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  • 2014.11.21

その恋はシフト通りにはいかない?職場の先輩との恋に立ちはだかる壁『SHIFT~恋よりも強いミカタ~』

映画ライターたけうちんぐさんによる最新作を徹底レビュー!今回は男と女を超えた「性」にスポットを当てたフィリピン映画です。

 登っても登っても辿り着けず、背を伸ばしても届かない。頑張れば頑張るほど裏目に出て、どんどん遠ざかっていく。

 これは仕事の話じゃない。むしろ仕事だったらある程度時間を重ねて、腕に磨きをかけたら、成功はしなくても実現に近づけるものかもしれない。
実らない恋を経験したなら、この赤い髪の彼女の気持ちが分かるかも。
コールセンターで出会った先輩に恋をした子がどんどん女らしくなっていく物語です。

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© 2013 Cinema One Originals

 大阪アジアン映画祭2014でグランプリを受賞した本作は、なんと新人監督によるもの。
世界の映画祭で高い評価を得ているシージ・レデスマ監督が、女性監督ならではの女性視点で淡い恋愛模様を切り取る。

 赤い髪の主人公・エステラをイェン・コンスタンティーノ、彼女が恋をする先輩・トレヴァーをフェリックス・ローコーが演じます。
とびっきりの美人でもなく、日常からかけ離れてもいないエステラの親しみやすさ。イケメンだけど親しみやすく、誰よりも繊細なトレヴァーの可愛さ。
男らしさ・女らしさを忘れて、性別を無意味にさせる深い意味での“男女”が描かれていて、新人監督らしくない手慣れた完成度で楽しませてくれます。


恋の先に立ちはだかる壁の正体は?


 【簡単なあらすじ】
 真っ赤な髪のエステラ(イェン・コンスタンティーノ)はシンガーソングライターになる夢を持っている。でも、現実はコールセンターでパソコンを売り付けている。「こんな自分でいいのか?」と葛藤し、自分を探す日々を続けている。

 やる気がなく、遅刻ばかりのエステラの面倒をみるイケメンの先輩・トレヴァー(フェリックス・ローコー)。彼女の教育係として近づき、二人は次第に仲良くなっていく。
いつも優しくサポートしてくれるトレヴァーに、やがてエステラは特別な感情を抱き始める。しかし、トレヴァーとの間にはどんなに頑張っても越えられない壁があった——。

エステラがどんどん可愛く見えてくるのに、結果は実らない


 正直、エステラの第一印象は「なんだかゴツい」。
ファッションはワイルドで一匹狼風。男を寄せ付けないのは格好だけではなく、性格も少々荒っぽい。すぐに表情に出るし、タクシーの運転手に毒を吐くし。

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© 2013 Cinema One Originals

 男性経験が無いのも正直頷けるので、彼女とは真逆の性格のトレヴァーにはすぐに見破られてしまう。
男と付き合ったことがないエステラが初めて近づいた男は、正確にいうと“男”ではなかった。
一途に恋をするエステラと、彼女には恋をしないトレヴァー。もどかしさ満載の関係に、トレヴァーの新たな恋がさらに拍車をかけるのです。

 それでも、エステラの願望と反比例するように、彼女はどんどん可愛くなっていく。化粧をする。笑顔になる。会話が弾む。
恋をすることで以前とは別人のように華やかになっていく姿が愛くるしいが、その分切ない。その“女らしさ”は、トレヴァーにとってますます良い後輩の要素であり、友達になってしまっていく。それに気付きながらもデートを重ねていくエステラの心境は、見るに耐え難い地獄なのかもしれません。


色彩豊かな映像と、色とりどりの“性”の二人


 エステラの赤い髪、窓の外から溢れる黄色い光、全編を包み込む淡い青い色がカラフルに彩る。それはまるで劇中に描かれる“性”のよう。
色とりどりに光り、影を作り、エステラとトレヴァーの葛藤を描いている。詩的に思えるが、身近に感じられる物語。だって舞台がコールセンターなんだもの。
仕事で見えない相手と話すより、トレヴァーという見える存在と話すほうが距離を感じる。そんな皮肉が効いています。

 仕事は就任も、成績も、退職がある。恋はそれがはっきり分からない。二人の関係は変わるのか、はたまた…。

     
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© 2013 Cinema One Originals

 それでも、二人はもともとの場所に帰っていく。
エステラはシンガーソングライターの夢を持ち、小さなライブハウスで歌う。そのラブソングは吐き出せなかった感情そのもので、トレヴァーの横顔がふと思い浮かぶ。
夢は叶えられなくても、夢の中では叶えられるのでしょうか。
男らしさ、女らしさ、人間らしさの狭間で揺れる彼女の歌に、心を動かさずにはいられません。

“恋”がそれ以上の関係を育む


 エステラとトレヴァーは、おそらく恋以上の強い関係で成り立っている。それに満足できるかどうかで、エステラの幸せは変わってくる。
彼女は日々の中で小さな幸せをかみしめ、仕事の面接を続け、そしてシンガーソングライターの夢を諦めない。

 恋人か、“強いミカタ”か。
どちらも、エステラにとって大切な存在であることは変わりありません。

新宿シネマカリテほか全国順次ロードショー

監督:シージ・レデスマ
キャスト:イェン・カースタンティーノー、フェリックス・ローコー
配給::ピクチャーズデプト
原題:SHIFT/2013年/フィリピン映画/81分
URL:映画『SHIFT~恋よりも強いミカタ~』公式サイト

Text/たけうちんぐ

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