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  • 2016.09.06

アウティング事件から考える、「孤独」の先にみつけた自分の居場所

「孤独」―この言葉に対してAM読者のみなさんは何を想い、何を考えますか?孤独と言う言葉自体「ネガティブ」に捉えられがちてすが、果たしてそうなのでしょうか?実は、孤独についてしっかりと考えると「孤独だけど一人ではない」と感じることが起きるのです。

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©jseliger

 ゲイの大学院生が、友人にアウティングをされたショックで亡くなったという事件が今年の夏に起こりました。

 人それぞれ痛みの感じ方は違いますし、人が自らの命を絶つ権利について、私はあると思っているので仕方がないことなんでしょうけど、とても哀しく切ない選択だったなと思います。
学校のカウンセラーに相談したのに良い対応を得られなかった、友人達の反応が冷たかった、などいろいろ原因があったようですね。

 大学時代から女装をはじめた私にはそんな悩みはなかったと思われがちですが、私も自分のセクシャリティを受け入れるのにとても時間がかかりました。
だから、その方の気持ちがほんの少しわかるような気がするのです。

エリートのレール

 私も彼と同じく勉強ができる子でした。
勉強ができて良い学校に入ると、エリートなのかもという妙な自意識が生まれます。

 エリートの私が性的少数者であることをネタに、将来バカにされるのではないか?
将来的に結婚しないと、社会から一人前に見られないのではないか?

 今となっては視野の狭さと思い込みに笑ってしまうところですが、19歳の大学生だった私は、真剣にそういうことを考えていました。
ちょうどその頃、父親が危篤になり、跡継ぎとか、相続とか、借金の連帯保証人など、家族やこれから先のことを考える時期も重なりました。

 慶應義塾大学という華やかな環境にも馴染めず、ノイローゼになってしまい、私は勝手に学校を一年休学してしまいました。
逃げたかったのです、敷かれたレールから離れてみたかったのです。

 一年離れている間、私が何をやっていたかというと、塾講師のバイトと、後はひたすら活字を追っていました。
その時期に橋本治さんの著作をたくさん読み、自分の頭で考えることを学びました。
友達もいなく、ひたすら喫茶店で本や雑誌を読み、一人道を外れても生きていくための理論武装をしていた時期でした。

 私は孤独を選びました。
友達にも言わず、一人で考えて動きたかったからです。
自分で自分をちゃんと説明できたり、理解できないと次に進めないと思ったからです。

孤独が教えてくれたこと

 そうして自分で自分を居てよしと思ってから、ゆっくり1年くらいかけてゲイコミュニティーに近づき、気が付いたら女装をし、学校に戻ったときには勝手に学内にゲイのためのサークルを立ち上げていました。
自分と同じようなゲイの大学生のためのクラブイベントも立ち上げていました。
嬉しいことにそのイベントは今も続いています。

 私は小さい頃から人は孤独だと思っていました。
そして、それはとても寂しいことだと思っていました。
自分のセクシャリティを受け容れられず、誰にも話せない時期が続いたせいもあります。
寂しくて、辛かったです。
孤独を選び、レールから外れて考えたのも、私が強かったからではなく、そうするしかその当時は方法がなかったからです。

 でも、私はレールを外れてみて気が付いたのです。
孤独だけど私は一人じゃない。
色々な人生があって、たとえ周りに理解者はいなくても、何処かに自分と響きあう友がいる。
私は本を読んで、雑誌を読んで、こんなにも頭を使って面白がって人生を生きている人がいるということに気づき、もう一度そういう人と共鳴し合う人間になりたいと思い、社会復帰しました。
父親の死も私にあらためて生を考えるきっかけをくれました。

 もしも貴方が孤独なら、それは悪いことではありません。
死を考えるなら、自分の好きな本や記事を見つけ、その人と共鳴したり、一緒に仕事ができるようになる自分を見つけてください。
その好きなことを語り合える友を見つけてください。
あなたは一人ではないということに気がつくはずです。

 孤独だけど一人じゃないって思えるだけで、人生は何倍にも味わい深くなります。
私はそう信じて、今日まで生きてきました。

 Text/肉乃小路ニクヨ

 

次回は<感動ポルノは誰が生む?スポーツにもチャリティにも涙を求める私たち>です。
毎夏恒例のように放送されているチャリティー番組。今年はそれにオリンピックでのメダル史上最多獲得も重なり、感動することが当たり前で清く美しいような風潮が感じられました。感動は悪くない、チャリティも悪くない、だけどそこに疑問を持ちたい。そんなお話です。

ライタープロフィール

肉乃小路ニクヨ
東京の片隅でひっそり生き続けるちょっぴりしょっぱくてサワーなニューレディー。オーバー40歳、崖っぷち女装

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