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  • 2015.05.23

大泉洋の優しさにドキッ!?離縁を求める女たちが駆け込んだ縁切り寺『駆込み女と駆出し男』

幕府公認の駆込み寺・東慶寺に離縁を求めてやって来る女たちの悩みを、戯作者に憧れる駆出しの医者・信次郎が次々と解決していく——。井上ひさしの時代小説を原案にした、大泉洋主演のコミカルな時代劇。

 昔々、あるところに、女の離縁を手伝う寺があった。
江戸時代というと、女は男に仕え、亭主関白がまるで当たり前のようなイメージ。事実、召使いのように命令され、虫けらのように虐げられた女性たちは、必死の思いで寺に駆込んだという。

 時代劇とはいえ、その女の生き様は現代に通ずる。誰の物にもならない女が力強く歩いていく道筋が、ここに何本も描かれている。そんな希望に溢れた人情エンタテイメント映画です。

     
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©2015「駆込み女と駆出し男」製作委員会

『クライマーズ・ハイ』『わが母の記』など海外でも評価が高く、娯楽作品を多く世に送り出す原田眞人監督が、井上ひさしの時代小説『東慶寺花だより』を原案に映画化。江戸時代の鎌倉を舞台に、監督自身の初の時代劇に挑みます。

 主演は『探偵はBARにいる』『青天の霹靂』など、映画に限らず舞台やテレビで活躍する大泉洋。戯作者に憧れる駆出しの医者を演じ、愛嬌たっぷりの主人公に。
駆込む女に、戸田恵梨香、満島ひかり、内山理名という錚々たる顔ぶれが集い、樹木希林、堤真一、山崎努といった日本映画界に欠かせないベテラン俳優が重要な役柄で脇を固めます。


台詞回しが光る!縁切りを巡る男と女の悲喜こもごも


【簡単なあらすじ】
 江戸幕府公認の駆込み寺・東慶寺は、離縁を望む妻が駆込み、問題解決を手伝う拠り所だった。その御用宿・柏屋に居候する医者見習いの駆出し戯作者・信次郎(大泉洋)は、主人・源兵衛(樹木希林)とともに、駆込んできた女性の事情を聞き出し、再出発の手助けをしている。

 ある日、鉄練りの仕事をしているじょご(戸田恵梨香)が駆込んでくる。暴力をふるい、身勝手に振る舞う亭主と離縁したいと申し込む。彼女の顔は焼けただれた痕があり、信次郎は治療を施す。

 最初は信次郎に抵抗していたじょごの心は次第に打ち解けていき、その後もお吟(満島ひかり)、ゆう(内山理名)もそれぞれ事情を抱えて寺に駆込んでくる。信次郎は親身になって対応し、彼女たちの問題を次々と解決していくーー。


たくましい女図鑑と憎たらしい男図鑑


 もし、時代劇に抵抗があるならご心配無用です。会話のスピード、テンポ共に、もはや現代劇のノリで一瞬にして共感を抱かせてくれます。
駆込む数ほど悩みがあり、自由を求める女性がいる。重苦しい表情のじょご、お吟、ゆうの3人が次第に笑顔を取り戻していく様が気持ちよく、その原因を作った男たちが苦悩する様が情けない。

 特にじょごを奴隷のように扱い、精神的にも肉体的にも虐げる亭主の振る舞いは「今すぐ打ち首に!」と世の女性の気持ちを一つにしてくれる。共感以上の連帯感が映画館で生まれるのではないでしょうか。
「こういう男ムカつく!」のオンパレードで、その男たちを見返すように自由の道を歩いていく女性の力強さに快感を覚えるはずです。

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©2015「駆込み女と駆出し男」製作委員会

 また、東慶寺の「女社会」を描いていて、女だけしかいないからこそ起こりうる問題も発生。信次郎が来ただけで「若い男が!」と騒ぎ始めたり、嫉妬と憎悪が入り混じる側面もきちんと取り入れています。

 現代に生きる全ての女性の背中をそっと押してくれるような、押し付けがましくない優しさが満ち溢れているのはなぜか。その理由は信次郎の憎めないキャラクターにあります。


江戸時代にも草食男子はいた?


 気弱だけどいざという時に頼りになる。優しいけど時に厳しくアドバイスしてくれる。そして何より、聞き上手。江戸時代のみならず、現代の女性のハートをもがっちり掴む信次郎の魅力に溢れています。

 心を閉ざしていたじょごが次第に女性としての輝きを取り戻し、一人の女性としてたくましく生きていく姿が美しい。

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©2015「駆込み女と駆出し男」製作委員会

 そして、ヤクザをやりこめながらも好きな女性には上手く告白もできない、そんな信次郎の草食男子っぷりがズルい。気の抜けた表情で「傷は治ります」と励ますその実直な姿に、じょごも思わずドキッ。愛を失いかけた女性相手だから、その不意打ちの優しさにやられてしまう人も多いはずです。


大泉洋がとにかくイイ!


 嫌味が全く感じられないのが、さすが大泉洋。クライマックスで事件を解決するシーンは、駆出しの医者が一人前に、戯作者志望が立派な戯作者に、そんな“一石二鳥”の成功を愛嬌たっぷりに演じています。
じょご、お吟、ゆうといった女たちが自立していく姿は輝いていて、その道を歩きたい気持ちになると思います。

 現代の東慶寺はどこにあるのでしょう?そこに信次郎のような欲が薄く、情に溢れた草食男子がいるかどうかが、幸と不幸の分かれ目かもしれませんね。


絶賛公開中!

監督・脚本:原田眞人
キャスト:大泉洋、戸田恵梨香、満島ひかり
配給:松竹
2015年/日本映画/143分
URL:映画『駆込み女と駆出し男』公式サイト

Text/たけうちんぐ

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ライタープロフィール

たけうちんぐ
ライター/映像作家

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