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  • 2016.06.11

18歳まで残り10日…2つの失敗が招いた「青春の区切り」

18歳まで残り10日となった日。友人と遊ぶ時の待ち合わせの場所を池袋の「デートクラブ」に設定し、制服姿でお店にいると……「青春に終止符を打つ」ということは突然やってくるのかもしれません。

白昼の出来事
高校生活最後のゴールデンウィーク

大泉りか 人妻は不倫の夢を見るか?
©Silentmind8

 高校生活最後のゴールデンウィークを迎える、少し前のことでした。

 その日の放課後、わたしはいつも通りに西武池袋線に乗ると、池袋駅で降り、P'PARCOの先にある某デートクラブへと向かいました。
クラブに入ると、顔見知りの女のコたちがいて、なんてことない雑談をしていたら、ピンポンとインターフォンが鳴りました。
わたしはその日、他校の女友達と遊ぶ約束があり、その待ち合わせ場所として、そのデートクラブに集まることになっていました。
だから、指名は別に欲していなかった。
けれど、その日に限って、その客に選ばれたのです。

 待ち合わせの時間までは、まだしばらくありました。
「30分だけお茶をして帰ってくればいいか」。
男性客から五千円もらえれば、今日遊ぶお金にもなります。
「○○ちゃんたちが来たら、すぐに帰ってくるって言っておいて」と受付の男性従業員に頼み、エレベーターを降りてマンションの一階のエントランスへ。
そこで待っていたのは30代前半の男性でした。

「どうします? とりあえずお茶でも飲みますか」と、連れ立って歩き出した瞬間です。
「ちょっと、いいですか。警察です」
見知らぬ男女の集団4人ほどが駆け寄ってきたかと思うと、わたしの腕をガシッと掴みました。
何も出来ぬままに、そのまま道端に止められたワンボックスカーに連れ込まれそうになり、とりあえずわたしは「助けてー!拉致られるっ!」と、叫びました。
先ほど合流した男性は、あっけにとられた様子でしたが、「警察」という言葉に正気に戻ったのが、さっさと、どこかに逃げていってしまいました。

 代わりに、突然の真昼の捕り物劇を遠巻きに見ていたギャラリーのひとりの男性が、わたしを羽交い絞めしているひとりの肩を叩いて「警察を呼びますよ」と注意してくれたのですが、「いえ、わたしたち、警察なんです」と警察手帳をかざされて、次に制服姿のわたしを見て、「なるほど」と何やら納得した顔で、去っていってしまいました。

 ジタバタと抵抗しながらも、車の中に連れ込まれると、助手席に座っている男性が、無線でどこかを通信を始めました。
その会話から推測するに、どうやらわたしは、このまま巣鴨警察署へと連れていかれる様子。
そう、わたしは、補導されたのでした。

自腹のコンビにサンドイッチと、泣き喘ぐ母

 巣鴨警察署へと向かうワンボックスカーの中で、わたしは「失敗した」と後悔をしていました。
制服を着ていたことにです。

  というのも、わたしが通っていた学校は都立高校で制服はなく、わたしも入学当時は私服で通っていたのですが、その私服が派手だとか露出が高いとかで、先生に呼び出されて指導を受け、学内では私服の上に体育用のジャージを羽織るという手段で凌いでいました。

  ところが、4月も後半となり、外の気温はすっかり初夏。
冷房設備のない学内でジャージを着こむのは暑いということで、その頃は、適当なチェックのプリーツスカートに私立高校の友達から貰った校章付きのベスト、ラルフローレンの白いシャツに、やはり他校のスクールバックといういで立ちで普段過ごすことが多くなっていました。
そして、その日に限ってわたしは制服を身に着けていたのです。

 もうひとつの後悔は、誕生日のことです。
というのも、それから10日もすれば、わたしは18歳の誕生日を迎えることになっていました。18歳ならば、もしかして補導はされなかったかもしれない……

 しかし、いくら“If”を考えても時すでに遅し。
わたしは巣鴨警察署の中にある小さな個室に入れられて、事情聴取を受けることになりました。

 名前、住所、学校名から始まり、「デートクラブの中には、何人くらい女のコがいたか」「そのうち、高校生はどれくらいいるか」といった質問をされたので、それぞれ適当に返していきました。
しかし、「デートクラブにはどれくらいの頻度で出入るしているか」という質問には、「今日が初めてです。友達と遊ぶ待ち合わせ場所に、あそこを指定されたんです」としゃあしゃあと嘘を答えました。
バレバレだったと思うのですが、そこは特に突っ込まれることはありませんでした。

 車に連行される際に、服装が乱れたので、スカートの中に手をつっこんでシャツを引っ張って直そうとすると、警察官の女性には「人前で、そんなことしないの、みっともない!」と叱られましたが、男性の警察官は優しくて「ほら、これでも食べて落ち着いて」とコンビニのサンドイッチを手渡してくれました。

 調子に乗って「かつ丼じゃないんですか?」と返すと「それはもっと罪が重い人にね。でも食べたいからって犯罪犯しちゃダメだよ。それにね、これ、ポケットマネーなんだからね!」と男性警官は気さくな口調で、まったく「怖い」ということはありませんでした。

 しかし、調書を取り終えたところで、「ご両親と教師とどっちか、引き取りに来てもらうから、連絡先を教えなさい」と詰められたのは、困ってしまいました。
担任教師はあまり理解のあるタイプではありませんでしたし、母親は性的に潔癖なタイプです。
けれど、どちらかを選ばないと返してもらえないということで、しぶしぶ自宅の電話番号を教えて母親に迎えに来てもらうことになりましたが、そこからが地獄でした。

 親戚の叔母さんがたまたま上京していたらしく、ふたりで来てくれたのですが、母親はひたすら泣き喚き、あげく、「汚らわしい! 気持ちが悪い!!!」と道端で餌付き始めましたが、しかし、胃の内容物が出てくることはありませんでした。

  わたしは(自分で迷惑を掛けておきながらも)「そういう大げさな人なんだよなぁ」と冷ややかに、げえげえと出もしない胃の内容物を、必死に吐きだそうとしている母親を見つめ、若干、冷静な叔母は場をなんとか収めようとして、 「ほら、このコは好奇心旺盛なコだからね、なんでも見たかったんでしょ。ね、なんで、デートクラブなんてところに行ったの?」と問うてきたので、「うーん、ほら、わたし、将来は出版に進みたいから。取材みたいな?」と返すと、叔母は笑い、わたしは初夏の夜空を見つめながら、「あー、わたしの青春は、今日で一区切りついたのかもしれない」とセンチメンタルな気分になり、母はひたすらに、P'PARCOの横の植え込みにエア―ゲロを吐き続けていました。

 その日を境に、デートクラブには、一切足を運ばなくなり、それから10日も経たないうちに、わたしは18歳になったのです。

・・・次回は《キャバクラの面接に受かった女子大生が変えようとしなかった自分》をお送りします。

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Text/大泉りか

ライタープロフィール

大泉りか
キャバ嬢、SMショーのM女、ボディペインティングのモデルなどの経歴を経て、現在は官能小説家、ライトノベル作家。

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