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  • 2016.07.23

セックスこそが終わった恋をきちんと成仏させるための手段

昔の恋人に未練を持っていたりしませんか?別れてずいぶん経つのに、忘れられない恋人はいませんか?思いを残している相手がいて、その相手を諦めたいのなら、意外にもするべきなのはセックスなんです。大泉さんの実体験から分かるのは、幸せだったころの思い出を汚してこそ私たちは前に進めるということでした。

大好きだったけれど、あっさりと失くした恋

大泉りか 人妻は不倫の夢を見るか?
©KaylaKandzorra

 別れてずいぶん経つのに、忘れられない恋人はいますか? わたしにはいません。

 いや、正しく言うと、いまだに「あの男、最低のやつだったな」と恨んでいる相手はいますが、「あの彼と再会したい」「出来ることならばやり直したい」という相手はひとりもいません。というと、今がよっぽど幸せで満ち足りているようですし、実際にまぁ、結婚相手にも恵まれて幸せではあるんですが、例え不満があったとしても、「あの彼ともう一度……」とは思わないと思います。なぜなら、思いを残している相手というのが、ひとりもいないからです。

 昔、大好きだった彼がいました。学生時代のことです。付き合いはじめはクリスマスイブ。「飲み会があるけど、来る?」と女友達に誘われて、彼氏のいなかったわたしは、参加することにしました。総勢15人以上はいたと思います。男の子たちは、中野を地元とする集団で、女のコはその彼女や、彼女の友達たち。ごちゃごちゃのメンツで、居酒屋を二軒ほどハシゴしたところで、隣に座っていた男のコに「一緒に帰らない?」と誘われたのです。

 実はその日の夕方、わたしはセフレと会っていました。セフレといえども、クリスマスイブに誘われたのは嬉しくて、いそいそと彼の家に出掛けたのに、したことはいつもと同じくセックスだけ。クリスマスらしいことといえば、高いプレゼントを遠回しにねだられたくらいで、モヤモヤとした気持ちのまま、参加した飲み会でした。どうせ終電も行った後で家には帰れない時間です。「まぁ、いいか」とノリでたまたま隣にいた彼と二人で抜けて、ラブホにふけこんだのでした。

「この人、ちょっといいな」と思ったのは、セックスを終えて眠りにつく時に、後ろから抱きかかえる態勢を彼が取ったからです。名前と年齢くらいしか知らないけれど、そのぬくもりに、なんとなく満ち足りた気分で迎えた朝、「付き合うか?」と尋ねられました。特に断る理由もなかったので頷いて、わたしたちはその日から、付き合うことになりました。

 学校帰りに会ったり、休みの日はデートをしたりと平穏な日々が過ぎていきました……と言いたいところですが、そういうわけでもありませんでした。ある日突然、「ヤバい人に追われてる」と連絡があったきり、数日間、連絡が取れなくなったり、ようやく連絡が取れたと思ったら「友達の家にいるけど、寝る道具がなくって、家になんかない?」と言われて仕方なく、見知らぬ街まで毛布を届けたり、「ちょっとコンビニに行ってくるわ」と居候している家の家主(男性)と二人きりにされ、それはなんともなかったのですが、後に、彼氏の男友達に「えっ、あいつんちの家主、女と見れば見境なく襲うやつだけど無事だった?ちなみにあいつのチンコ、アイスコーヒーのロング缶サイズだから、マジで」とドキッとするようなことを言われたりと、いろいろな刺激的な体験を与えてくれました。

 しかし、1年も経たないうちにひょんな口喧嘩から別れ話にと発展し、信じられないくらいにあっさりと、別れることになりました。まだ大好きだったので、「考え直して欲しい」とすがったけれど、彼のほうは、もうその気はなく、わたしはあっさりと、恋を失くしたのでした。

再会のセックスで感じた違和感

 その後、彼はひとつ年上の女の人と付き合い始めたらしいという噂を伝え聞いて、心を痛めたりもしました。通っていた学校を卒業し、上の学校へと進み、それも卒業して就職しても、彼のことはいつも心のどこかにあって、誰と付き合っても「あの人のほうが好きだったな」といつも比べてしまう自分がいたのです。

 しかし、再会が訪れたのです。「久しぶりにみんなで集まって飲もうって」と女友達に誘われ、わたしは再び、彼の住む中野を訪れました。久しぶりに会った彼は、外見もしゃべることも、ほとんど変わっていませんでした。そのせいで、過ぎ去った長い時間があっという間に戻ったようにも思えました。

 飲み会が終わると、いまは実家を出て、近くで一人暮らしをしているという彼の家に行って、わたしたちはセックスをしました。彼には、付き合っている恋人がいるという話だったけれど、そんなことは気にならなかった。久しぶりに抱いてもらえるだけでよかった……と思っていたけれど、それは、全然違ったのです。

「あれ……なんか……」。
行為を初めてすぐに、違和感を感じました。この人って、こんなに下手くそだったっけ? そう思いながらペニスに手を伸ばすと、やっぱり、ずっと思っていたのとちょっと違う。続ければ続けるほどに、違和感は強くなり、気持ちも体も萎えてゆくばかり。終わった後には完全に後悔を感じていました。向こうがどう思ったのかはわからないけれど、その後連絡が来なかったことを考えると、やっぱり「ちょっと違った」と思ったのではないかと、想像しています。

 これ以降、少しでも思いが残ってしまった相手とは、再会するごとにセックスをすることを心掛けるようにしています。すると、不思議なことにあっさりと「こんなものだったか」とあっさりと諦めがつくんです。大切にしてる彼女と、ちょいと懐かしさついでにつまみ食ってみた元恋人とじゃ、セックスにかける“優しさ”が段違い。彼女だった頃に、さんざん優しく抱かれた記憶があるからこそ、別れた後のセックスが、熱や力が入っておらずに、おざなりなことが身に染みてわかる。きちんと終わった恋を成仏させるための手段にセックスは有効なのです。「いい思い出をわざわざ自分で汚す」なんて、愚かな行為だと思う人もいるかもしれませんが、そうじゃないと前には進めない。過去の自分なんざ踏み台にして、進んだ先にしか幸せはないのです。


Text/大泉りか

次回は《「人前で脱いで縛られる選択」をしたことで人生が変わった》です。

ライタープロフィール

大泉りか
キャバ嬢、SMショーのM女、ボディペインティングのモデルなどの経歴を経て、現在は官能小説家、ライトノベル作家。

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