口コミから生まれる「パパ」と「女子高生」の池袋ネットワーク

今も昔も「口コミ」が最大の保証

大泉りか 人妻は不倫の夢を見るか? ValentinaM

 90年代初頭から中旬くらいの東京・池袋は、今思えば狂った街でした。
どれくらい狂っているかというと、電話ボックス(懐かしい……)の中で電話を掛けていると、見知らぬ中年が近寄ってきて、こちらに合図をするように、指を三本立てるのです。

 これは、「三万円でどう?」というジェスチャーです。
その頃、女子高生の「ウリ」の相場は三万円から、と言われていて、多くの男性はそれに従っていました。
出会うことが困難なせいか、値段が保たれていたのです。
供給よりも、需要が勝っていたということです。
いまと違って、インターネットは一般に普及していない時代です。
「女子高生と知り合いたい」と思っている中年男性は、テレクラに通って運に任せるか、伝言ダイヤルを試してみるか、デートクラブに行くか、道端で声を掛けるかの四択くらいしかありませんでした(ちなみに伝言ダイヤルというのは、雑誌などに載っている出会い専用の番号に電話を掛け、そこにメッセージを残すと、聞いた人から「プライベートボックス」と呼ばれる自分専用の番号へとメッセージが届くシステムです。男女の出会いによく使われていました)。

 このうち、最も初期投資を掛けずに出来るのが、街中の声掛けでして、「三万円で遊ばない?(=ホテルに行ってセックスさせて)」以外にも「パンツを売ってくれないか」「靴下を売ってくれないか」「唾を売ってくれないか」と、“女子高生”であれば身に着けているものはなんでも元値以上で換金できるというふざけた時代だったわけです。

 しかし、いくら難しいことは何も考えないおバカな女子高生であったとしても、さすがに道端で声を掛けてきたオッサンとホテルに行くような危険な真似をする人は、あまりいませんでした。
そもそも、デートクラブに行けば、30分お茶を飲むだけで五千円貰えるご時世です。
ホテルに行くなら、それなりの見返り(ようは金)と安全だという保証が欲しい。
では、どうやって保証を得るか。
それは今と同じ「口コミ」です。
人様が試して「よかった」というものは、安心して自分も試せる。
そこで登場してくるのが、女子高生同士、「オジサン」を融通し合うシステムです。