの習性なのかね」がまさにそれ。思えば、男は少年コミックで、女は少女コミックで育った。少年コミックのような刺激的な冒険心が備わっているのは、男の哀しい性なのかもしれない。 前売り券はこちら

日本映画界を代表する俳優陣の、ここでしか見れない“狂気”

たけうちんぐ 映画 女が眠る時 ウェイン・ワン
©2016 映画「女が眠る時」製作委員会

 西島秀俊が中年男と若い女のカップルをストーキングする――。これだけ見ると拍子抜けを食らうような設定だが、後半から健二の鬼気迫る表情に移り変わっていく様はスリリング。
観客は健二と秘密を共有してしまい、真相を突き止める刑事が迫ってくると健二同様に怯えてしまう。刑事を演じる新井浩文の演技が良い意味で憎たらしく、今の日本映画界を代表する俳優陣の“狂気”が揃っている。

 とにかくビートたけしの存在感に圧倒される。『バトル・ロワイアル』『血と骨』『劇場版MOZU』などと強烈なキャラクターを演じてきた彼だが、今作の佐原も悪夢に出てきそうな邪悪なムードを放つ。美樹の産毛をカミソリで剃うシーンでさえ、ロリコン的な気持ち悪さを感じず、怪しげな狂気だけが鮮やかに濾過されて残るのは、彼の役者としての才能か、それともウェイン・ワン監督の手腕か。

 ホテルの室内に忍び込んだ健二が、ベッドの下に隠れて佐原と美樹の言い争いを聞く場面もそう。健二から見える佐原の足元だけで、全身が凍りつきそうな緊張感を放ち、少し角度を変えるとマヌケにも恐怖にも感じさせる佐原の表情が独特。監督としてだけではなく、役者としても日本映画界で重要な存在であることを改めて知る。

 結局、好奇心の行き着く先はどこにあるのだろう。女の謎めいた部分を全て解明したら、健二は次に何を探し求めるのだろうか。
俳優たちが体当たりで挑む好奇心と狂気の物語の結末を、その目で確認してみてはいかがでしょうか。

あらすじ

作家の健二(西島秀俊)は妻の綾(小山田サユリ)とともにリゾートホテルで一週間の休暇を取っていた。二人の関係は倦怠期を迎え、処女作はヒットしたもののその後スランプに陥り、就職を決めた健二は作家の人生を諦めかけていた。

 そんな中、健二はプールサイドで初老の男・佐原(ビートたけし)と若くて美しい女・美樹(忽那汐里)のカップルに目を奪われる。なぜ年の離れた二人は一緒にいるのか。謎めいた存在に居ても立ってもいられず、健二は二人を尾行し、さらにはホテルの寝室に忍び込むというストーカー行為にまで及ぶことに。

 やがて知る二人の真実と、目の当たりにする佐原の美樹に対する執着。そこで健二が垣間見た“狂気”とは――。

2月27日(土)、全国ロードショー

監督:ウェイン・ワン
キャスト:ビートたけし、西島秀俊、忽那汐里、小山田サユリ、リリー・フランキー、新井浩文、渡辺真起子
配給:東映
2016年/日本映画/103分
URL:『女が眠る時』公式サイト

Text/たけうちんぐ

ライタープロフィール

たけうちんぐ
ライター/映像作家

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