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  • 2014.08.15

能年玲奈が非行少女を熱演!不良チームの少年との甘く苦い青春『ホットロード』

 “青春”の舞台は一体どこにあるのでしょうか。
実際、10代の生活なんて家と学校の往復。青春の舞台って意外に少ない。では、この二つに行き場をなくしたらどこが舞台になるのか。

 この映画の主人公・和希の場合、それがたまたま不良チームの少年でした。
心の拠り所を見つけた彼女が身を寄せる少年・春山とのかけがえのない日々。そこに映し出されるのは光か闇か。和希の行き場のない孤独感はどこに辿り着くのか——。

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©2014「ホットロード」製作委員会 ©紡木たく/集英社

 1980年代に『別冊マーガレット』で連載され、累計発行部数700万部を突破した紡木たくの人気少女コミック『ホットロード』を実写映画化。
『ソラニン』『僕等がいた』の三木孝浩監督が手がける青春ドラマの主人公・和希を演じるのは、NHK連続テレビ小説『あまちゃん』でブレイクした能年玲奈。彼女特有の輝きを余すことなく映像に収めています。

 和希が惹かれる不良少年・春山役は、今回が映画初出演となる三代目J Soul Brothersの登坂広臣
鋭い眼光と気の効いたセリフが反則レベル。我が道を行き、女を突き放す。クールに佇みつつも和希に時折見せる優しさが多くの女性のハートを掴むのは目に見えています。


孤独なふたりの出会いは甘く苦い青春を呼びおこす


 【簡単なあらすじ】
 14歳の少女・和希(能年玲奈)は自分が望まれて生まれてきた子ではないと思い、結婚する前から別の男性に思いを寄せていた母(木村佳乃)から自分は愛されていないと孤独を感じていた。

 ある日、転校生の絵里(竹富聖花)に誘われて行った夜の湘南で、不良チーム“Nights”のメンバー・春山(登坂広臣)に出会う。この不良少年との出会いは和希にとって大きな出来事になる。はじめは衝突し合っていた二人も次第に惹かれ合い、春山は和希の心の拠り所になっていく。
やがてNightsのリーダーになった春山は敵対するチームとの抗争に巻き込まれていき、ある事件が起きてしまう——。

毒も皮肉も知らない世界で純然と輝く和希と春山


 何より先に言わせてほしいのは、和希の瞳よ。大きな黒目にたっぷり光を溜め込み、スクリーンの外に放つ。眩しいったらありゃしない。
能年玲奈は『あまちゃん』で見せた東北訛りから一転、不良少女の口調で“青春”を突き放す。愛を求めるが故に母の距離が遠のいていき、その分愛を失っていく自分に気づかない。

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©2014「ホットロード」製作委員会 ©紡木たく/集英社

 一方、和希と正反対の鋭い目つき、とはいえ闇に走るが光を求めて彷徨い歩くという意味では和希と同じ。そんな不良少年・春山を演じる登坂広臣は実年齢27歳を完全に忘れさせる。
不器用ながら和希に心を開き、一匹狼のリーダー格なのに時折見せる幼さがグッと心を掴む。
とにかく、和希の母にぶつけるセリフがズルい。

「俺がもらってっちゃうよ」

 なんだそれは。こんなこと言う奴いるのか。言いたくても言えない。言ってもらいたくても言ってもらえない。
そんな青春コミックと青春映画にだけ許されたセリフの連発なのに、リアリティを邪魔することなく自然に馴染み、受け入れてしまうのがこの作品の大きな魅力なのかもしれません。

 80年代の瑞々しさは、現代でデフォルメ化された恋愛を一切封じ込む。そこには「中二病」「イタイ」といった言葉が存在しない。毒も皮肉も知らない純粋な世界だからこそ、二人のドラマを輝かせるのでしょう。


青春の舞台は自ら歩き、探し出すもの?


 携帯もネットもない。会う時は直接会いに行く。「チャリで来た」的ドヤ感すら滲む「バイクで来た」というシチェエーションの連続で、和希と春山の二人に隔てるものは一切ない。あるとしたら、春山のNightsの仲間への思いと、意志を貫く不良魂。
終盤は春山の一匹狼っぷりが災いし、ちょっとした鬱展開へ。同時に、和希の思いが一気に加速する。

 思えば、80年代の恋愛はいかにシンプルだったのでしょうか。
現代のようにSNSストーキングも既読スルーもないわけで、会ったその時の言動や表情から恋人の現在を読み取り、そこに無駄なものが一つもない。
ワンクリックで飛べるような青春はない。自ら歩き出して青春を掴み取る。

   
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 和希は今の時代ならひきこもりになっていたに違いない。部屋から一歩も飛び出さずに自分の舞台を作っていたかもしれないが、この物語では家を飛び出して春山に出会い、居場所を作った。
これは80年代だからこそ為せるリアリティで、離れた恋人との連絡手段が家電しかなかった30代以上の人が観るとちょっと懐かしい。

 本来、青春映画の物語はこうあるべきではないか。携帯もネットもないからこそ、純粋な恋愛模様が描かれるのかもしれない。和希と春山の間には現代では失われた煌めきがあり、少し寂しい気持ちにもなる。

 エンディングで流れる尾崎豊の『OH MY LITTLE GIRL』こそ、今のヒットチャートにはない歌。懐古厨を湧かせる作品ではないが、今を生きる人々が失った感覚を取り戻していく。
和希の瞳が、春山の鋭い眼差しが、年代を超えて心に訴えかけてくるのです。

     

二度と取り返せない日々こそ青春


 母との確執、学校への退屈、危険な世界への興味……。
10代の頃、居場所がなくて彷徨い歩いていた人は、和希の目に映る景色に憧れるかもしれません。

 偶然見つけた青春の中で春山と出会い、夜の街に消えていく。二度と取り返せない日々こそが青春であることを、この作品で痛感してしまう。
それでも後ろを振り向かない春山の姿が、和希の目にも私たちの目にも輝いて見えるのでしょう。



8月16日(土)より、全国ロードショー

監督:三木孝浩
キャスト:能年玲奈、登坂広臣、木村佳乃、小澤征悦、鈴木亮平、太田莉菜
竹富聖花、落合モトキ、山田裕貴、鷲尾真知子、野間口徹、利重剛、松田美由紀
原作:紡木たく「ホットロード」集英社文庫〈コミック版〉
配給:松竹
2014年/日本映画/119分
URL:映画『ホットロード』公式サイト

Text/たけうちんぐ

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