別れてくれない元恋人と新しい恋人との台湾旅行…彼はわたしが壊したんじゃなかった

別れてくれない元恋人と、新しい恋人

公園の遊具に座るスキニージーンズを履いた長い黒髪の女性の画像 xusenru

 7年ぶり3度目の台湾に行ってきました。単純に渡航した回数では韓国やタイには負けますが、台湾はわたしにとって、ちょっぴり特別な国でもあります。

 2009年。その年はわたしにとっては、人生が変わった年でもありました。
結婚寸前まで行った恋人と破局し、同棲していた家を追い出されたわたしは、仕方なく両親に頭をさげて、ひとまず実家に出戻ることになりました。実家に暮らしているのは、シングルマザーの妹とその娘、そして母と父。
22歳で一人暮らしを始めて以来、盆正月でさえめったに顔を出すことのなかった実家は、離れていれば大切に思えなくもない場所ですが、そこで暮らすとなるとまっぴら御免というのが正直なところ。自分の選んだ場所で生きることを人生の最優先事項に置いているわたしにとっては、そんな場所に出戻ることは敗北であり、最悪の事態にほかなりません。

「実家で上手く暮らせるのか」ということに加えてもうひとつ、わたしは問題を抱えていました。それは、恋人がいまだ別れることを了承してくれていないことでした。毎晩のように電話を掛けてきては、「俺の話を聞いてくれ」という懇願からの恨み言、罵倒、泣き落としに脅しとエモーションのフルコース。
電話に出なければ済む話ですが、飼い犬を人質にとられている状態ではなかなかそれも難しく、また、その頃のわたしは「話せばきっと、理解して納得してもらえる」という希望を持っていたのです。

 そんな状況でも、むしろ不思議と機嫌が良かったのは、束縛が強かった恋人の抑圧から解放されたことで、忘れていた自由を取り戻した喜びが大きかったからだと思います。自分が選んだはずの恋人との暮らすよりも、行き場がないからと仕方なく戻った実家での暮らしのほうがずっと楽だったことにも、気が付かないうちにどれだけの無理をしていたかを思い知らされました。

 そして、わたしがへこんでいなかった最大の要因は、新しい恋人(のような人)の存在でした。その男性――付き合うのは、すべてのことが片付いてからにしようと取り決めていたのですが、ややこしいのでこの文中では彼と呼びます――に救われながら、恋人がわたしのことを諦めてくれるのを待っていたのです。