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  • 2016.11.24

「今が楽しければ、この先だって楽しいはず」“子を持たない”を受け入れた先輩女子の人生への誇り

中目黒で出会って初めましてで7時間弱べろべろに酔っ払いながら恋と人生について語ってくれたハナちゃん。不妊治療を乗り越えて”子を持たない”を受け入れた彼女が語る、自分の人生を楽しく生きる心持ちとは。

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©Poiboy

 「初めまして」で飲みはじめて、「そんなことまで話してくれるの!」という喜びに、この企画ではよく遭遇する。
さらにどんどん話を聞きたくて、ちょっと恥知らずなくらいグイグイ聞いてしまったりもする。そうは言っても「触れてはいけなさそう」な部分は、聞かずにそのままにしてきた。
でも中目黒で出会ったハナちゃん42歳は、聞きにくいこともどんどん話してくれた。
ハナちゃんの話、最終回――。
飲み会終盤は、どう生きていたいかの話になった。そしてそれを話すには、ハナちゃんが奮闘した「不妊治療の話」を聞かないわけにはいかなかった。

お義母さんのために妊娠したかった

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 高校卒業してからずっと百貨店で働いていたハナちゃんは、30歳を過ぎると部下が300人にもなっていた。ストレスでどんどん太り、入社時に5号だった洋服のサイズはとうとう15号にもなった。ついに限界を迎え、36歳の時に退職、専業主婦となった。
そのタイミングで「婦人科の病院に行こう」と背中を押してくれたのが、旦那さんのお母さんだった。

「筋肉注射で痛いときも、卵管に管入れて痛いときも、ずっとそばにいておにぎりを作ってくれてたのがお義母さん。旦那より、お義母さんのために頑張ろうと思った

 人工授精、体外受精、顕微鏡受精…できるだけのことをした。
検査の結果、ハナちゃんも旦那さんも異常はない。それなのに、子どもはできない。いつまで頑張ればいいのか分からない治療が続いた。

「でも全部ダメだったの。そうしたら、お金ばかりかかって、このお金でヨーロッパ旅行行けるべ! もう犬でも猫でも買うべ! もういいや! ってなった」

 頑張りを知っていた両家の親たちも、「老後は養老院でも行けばいい。もう好きにしなさい」と言ってくれた。そうして奮闘は終わり、子どもを持たない人生を歩み始めた。

「たしかに子ども欲しかったよ。子どもって絶対的な存在らしいからさ、もしいたら全然違う人生になってただろうね。でも子どもはいないから、それってつまり私しかない。私の人生は私のものでしかない。これは自分の人生。だから、毎日楽しくしたいじゃん」

今が楽しければ、この先だって楽しいはず

 子どもを持たない人生を受け入れたハナちゃんは、自分の人生を、自分の今を存分に楽しむ毎日を送っている。遊び過ぎて旦那さんに「あったまおかしいね」と笑われるほど。

「この人生、いつ死ぬかも分からないじゃない? だったら今を楽しんでいたい。今日飲んで明日丸一日寝てたっていい。今が楽しければ、先も楽しいはずって思えるじゃん」

 さらに大きな身振りで続ける。

「今日こうやって声をかけてくれて出会えたことが幸せだし、そうやって人と出会って行くのって縁だと思うし。そういうことで私は満足しちゃうっていう日々でーーーーす!」

 ハナちゃんは、そう叫んでソファに横たわる。
あまりにも楽しそうに酔っ払っていた。泣きたくなるほど、素直だった。
そんな印象を伝えると、さらにハナちゃんは続けた。

「そう、いつだって素直でありたい。たとえば、若い頃は尊敬できる男って次から次に出会えるけど、この歳だとそんな人にはなかなか会わない。それこそ、首相や中居くんレベルじゃないともう無理よ。そうやって人に影響を受けにくくなるからこそ、素直でありたい。素直に、その人といる時間を楽しみたいよね」

 ハナちゃんの言うことは、道徳の教科書に書いてありそうなくらいキレイだ。
でも口先の言葉でなく、本心で語っていることが伝わるから、そんなことを叫ぶハナちゃんが愛おしく思えてくる。

「仕事しなきゃいけないのも分かってて。でも疲れきって辞めて、不妊治療も終わって、働く気にどうしてもなれないからね。それでも良いじゃない、働きたくなったら働けばいい。だから、自分の時間を遊びつくしてるの、今は」

 そういうハナちゃんを、「ズルイ」と言う人もいるだろう。「旦那に養われて」と嫉妬する人もいるだろう。でも、甘えられるものに甘えて何が悪いのだろう。
すっかり私もハナちゃん節にやられてしまった。
≫素直でいられる恋をしよう≪

来年もずっと、誰かを好きでありたい

 「今後の目標は?」と聞いたら「そんなのないよー」とおどけた口調で言われた。
「じゃあ、来年は何してたい?」に、酔っ払って背もたれに頭をもたげるハナちゃんは答えた。

ずっとずっと誰かを好きでいたい。それが旦那でも旦那じゃなくても、甥っ子でも人でなくてもいい! 今日も明日も明後日も来年も、誰かを好きでいたい。そうしたら、なんか頑張ろうってなるじゃん」

 そうやって私たちを見つめる目も、酔っ払いの愛にあふれていた。

「で、最終的には旦那より先に死にたいよね。遺影も準備してるし、入りたい墓も決めている。自分の墓くらい自分で決めたいよ」

 今を楽しみ、やりたいことをやる。初めから最後まで、それが貫き通されていた。
遊んで、毎日楽しくて、一緒にいる人を楽しませて、何が悪いんだの気分になる。
「何かに一生懸命になっていなくてはいけない」「努力しないと向上しない」そんな、若者に言うような格言は、もうこの人には通用しないと思った。

 中目黒で出会った42歳、ハナちゃん。しっかり年相応のおばさまだった。
「若い人なら」「今の人は」そんな表現を多用するのは、自虐なんかじゃない。この歳まで生きてきた自分を誇り、当たり前に「自分はもう若くない」と思っているだけの話。
最後に、私が最近ちょっと恐れていることを聞いてみた。「女としての武器が通用しなくなっていくのってキツくないですか?」

「んー、でもいくつになっても、私を受け入れてくれる人はいるからね」

 生きていくのが楽しみになるくらいの、ハナちゃんとの出会いだった。

 そして次回、ハナちゃんの友達・真由子さん47歳。
ハナちゃんとは全く違う雰囲気をまとった、広告代理店でバリバリ働く独身女性。自分の話を一切してくれない、企画泣かせのお姉さんであった。
そう簡単に人に心を開かない、これもまた、しっかり生きてきた大人の生き様そのものであった。

 街ゆくリアルな恋バナがここにある…! 次回も乞うご期待!

≫今を楽しむ恋をしよう≪

Poiboyとは

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 AM編集部がプロデュースした女の子のための恋愛応援アプリ。女性が男性をお気に入り登録(通称ポイ)することからコミュニケーションが始まる安心の女性主導設計。好みの男性をみつけたり、女性同士でオススメしあって盛り上がったり。恋愛中の感覚を擬似体験することができます。

次回は<「好きな人と結婚したい」全然無理してない47歳キャリアウーマンの潔い結婚観>です。
中目黒で出会って初めましてで7時間弱べろべろに酔っ払いながら恋と人生について語ってくれたハナちゃんに続いて自身の恋愛を語ってくれたのは広告代理店勤務の真由子さん。精力的に動く日々とは裏腹の恋愛に関して嘘偽りなく語って頂きました。

ライタープロフィール

舘そらみ
脚本家・俳優。1984年神奈川県生まれ、トルコ・中米育ち。映画「私たちのハァハァ」の脚本を執筆。Twitter:@_sorami

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