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  • 2016.10.29

セックスレスが引き起こす激動の夫婦関係から考える、「性欲」≠「愛」という不等式

男女の関係…恋に落ち、共に人生を過ごす事を誓い、結婚生活へ。至って普通のように見えるものの、この過程の中で大きな落とし穴が。そう、「セックスレス」。時間が解決してくれる問題ではないのが厄介な所。みなさんは、パートナーとの関係をどのように構築していますか?

「家族」になることで「セックスレス」に?

大泉りか 人妻は不倫の夢を見るか?
by Adrianna Calvo

 まだ20代の頃の話です。その頃わたしは、とあるご夫婦と仲良くさせていただいておりました。
もともとは、ベンチャーのIT企業に務めている旦那さまと仕事を通して知り合い、その後、独身時代はSM業界にいたことがあるという奥様を紹介されて意気投合し、以来、3人で会うこともあれば、その片方とふたりで飲みに行くこともある。
ものすごく親しいとまでは行かないけれど、ほどほどに仲のいい関係だったのですが、わたしはその両方から、とある夫婦問題についての相談を受けていました

 それは「すっかりセックスレス」ということについてです。
しかし、ふたりは、互いにセックスレスに頭を悩ませていたものの、その悩みの内実はそれぞれ違っていました。
というのも、旦那さまは「親しくなりすぎて、もう、そういう気になれずにセックスレスであること」に苦悩し、奥様は「結婚して以来、セックスを求められず、おざなりにされている」ことにご立腹していたのでした。

 旦那さまと先に知り合ったとはいえ、同性同士ということと、「SMが好き」という共通項があったため、だんだんとわたしは奥様と会う機会のほうが増えていきました。
奥様が「今度、古巣のSMバーで久しぶりにM女として縛られる」というので、誘われて見に行ったこともあります。

 が、ある日のこと。仕事絡みで旦那さまのほうと会って打合せをし終えた後のことでした。「最近、うちの妻と会ってる?」と尋ねられたのです。

浮気がバレた…そして、妊娠

 ああ、ここの家は夫婦でそういう話もあんまりしないんだな、と思いながらも「ひと月かふた月くらい前に飲みに行ったのが、最後ですかね」と答えると、旦那さまが溜息をついて、こう言ったのです。

「実はあいつ、浮気してたんだ」と。
 子供がおらずに、まだ二十代で夜遊び好きで、SMバーでアルバイトをするくらいには性的好奇心があって配偶者とはセックスレス。まさにその奥様は、人妻が浮気する条件が揃い踏みだったのでさして驚きは覚えませんでした。

 むしろ、浮気は時間の問題。その時が「いま来たか」という感想を持ちました。
といっても、そんなことはおくびにも出さずに「あらら。大丈夫ですか」と返したわたしに向かって、その旦那さまが続けたのは、まったく予想外の話でした。

「それがさ。妻が浮気してるって話を聞いた時は、ショックだったんだけど、同時に、自分でもびっくりするくらいにムラムラッて欲情が昂ぶって。で、そのままセックスしちゃったんだ……ずっとレスだったのに」
雨降って地、固まるというわけではありませんが、浮気をキッカケとして停滞していた夫婦の関係に、なんらかの変化が訪れたなら、それはそれでいいことだと思います。しかし、さらにその後、驚きの発言が飛び出してきたのです。

「……で、それで、妻が妊娠しちゃったんだよ」

 えっ!予想だにしていない展開に、かろうじて「それはそれは……おめでとうございます」という言葉を捻り出しましたが、「腹のコの父親、本当にあなたですか?」ということも含めて、なんだかびっくりでした。
その後、妊娠した奥様はすっかり夜の街に出てくることはなくなり、また、旦那さまのほうとは、少し仕事絡みでトラブルがあって、すっかり疎遠になってしまったのですが、このカップルのように「浮気がきっかけでセックスレスが解消した」という話は、実は珍しくはありません。

 特にどちらかのメンタルに原因――パートナーに対して「いまさら欲情できない」「家族になってしまってセックスする気が起きない」といった心持ちであったというのに、相手の浮気を知ったことで突如、ムラムラと欲情が戻ってきて、再び性欲の対象となることはよく聞く話です。

「性欲」≠「愛」という不等式

 そういうことを踏まえると、「性欲」というものは、「支配欲」が大きく占めているのではないでしょうか。もっともそれは、理性ではなく感情の問題だから仕方がないとも思います。

 が、わたしが憎んでいるのは、その「性欲」=「支配欲」を「愛」だと信じて疑わない人がいることです。
「支配欲」や「性欲」であることを直視することはせずに、「愛」だと信じて疑わない、その能天気さと欺瞞がどうしても許せない。なので、それを見て見ぬふりをしている人がいると、どうしても、指摘したくなってしまう。「その感情、愛だと思ってるかもしれないですけど、ただの支配欲ですよ」と。

 そんなことを伝えたところで、相手を嫌な気分にさせるだけ、喧嘩を売っているような行為でもあるとわかっているのです。そもそも、支配欲の何が悪いのか。それがその人の愛のかたちならば、他人であるわたしが口を出す問題ですらない。

 しかし、もうひとつ困ったことには、わたしの人生には、なぜかそういう性質を持った人々が度々現れて、積極的に関わってくる――「愛」を振りかざして「支配欲」を満たそうとしてくるのです。そして、厄介なことには、わたしも見事にその沼にハマってしまう。だからこそ、わたしはその種の人々を殊更に、敬遠することにしているのです。

Text/大泉りか

次回は<彼の携帯見たことある?心が疲弊している恋愛に気付けないことについて>です。
AM読者の皆さんは、彼氏の携帯をこっそり覗いたことはありますか?今回は大泉さんが試写会で見た『ガール・オン・ザ・トレイン』で思い出した過去の実体験を基にしたお話。心が疲れる恋愛に気付けている人は数少ないはず…しかし、読み終えたら何か発見があるかもしれませんよ。

ライタープロフィール

大泉りか
キャバ嬢、SMショーのM女、ボディペインティングのモデルなどの経歴を経て、現在は官能小説家、ライトノベル作家。

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