“妊娠”をテーマに有名小説を斬る!『妊娠小説』

妊娠小説 斎藤美奈子 筑摩書房 pregnant woman By harinaivoteza

 本書は、フェミニズム系の論客として知られる、文芸評論家の斎藤美奈子さんのデビュー作です。

 「妊娠小説」について著者は「はじめに」にてこう語っています。ヒロインが予期せぬ妊娠をした際に慌てふためく男性。このようなシーンについて「限りない『どこかで見たぞ』感とともに、わたしたち読者をなんだか鼻がムズムズしてくるような恍惚の世界へといざなってくれるものでした。『妊娠小説』とは、いわば、かかる『受胎告知』によって涙と感動の物語空間を出現せしめるような小説のこと、であります」と。

 そして「妊娠小説」とはいったいどの時代に出現したものなのか、受胎告知は物語のどこに投入されるのか、また、何故避妊をしないのか。著者による妊娠小説の検証が始まります。
 この本で扱われている「妊娠」とはめでたいものではなく、望まれない妊娠のこと。
 『舞姫』の作者である森鴎外をその父とし、『新生』の作者・島崎藤村を母として、『太陽の季節』(石原慎太郎)、『美しい星』(三島由紀夫)、『風の歌を聴け』(村上春樹)に至るまで、妊娠を取り扱った有名小説を独自の視点で分析。

 深刻な問題について笑いを交えておくるセンセーショナルな1冊。あなたは女性としてどこまで納得できるでしょうか。

妊娠小説 斎藤美奈子 筑摩書房

書名:『妊娠小説』
著者:斎藤美奈子
発行:筑摩書房
価格:¥714(税込)

Text/Yuuko Ujiie