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  • 2016.05.21

口コミから生まれる「パパ」と「女子高生」の池袋ネットワーク

街中で指を三本立てられたとしたら、アナタは何を考えますか…?今回は90年代初頭~中旬に東京・池袋で起こっていたことがどのようなことだったのか?そして、今に繋がるlことはあるのか?などを考えながら、90年代を覗いてみませんか?

今も昔も「口コミ」が最大の保証

大泉りか 人妻は不倫の夢を見るか?
©by ValentinaM

 90年代初頭から中旬くらいの東京・池袋は、今思えば狂った街でした。
どれくらい狂っているかというと、電話ボックス(懐かしい……)の中で電話を掛けていると、見知らぬ中年が近寄ってきて、こちらに合図をするように、指を三本立てるのです。

 これは、「三万円でどう?」というジェスチャーです。
その頃、女子高生の「ウリ」の相場は三万円から、と言われていて、多くの男性はそれに従っていました。
出会うことが困難なせいか、値段が保たれていたのです。
供給よりも、需要が勝っていたということです。
いまと違って、インターネットは一般に普及していない時代です。
「女子高生と知り合いたい」と思っている中年男性は、テレクラに通って運に任せるか、伝言ダイヤルを試してみるか、デートクラブに行くか、道端で声を掛けるかの四択くらいしかありませんでした(ちなみに伝言ダイヤルというのは、雑誌などに載っている出会い専用の番号に電話を掛け、そこにメッセージを残すと、聞いた人から「プライベートボックス」と呼ばれる自分専用の番号へとメッセージが届くシステムです。男女の出会いによく使われていました)。

 このうち、最も初期投資を掛けずに出来るのが、街中の声掛けでして、「三万円で遊ばない?(=ホテルに行ってセックスさせて)」以外にも「パンツを売ってくれないか」「靴下を売ってくれないか」「唾を売ってくれないか」と、“女子高生”であれば身に着けているものはなんでも元値以上で換金できるというふざけた時代だったわけです。

 しかし、いくら難しいことは何も考えないおバカな女子高生であったとしても、さすがに道端で声を掛けてきたオッサンとホテルに行くような危険な真似をする人は、あまりいませんでした。
そもそも、デートクラブに行けば、30分お茶を飲むだけで五千円貰えるご時世です。
ホテルに行くなら、それなりの見返り(ようは金)と安全だという保証が欲しい。
では、どうやって保証を得るか。
それは今と同じ「口コミ」です。
人様が試して「よかった」というものは、安心して自分も試せる。
そこで登場してくるのが、女子高生同士、「オジサン」を融通し合うシステムです。

「オジサン」や「パパ」と女子高生の平和なネットワーク

 セックスを許す代わりに、お金をくれる中年男性のことを、我々は蔑む気持ちを込めて「オジサン」、もしくは、一応定期収入をもたらしてくれるありがたいお方ということで、「パパ」と呼んでいました。
そんな都合のいい「オジサン」や「パパ」たちを、互いに斡旋し合い、シェアするのが友情のひとつの形でもありました。
「オジサン」「パパ」側にしても、いろんな女子高生をつまみ食い出来る上に、“紹介”ならば美人局を心配したり、シャワー浴びている間に財布の持ち逃げされるような目に会わないで済むために、都合がよかったと思います。

 だから、中には「いいコがいたら紹介してくれない?紹介してくれたら、紹介料払うから」とまで頼んでくる人もいました。
そうして、ウリをしている女子高生のうち、何割かは女衒の役割を兼任する者が現れ始めます。
むしろ自らはウリをしないけれども、ウリができる知り合いを斡旋はするという、売春の元締めめいた女までもが存在していました。

 女子高生が、自分を買春した男に、友人の女子高生を斡旋して金を貰う。
「あのコだったら、まぁ、オジサンも気に入るかな」と値踏みしたり、反対にオジサンに「援助交際は初めてのコだから、5万円あげて、あたしには紹介料3万円ね」と価格交渉をしたり、友人の“女としての価値”を中年の男の視線で測り、そして値段をつける
なんとおぞましい話でしょう。

 しかし、一方で、わたしたちは自由でした。
友人の紹介であっても気が乗らなければ「やめとくー!」の一言で断ることができ、お金がなければ「誰かいい人いないかなー」と紹介を頼む。
友人に紹介料が入ることは、搾取ではなく借りを与えることで、「これ、買っちゃった。ありがとね!」とわかりやすく感謝される。
デートクラブの受付に支払われる入店料はどこに行くのか、誰の儲けになるのか、さっぱりわからなかったけど、紹介料ならば友達に確実に入るのです。
売春と斡旋の是非はさておき、当時、そういうネットワークが存在した。
そしてそのネットワークは、わたしたち――売る女と、斡旋する女と、女を買いたいオジサンの間――で平和に機能していたことは、事実のひとつです。

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…次回は《震える子猫ではなくハイエナ?中年男性と女子高生のアンビバレンツな関係》をお届けします。

Text/大泉りか

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ライタープロフィール

大泉りか
キャバ嬢、SMショーのM女、ボディペインティングのモデルなどの経歴を経て、現在は官能小説家、ライトノベル作家。

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