男の辞書には「あざとい」という文字がないのか?バーで出会った女性の手練手管

何度もコースターを落とす女性

バーカウンターに寝そべる女性のサムネイル画像 AllClear55

 ある晩、夫の経営するバーのカウンターで、男友達と飲んでいた時のことでした。夜半過ぎに、わたしと男友達の共通する知り合いの男性――仮にTとします――が、見知らぬ女性と連れだって入ってきました。Tと会うのは久しぶりだったのですが、女性と一緒にいることもあり、挨拶だけさっと交わした後は、男友達との会話に戻るつもりでした。ところが、軽く交わした近況報告が盛り上がってしまい、そのまま、半ば合流して4人で飲む形になったのです。

 常連が集うようなバーでは、よくあることです。それにわたしたちは、その女性が退屈しないように、出来る限り疎外感を感じないようにと、会話に出てくる人物の説明をしたり、補足を付け加えたり、気遣って会話を進めていました。その最中のことです。

「やだ、落としちゃった」と女性が声をあげて会話を中断しました。なにがあったのかと振り向いてみると、どうやらグラスの底に敷いていたコースターを床へと落とした様子。バースツールはやや高めなので、座ったままで拾い上げるのは少し困難です。一旦スツールを降りればすぐに拾い上げることも出来ますが、女性は座ったまま「うーん、取れない」と必死に手を伸ばしています。その様がいかにも大変そうなので「大丈夫?」とTが気遣い、「うん、もうちょっと……」なんてやりとりがあって、ようやくのこと、拾い上げることが出来て一安心。再び元の話題で盛り上がり直したのですが、またしばらくした後のこと、「やだぁ、また落としちゃった」と、彼女は再びコースターを落としたのです。

 Tは「またか」と笑い、わたしは「コースターって、濡れてるグラスの底にくっつきがちだよね」などとフォローしたものの、彼女はそれをスルーしてまたもや「うーん、取れない」とやっています。これが三回……最初の一回二回はよかったけれど、さすがに三回目となると、イラっとする。いくらなんでも、落とし過ぎじゃないか。その度に会話が中断するし……と、そこでハッと気が付きました。彼女、注目を自分に集めるために、わざとコースターを床に落としてる?