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  • 2016.02.06

人妻に若き女性が一目ぼれ!男の所有物から脱する愛の逃避行『キャロル』

エレガントで美しい人妻・キャロルに、若き女性・テレーズが一目惚れ。男の所有物から脱する2人は、愛の逃避行に出る——。本年度アカデミー賞最有力候補! ケイト・ブランシェット×ルーニー・マーラが描く一つの愛の形とは。

たけうちんぐ 映画 キャロル
©NUMBER 9 FILMS (CAROL) LIMITED / CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION 2014 ALL RIGHTS RESERVED

 “禁じられた愛”と呼ばれるラブストーリーは、今までいくつも映画化されている。
それはどれも世間からの重圧に押しつぶされ、悲劇的な結末を迎える。

 物語に限らず、昨今ワイドショーを賑わす芸能人の不倫だってその代償は惨たらしいもの。
世間からのバッシングは絶えず、人気の絶頂からどん底へ叩き落とす。

 様々な愛の形が少なからず寛容的になってきた現代でさえままならないのに、この映画の2人の女性は1950年代に禁断の愛を貫き通していた。
見せかけの愛じゃない、心のままの愛。今年のアカデミー賞を賑わすに違いない、現代に生きる我々に訴えかける一つの愛の形です。


あの名女優がスクリーンで光り放つ


『太陽がいっぱい』などで知られる女性作家パトリシア・ハイスミスが別名義で発表し、1952年にベストセラーになった『ザ・プライス・オブ・ソルト』を、『エデンより彼方に』のトッド・ヘインズ監督が映画化。

 主演のキャロル役は『ブルージャスミン』のケイト・ブランシェット。
今回も同じく高貴な女性を演じるが、プライド故に自らの人生を崩壊されていく女とは性格が全くの真逆だ。
その相手、テレーズ役を演じるルーニー・マーラ…こんなに美しかったっけ? って戸惑うくらい輝きに溢れている。

 眉毛の凛々しさ、鼻筋の通った輪郭、大きな瞳がオードリー・ヘプバーンみたい。
『ドラゴン・タトゥーの女』で見せた姿がまるで別人のよう。可愛さや美しさじゃない、この振り幅こそが本物の女優なのだと言わんばかりの存在感を放ちます。


幸せ”そう”な女性が提唱する愛の形


たけうちんぐ 映画 キャロル
©NUMBER 9 FILMS (CAROL) LIMITED / CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION 2014 ALL RIGHTS RESERVED

 キャロルは一見、とても幸せ”そう”に見える。
エレガントなコートを身に纏い、お金持ちの夫と可愛い娘を持ち、気品溢れる家の中で今日も一人で佇んでいる。
誰もが憧れるように見えるが、彼女にとってそれは生き地獄。
女は男と付き合う。女は男を立てる。女は男とともに歩む。
これがある種の“常識”とされていた時代、その常識の牢屋に閉じ込められ、見えない手錠をはめられているかのようだ。

 テレーズもまた、自分で物事をはっきりと決められない性格が災いし、彼氏との将来の展望が見えないでいる。
一緒に旅行に行かないことを告げて激怒される彼女も、キャロル同様にどこか男の所有物のように扱われている。
そんな二人が出会い、テレーズが初めて自分で自分の人生を決断した瞬間に運命は一変する。

 ケイト・ブランシェットもルーニー・マーラもこの人しか考えられないと言えるほどの役の入り込み方で、まるで実在する人物のよう。
60年前のニューヨークが舞台とはいえ、全く色あせることなく現代に生きる我々に一つの愛の形を提唱する。

<『キャロル』の前売券>


映画の終わりは2人のはじまりを告げる


たけうちんぐ 映画 キャロル
©NUMBER 9 FILMS (CAROL) LIMITED / CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION 2014 ALL RIGHTS RESERVED

 同性愛を描いた映画は悲しい結末を迎えがちだけど、本作は違う。
二人の物語は、この映画だけで完結するつもりはないのだろう。

 確かに、キャロルとテレーズには悲劇は似合わない。
映画はエンドロールを迎えても、その後も登場人物は生き続ける。
その想像の余白をちゃんと作ることで、同性愛が精神病扱いされていた時代に、確かに愛し合っていた2人が存在したこをを慈しむように切り取っている。

 現実世界の多種多様な愛の形に最上級のエールを送るかのように、映画の終わりは2人のはじまりとして幕を閉じていく。
 どのシーンも絵画のごとく美しい。
それは“テクニカラー”という特別な彩色技術が施されているからだ。
1950年代のニューヨークとその時代に作られた映画作品を再現し、地下鉄から地上へカメラが浮遊して車のライトや街灯を映すオープニングは、昨今の映画と一線を画す。
テレーズが車窓から眺める景色すべてが独特な光を滲み出していて、それを見るだけでも一見の価値がある。

 たとえお金を持っても、安定した暮らしが約束されても、愛に生きていなければ息苦しいだけ。

 そんなキャロルの生き方に、テレーズのように惹かれる人は少なくないはず。
何が正しくて間違えているのか。
時折判断がつかなくなる現代に生きる我々に、2人の愛が容赦なく突き刺してきます。


あらすじ


 1952年、ニューヨーク。

 デパートでアルバイトをするテレーズ(ルーニー・マーラ)は、娘へのクリスマスプレゼントを探すキャロル(ケイト・ブランシェット)に目を離すことができない。
美しくて高貴でどこか謎めいている彼女に見惚れ、魅了されていく。一方、キャロルは別居中の夫と揉め、離婚の意思を固める。
親密になったテレーズに八つ当たりをしてしまったキャロルは、電話で謝り、テレーズのアパートを訪れることになる。
二人は互いに惹かれあい、自分に正直に生きようと決意する。そして思いつくままに西へと向かう旅に出る――。


2016年2月11日(木・祝)より、全国ロードショー

監督:トッド・ヘインズ
キャスト:ケイト・ブランシェット、ルーニー・マーラ、サラ・ポールソン、ジェイク・レイシー、カイル・チャンドラー
配給:ファントム・フィルム
原題:CAROL/2015年/アメリカ映画/118分
<『キャロル』の前売券>

Text/たけうちんぐ

ライタープロフィール

たけうちんぐ
ライター/映像作家

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