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  • 2014.06.28

スパイク・ジョーンズ最新作!独り身の孤独な男が愛したのは、AI(人工知能)の彼女だった『her/世界でひとつの彼女』

 彼女は彼のすべてを理解してくれる。好きな食べ物も、趣味も全部知っていて、仕事でも良きパートナーとして活躍してくれる。
頭が良くて、気が利く。彼の要求すべてに答えてくれて、何よりも愛くるしい。

 ……なにそれその幻想。そんな彼女なんて存在するの?
まるでデタラメなラブストーリーです。そんな彼女なんて妄想っぽくてリアリティがない。出来の悪い映画じゃないか!
なのに、とてつもなくリアルだし大傑作なので困るんです。
彼女がsiriのような音声ガイドのAI(人工知能)だから、余計に困っちゃうんです。

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Photo courtesy of Warner Bros. Pictures

 人間と人工知能の恋愛という、いまだかつて味わったことのない斬新なラブストーリーをみせてくれるのはスパイク・ジョーンズ監督。数多くの著名アーティストのミュージックビデオを制作し、『マルコヴィッチの穴』『アダプテーション』など未体験の映像表現で活躍する彼が4年ぶりに監督・脚本を手がけます。

 主演は『ザ・マスター』でアカデミー賞主演男優賞にノミネートされたホアキン・フェニックス。その相手役は、AI。じゃなくて、ちゃんとした女優です。スカーレット・ヨハンソンがまるで実在する彼女のように、機械の声に温度を与え、声だけで表情を作っている。
下手したらまるで成立しない声だけのデートシーンやセックスシーンで、現実の彼・彼女よりリアルな恋愛模様を見せてくれます。


順従な音声ガイドに恋をする!ド直球のラブストーリー

 【簡単なあらすじ】
 そう遠くない、未来のロサンゼルス。
セオドア(ホアキン・フェニックス)は、他人に代わって恋人や家族へ手紙を書く“代筆ライター”として社内でも一目置かれている。でも、幼なじみだった妻・キャサリン(ルーニー・マーラ)とは離婚調停中。愛を失い、安らぎを無くし、途方に暮れていた。

 そんな中、セオドアはある日最新式のAI(人工知能)OSの広告を目にする。興味本位で購入した彼が自宅でOSを起動すると、AIの女性・サマンサ(声:スカーレット・ヨハンソン)が親しげに声をかけてきた。
音声ガイドとしてセオドアのPCを自由自在に操り、仕事のパートナーとして万能なサマンサ。あまりに機械とは思えない人間味のある彼女に、セオドアは次第に惹かれていき、またサマンサも“制作の意図を超えて”、感情というものが芽生えていく——。

いまだかつて無い“一人”のデートシーン

 正直、こんなに心が震えるとは思わなかった。
だって、相手は機械ですよ。人間じゃないんです。はっきり言って、パソコンと携帯を見てニヤニヤしている孤独な男の物語なんです。それなのにどうしてここまでリアルで、心を引っ掻いてくるのでしょうか。

 従来のラブストーリーのデートシーンって、そりゃもう美男美女が街を歩いていたりするわけで。
でも、この映画は残念ながらそうじゃない。寂しげなインテリメガネが延々と携帯に話しかけて、はしゃいでいるだけ。サマンサと心を通わせていく過程を知っているからこそ非常に幸せそうな光景だけれど、知らない人が物語の外から見ているとあまりに孤独な風景なのです。

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Photo courtesy of Warner Bros. Pictures

 たった“一人”のデートシーン。これは現代人に共通する“孤独”ではないでしょうか。
思えば、街を歩けば見渡す限り人々は携帯を見つめている。電車の中で横一列携帯ガン見という景色は珍しくない。誰もがその先にいる彼/彼女と対話しているようでも、実際は携帯に向けて笑い、泣き、怒り、悲しむ。時にはその携帯をぶん投げてしまいたくなるほど、感情をぶつけてしまっている。

 セオドアは、そんな現代の私たちとまるで一緒。小さな機械に一喜一憂する姿は、現代の街並みで見かける光景とそう変わりないのです。それが皮肉のようで、悲哀のようで、セオドアが異端とは全然思えない。
小さな機械に感情を委ねてしまう姿に、多くの人が共感してしまうことでしょう。


極めて普遍的な“愛”と現代的な“繋がり”

 セオドアとサマンサの愛がどれほど深まろうとも、絶対に出来ないことがある。それは、セックス。 まるでテレフォンセックスのように声と声で喘ぎ、快感を得ようとする。それでも満足には至らない。

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 セオドアの孤独だけでなく、サマンサの機械としての孤独すら映画全編に漂っている。その恋愛感情のリアリティはSFって設定を忘れさせてくれる。
音声ガイドを演じるスカーレット・ヨハンソンの少ししゃがれたハスキーボイスが、実態がないのに肉感的で表現力豊かだからこそ、相思相愛なのに実ることのない恋愛がより切なく感じられてしまうのです。

 本作は、愛における心の喪失を真っ正面から描いている。
そもそも、心とは一体何なのか。どういうメカニズムをしているのか。心変わりや、移り変わり。時間の経過によって自然に変化していく心とは、どのような機能を果たすのか。それは、機械と何が違うのか。

     

AI・サマンサの姿は現代人そのもの

 人間は、サマンサよりちゃんと人間らしいのでしょうか?
その問いかけを受けながらも映画を観終わった後、すぐさま携帯を開く。その行為こそが、この映画の世界と地続きなのかもしれません。

 恋がすぐに答えの出るものなら、どんなに楽なことか。
人工知能が昔ながらの「ワタシハ、アナタノコトガ、スキデス」ってレベルの未来だったら、こんなに心が掻きむしられることはないのでしょう。

 機械なのに答えがすぐに出ない。はっきりしない。葛藤をする。人間らしいのに、人間じゃない。
どう考えてもこれ、現代人の映し鏡です。


6月28日(土)新宿ピカデリーほか全国ロードショー

監督・脚本:スパイク・ジョーンズ
キャスト:ホアキン・フェニックス、エイミー・アダムス、ルーニー・マーラ、オリヴィア・ワイルド、スカーレット・ヨハンソン(声の出演)
配給:アスミック・エース
原題:HER/2013年/アメリカ映画/126分
URL:映画『her/世界でひとつの彼女』公式サイト

Text/たけうちんぐ


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