空前絶後の女性犯罪事件、木嶋佳苗の裁判傍聴記『毒婦』

 09年秋、インターネットで知り合った多数の男性から1億円以上の金をだまし取り、殺人などの容疑に問われた木嶋佳苗が逮捕されました。木嶋の顔写真とともに数々のメディアで取り上げられ世の中を震撼させたことは記憶に新しいでしょう。
2012年1月から始まった木嶋の裁判にはのべ63名の証人が呼ばれ、36回の審理が行われました。裁判員の任期が100日に及んだ「100日裁判」としても話題となり、2012年4月、「平成の毒婦」と呼ばれた木嶋佳苗には死刑の判決が下されたのです。

 本書は、コラムニストの北原みのりによる木嶋佳苗の裁判傍聴記です。
著者がこの事件に興味を持ったのは「木島佳苗という女が、全くわからなかったから」だといいます。
「今までは女性の犯罪というものに対して少なくともどこかで同情できる部分があった。
 しかし、今回の事件については共感や同情を一切持てず、わからないからこそ会いたかった」と冒頭で綴っています。100日間に及ぶ裁判様子、そして著者から見た被害者男性たちの心情、木島佳苗の人間像が書きしるされているのです。
   この事件が注目を集めたのは残酷すぎる被害内容のほかに、木嶋の外見にあった。
「ブス」「デブ」「あんな女に何故ひっかかったのか」などと報道するメディア。木嶋の写真を見た者はみな、驚きと、不謹慎ではあるが興味をかきたてられたはずでしょう。

 しかし、著者は初めて木島佳苗を見たときの感想を「キレイだった」と書いています。
「シミ1つない完璧な白、絹のような美肌」、さらにぷくぷくと膨らんだ指は触りたいほどだったという。意外すぎるほど魅力的に映った木嶋に対して著者は「佳苗に振り回されている」と自身を嫌悪しました。  自身のセックスについても赤裸々に語り、ファッションまでもが話題になった木嶋佳苗の100日裁判。何故、男性は木嶋佳苗を愛したのか、彼女の魅力とは……女性の視点からその全容を赤裸々に伝えています。

書名:『毒婦。 木嶋佳苗100日裁判傍聴記』
著者:北原みのり
発行:朝日新聞出版
価格:¥1,260(税込)

Text/Yuuko Ujiie