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  • 2016.11.15

女装はオネエの頭脳プレイ。慶應生が女装に目覚めるまで

慶應の大学生だった肉乃小路ニクヨさんが、ほんの余興のつもりで21歳のときに女装を始めて、20年。当時のニクヨさんに影響を与えたのが、パソコン通信を通じて知った「Camp」の精神、つまりマイナスイメージを帯びた言葉をあえて受け入れることでプラスの意味にひっくり返す、同性愛者たちの頭を使った戦いでした。

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by gratisography.com

 女装を始めて今年で20年になります。
私の人生で、一番長く続いていることが女装です。
21歳で女装を始め、気がつくと41歳まで続けていました。
始めた当時はまさかこんなに長い間続けるとは思ってもみませんでした。
だって、女装はほんの余興のつもりで始めたことでしたから。

 当時、私は21歳の大学生でした。
20歳の時に慶應義塾大学の華やかさについていけずノイローゼになり、勝手に休学しました。
休学中に、父親の死を経験し、塾講師で社会勉強をして、ゲイに関する本を沢山読んで理論武装してました。
21歳の春、ようやく自分を受け入れることができて学校の近くで再び一人暮らしを始め、復学したばかりの時でした。

 私は手始めにゲイのパソコン通信を始めました。
私が始めたパソコン通信はUC-GALOPという名前のところでした。
そこは当時大学生だったブルボンヌ先輩が始めたところで、私とブルボンヌ先輩が出会ったきっかけの場所です。
当時のパソコン通信はまだ敷居が高く、学力と知識がある一定レベルないとアクセスできないものだったので、ゲイ初心者の自分にとってはちょうどいい社交の場でした。

Campの精神

 ブルボンヌさんが立ち上げたUC-GALOP にアクセスすることで、私は同世代のゲイの生の考えや声を聞くことができました。
そうしてそこで“Camp”という考え方を初めて知ることになったのです。
Campという単語は、もともとナヨナヨした、同性愛的なとか、女々しいとか、否定的な意味を持つ言葉でした。
そのマイナスな意味を同性愛者達がユーモラスに誇張して遊ぶことで、本来の意味を笑い飛ばして、昇華させたのです。
その一つが女性っぽさを過剰にしたオネエの文化でしたし、女々しさを大げさに演出して別の概念に変えてしまうドラァグクイーンという存在でした。

 マイナスの意味を持つ言葉を逆手に取って遊び、本来の意味を反転させる。
これは、長い間世間から虐げられてきた同性愛者が自分たちのマイナスイメージをひっくり返すために始めた、頭を使った戦いでもあったのです。

 手厳しいことを言うと、今の時代はそういった背景を理解せず、女性的な言動だけでオネエとする風潮があります。
だから薄っぺらいオネエが沢山いるんですね。
昔のオネエはガッツとプライドがありました。

余興のために女装を始める

 とにかく、頭でっかちだった私には、Campという戦い方が凄くカッコよく思えたのです。
Campとして捉えたら、今まで自分が抱えていた同性愛に対するマイナスなイメージを変えることができるかもしれない。
先輩だったブルボンヌさんはそのことを既に知っていて、面白いことをいっぱい教えてくれました。

 そして私は、Campの精神の実践として女装に手を染めることになったのです。
最初はパソコン通信のイベントの余興のために始めたものでしたが、才能があったのか、女装のオファーが続けて入るようになりました。
でも当時、私にとって女装は手段でした。
面白い考えの人に近づくために、何もできない自分は取り敢えず女装をするしかない。
女装をすれば、面白い人とも接点が持てるはずだ。
いつか自分が面白くなったら女装を辞めるのだろう。
そう思っていました。

 それがまさか、20年も女装を続けることになろうとは。
周りにいた賢い人達は女装を辞めていきました。
でも私は辞められなかった。


 その理由は、また来週。

 ところで、なぜ急に私の女装人生を振り返ったのかって?
それは今月23日に私の女装20周年のイベントがあるからですよ。
詳しくはWebへ
どなたでも入れるイベントなのでお気軽に遊びにいらしてください。ほほほ。

Text/肉乃小路ニクヨ

次回は<なりたい自分に近づくための「女装」という手段が、ビジネスに変わった>です。
先週は肉乃小路ニクヨさんが女装を始めた経緯についてのお話でした。そして、今週は「ニクヨさんがなぜ20年も女装を続けてきたのか」について。そこには、女装家になった経緯と環境…と、ニクヨさん自身が歩んできた道と周囲の人々との出会いが大きな鍵となっていました。

ライタープロフィール

肉乃小路ニクヨ
東京の片隅でひっそり生き続けるちょっぴりしょっぱくてサワーなニューレディー。オーバー40歳、崖っぷち女装

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