「ヤレる女」と判断されても嬉しくない!「オネエチャン」という言葉に見える下心

オトコが迂闊に使う「オネエチャン」

大泉りか 人妻は不倫の夢を見るか? BaileyRaeWeaver

先日のことです。夫の経営するバーのカウンターで居合わせた40代独身の常連男性と、最近の恋愛事情を酒の肴に飲んでいる最中のこと。その男性が「オネエチャンが~」と発言をしたのを拾って、その隣にいた、また別の男性(40代既婚者)が、やんわりと柔らかい口調でこう言ったのです。「オネエチャン って言い方は、僕はあんまり好きじゃないですけどね」。

その瞬間、思わず「いいっ!」と声をあげてしまったのですが、「オネエチャン」発言した男性のほうは、なぜわたしがそこで反応したのか、まったくわかっていない様子。なので、「また口うるさいことを言ってると思われるだろうな……」と諦めながら、「オネエチャンという言葉は、女性のことを、人間と見てない感じがしますよね」と補足を入れたのですが、このわたしの行動が酒場にふさわしい振る舞いかどうかはさておき、「オネエチャン」って言葉って、嫌ですよね。

わたしの場合は「オネエチャン」呼ばわりよりもむしろ、「ババア」と呼ばれる立場になりつつあるんですが、それでもさすがに、面と向かって「ババア」という人はいません。
たぶんわたしのいない場所であっても、悪口として確信犯的に言う、もしくはよっぽど口の悪い人以外は、「ババア」呼ばわりはしないでしょう。なんせ「ババア」は絶対に褒め言葉には成り得ないですから。

「男にチヤホヤされること」が嬉しいとは限らない

しかし「ババア」と言うのは、さすがに気が引けるという男性でも、「オネエチャン」をうっかり口にしがちなのは、「ババア」と比べれて「オネエチャン」という言葉には、「負の要素が少ない」と判断するからだと思います。
なぜならば、「オネエチャン」は「若い女性」のことで、それはイコールで「恋愛や性の対象となる女性」ということ。それはイコール「モテるってことだからいいだろ」「男にチヤホヤされるんだからいいだろ」っていう思い込みです。

そう、なぜか「恋愛や性の対象として認めている」ということを、「いいこと」だって信じて疑わない男性は少なくない。だからこそ痴漢に遭ったことに憤っているのに、それを「モテ自慢」と揶揄する輩がいたりもする。「いつまでも、女として見られたい」と願う気持ちと、まったく興味のない男に女として値踏みされたり、上から目線で「ヤレる」とジャッジをくだされて不快なのは、まったく別の話なのに、区別がつかない人がいるんですよね。

というわけで、「オネエチャン」という言葉を悪気なく使う男性に、「あなたに恋愛の対象としてや、性的な目で見られても嬉しくないですよ。なぜなら、あなたはわたしにとっては恋愛や性の対象外ですから」ということを、暗に伝えるための言葉として「オジサン」「オッサン」があると思うのですが、いくら「オジサン」「オッサン」で対抗したところで自己肯定力の強い中年男性は、「最近はオジサン好きってオネエチャンも増えてるし」とびくとも動じないのだから、たまったものではありません。

いや、ひょっとして我々が「オジサン」や「オッサン」から学ぶべきは、その自己肯定力の強さで、「ババア」や「オネエチャン」と呼ばれても、「熟女が流行ってるし」や「若い女ってことで得すればいいや」と思うことが出来ればいいのかもしれない……いやいやいや、そんなふうに諦めてスポイルされるのは、自分的に納得がいかないのです。