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  • 2015.11.21

決して他人には見せてはいけない「自分だけのオナニーのオカズ」

近頃よくニュースで耳にする「リベンジポルノ」という言葉。インターネットの普及や素人投稿雑誌などで「見られて興奮する女性たち」に見慣れているためか、軽く考えてしまいがち。自分の性癖をもつことは大いに結構ですが、その際は本当に慎重に行動していただきたいものです。

オナニーのオカズから見る性癖

大泉りか 官能小説 人妻は不倫の夢を見るか 肉 性欲 リベンジポルノ
Emilian Robert Vicol

 好きだったり付き合っている男性のオナニーのおかずをチェックすることが大好きです。今、一緒に住んでいる夫は、コレクター性質ゆえか、アダルトDVDを100本ほど、ずらりと棚の上に並べています。なので、チェックせずとも勝手に目に入ってきて、「巨乳で淫乱な女性にフェラ抜きされるのが好きなんだなぁ」「わたしは巨乳ではなく申し訳ないなぁ」等といったことを、一緒に暮らし始めた当初は考えたりもしていました。が、慣れとは恐ろしいもので、今ではそこに存在することすらすっかり忘れてしまうほど、風景に溶け込んでいます。
男性の性癖としては、ノーマルといえる範疇のものばかりなので、余計に気にならないのかもしれません。さすがにわたしでもスカトロビデオがずらりと並んだ棚の前でご飯を食べるのは、抵抗があります。

 今の夫は仰天するような性癖の持ち主ではありませんが、結婚する前に付き合っていた男性の中には、少し変わった性癖を持った人もいました。といっても、くすぐられて呼吸困難を起こしている女性に萌えるだとか、アナルセックスが好きな人だとか、わたしの友達が働いている風俗にわざと行ったりというレベルなので、大したことはありません。
あっ、ひとりだけ超暴力的な男性もいて、その人にはライターの直火で太ももを燃やされたりしたこともあるのですが、この話はまた別の機会に。今回は別の男性のお話をしたいと思います。

 あれは、当時、お付合いしていた恋人が、引っ越しをするというので、荷造りを手伝っている最中のことでした。戸棚の中に隠された数冊のエロ本を見つけ、「おっ、おかず発見!」とほくほくとしならがチェックしたところ、そのすべてが素人投稿雑誌だったのです。

 いえ、実はわたしも素人投稿雑誌を眺めるのは大好きです。というのも、普通のエロ本のグラビアを飾っているモデルの女性たちは若く美しくスタイルも抜群ですが、綺麗すぎて面白味はありません。それに比べて素人投稿雑誌の女性たちは、若くもなく綺麗でもなくスタイルもごく普通ですが、だからこそ、「えっ、普通に見えて、こんなすごいことをしてるの?」という驚きを楽しむことが出来る。
しかも、投稿者たちは雑誌内で競いあう傾向にあるので、「とにかく目立て!」とばかりに『どこからどう見ても中年女なのにブルマで真昼間に散歩』『耳なし芳一のごとく全身に卑猥な落書きをされてダブルピース』『農作業中の老人夫婦たちの注目を浴びながらトラクターの上で大開脚』といった最高の写真たちがどのページにも載っている。こんな面白い雑誌、他にはありません。

 わたしが『面白い』という視線で素人投稿誌を見ているからといって、すべての人がそうではないでしょう。この生々しさに劣情を覚える男性だっていることはわかります。素人投稿誌の女性たちを観ながら、オナニーをしたっていいのです。わたしには何の被害もないので問題はない。ただひとつ「ん?」と心にひっかかったのは、しばらく前に、その恋人から貰った、使いさしのプリンター用の写真用紙の中に紛れこんでいた数枚の写真のことがあったからでした。

リベンジする気のない人様のポルノ

 それは、キャミソールだけを纏い、乳房と陰毛をはみ出させた女性の写真でした。ヌードといってもそんなにえげつないものではなく、映っている女性が綺麗な人であることもあって、どちらかといえば男性誌のヌードグラビアのような雰囲気さえもありました。「へぇ、こういうのを撮ったりしてたわけね」と思ってその時は大して何も思わなかったのですが、投稿誌を見つけた際に、その写真のことをふいに思い出して、なんだか嫌な気持ちを覚えました。というのも、その男性の迂闊さにです。

 もしかして自分のヌード写真がまったく関係のない第三者の目に触れても、気にしない女性もいるかもしれません。けれど多くの女性は気にするはずです。だからきっとその写真は、「他人には見せない」という条件でもって撮ったもののはずなのです。それをプリントアウトして、そのままうっかりと写真用紙の束の中へと仕舞って忘れてしまったのでしょうが、それがわたしの目に届くということが、見せられたわたしに対してと、見られてしまったその被写体の女性に対しての、両方に酷い。

 近頃では『リベンジポルノ』という言葉も生まれ、問題になっていますが、リベンジする気がなくても、人様のポルノを迂闊に他人に見せてはいけないのは、当たり前のことです。そんな、本来は慎重に丁重に取り扱わないといけないヌード画像を、うっかりと他人に見せてしまう迂闊さ、それは、女性の裸を尊重する気持ちの薄さゆえではないかと思います。
そして、それは、素人投稿誌の「見られて興奮する女性たち」を見慣れているがゆえ、「恋人以外に裸を見られるなんてこと、世の中には溢れている」と軽く考えているということが一因となっているのではないか、とも思うのです。

 生まれつきであれ後天的に身に着けたものであれ、性欲の嗜好があるのは仕方のないことです。想像の中でならば、いくら、どんな不埒でインモラルなことをしてもそれは自由です。けれど、実在の人物を取り扱う以上は、限りなく慎重にして欲しいものです……と真っ当らしいことを書きながらも、実はわたしにも恥ずべき性癖があることを最後に告白したいと思います。

 それは冒頭に書いた「人のオナネタを探る」という悪癖についてです。人を客体化し、その性的嗜好を把握すること、。そのことにより、下世話な好奇心を満たすだけならず、把握することでその人を支配している気分にもなっている。そんな、自分のあさましい欲望にウンザリするけれども、止められない……性癖というものは、真に至極厄介なものであります。

…次回は《売るのは「女」でなく「人間」だ!世間が抱く女流官能作家のイメージに物申す》をお届けします。

Text/大泉りか

ライタープロフィール

大泉りか
キャバ嬢、SMショーのM女、ボディペインティングのモデルなどの経歴を経て、現在は官能小説家、ライトノベル作家。

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