何気ない日常がきらめく写真の力に感動!『川内倫子展 照度 あめつち 影を見る』

 恋人との大切な一瞬を切り取って、“あの頃”のまま永遠に記録してくれる写真。
いまやカメラといえばデジタルカメラですが、かつてはみんなフィルムカメラで撮っていました。
何枚でも気軽に撮ったり削除したりできるデジカメと違い、24枚撮りのフィルム1本ごとに現像代がかかっていた当時は、1枚1枚を今よりも大事に撮っていたような気がします。
昔撮った紙焼きの写真のほうが、心なしか思い出や思い入れも強く感じたりしませんか?

 そんな“1枚に込められた写真の力”をあらためて感じさせてくれる展覧会が、5月12日(土)から東京都写真美術館で開催される『川内倫子展 照度 あめつち 影を見る』です。
川内倫子さんは、2002年に『うたたね』『花火』の2冊で第27回木村伊兵衛写真賞を受賞して以来、2000年以降を代表する写真家として、若い世代を中心に人気を集める存在。
2009年にはICP(International Center of Photography)主催の第25回インフィニティ賞芸術部門を受賞するなど国際的な評価も高く、国内外にファンを持っています。

 彼女の代名詞ともいえる作品が、15年かけて撮りためたシリーズ《Illuminance》です。
「照度」を意味するタイトルのこのシリーズは、自然や日常の何気ない瞬間を6×6cmのフォーマットに収めることで、光をとらえ、時間を超越し、世界が普遍的な美しさを獲得することを表現しています。
2011年に刊行された同名の写真集から厳選した約60点をインタレーションとして再構成した会場は、時間や場所を特定しない独特の世界観、ささやかなものに崇高な美を見出す視点を存分に堪能できる、彼女の集大成ともいえる展示内容尾になっています。

 さらに、本展のもうひとつの目玉が、新作シリーズの《あめつち》と《影を見る》。
写真と新作映像作品からなる《あめつち》は、阿蘇山で古くから行われる早春の行事「野焼き」をはじめ、壁に向かって祈る人々、プラネタリウムに描き出された光の軌跡、神に捧げる舞の儀式など、地球上のさまざまな事象や人々の営為が被写体。
これらを4×5インチの大判カメラで撮影し、2m幅の大サイズでプリントすることで、これまでの彼女の作品には見られないスケール感と、宇宙的な作品世界の広がりを生み出しています。
映像では、20分にわたってゆっくりと燃えていく野焼きの様子がとらえられています。
 また、こちらも新作映像作品となる《影を見る》は、一年のうち決まった季節、決まった時間に現れる渡り鳥の群れを、定点観測的な視点で撮影したもの。
壮大な自然のサイクルとリズムを感じようとする、川内倫子の新たなステージを見ることができます。
 本展を見たら、あなたも一瞬の世界を切り取る写真の意味について、考えてみたくなるでしょう。
普段は照れくさくてなかなか撮らない彼との記念写真も、思わず撮ってみたくなるかもしれませんね。

名称:川内倫子展 照度 あめつち 影を見る
会期:2012年5月12日(土)~7月16日(月・祝)
会場:東京都写真美術館2階展示室(東京都目黒区三田1-13-3 恵比寿ガーデンプレイス内)
休館日:月曜日 ※月曜日が祝日の場合は開館し、翌火曜日休館
観覧料:一般700円 学生600円 中高生・65歳以上500円
問合せ:03-3280-0099
URL:https://www.syabi.com/

Text/Fukusuke Fukuda