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  • 2015.11.07

「女子は恋愛を上書き保存する」は本当かもしれないと感じた3度目の結婚記念日

元カレとの思い出の品を見るたびに蘇るのは、楽しかった思い出?それとも、辛かった思い出?どちらにしても、長い人生で楽しい出来事があるたびに、恋愛の思い出はどんどん上書き保存されていくものなのかもしれません。

とある結婚記念日のお祝いに

大泉りか 官能小説 人妻は不倫の夢を見るか 肉 性欲
Christian Gonzalez

 わたくしごとですが、つい先日、3度目の結婚記念日を迎えました。何度か危機に直面しながらも、無事に結婚4年目を迎えることが出来たお祝いに「何か贅沢なものを食べよう」と話し合ったところ、ふたりとも、米の間にもう一段鰻の挟まった『鰻の二段重』を食べたことがない、ということが発覚し、ならばこの機会に……ということで、神田の鰻屋でお祝いの膳を囲むことになりました。
しかしながら、土壇場で「そんなに量が食べられないかも」とわたしのほうは怖気づいて『上』でお茶を濁したのですが、夫のほうは二段重にトライ。「正直、贅沢ではあるけど、米の量が少なくって……普通のがいいな」という感想をいただき、「なるほど、実際に経験してみないと、わからないことがあるのね」と思ったのでした。

 さて、ふたりで鰻を味わいながら、わたしが何を考えていたかというと、夫と過ごしてきた3年の月日に思いを寄せていた……のではありません。実は、酷い別れ方をした別の男性のことを思い出していました。思い出すキッカケとなったのは鰻です。

 その彼は、そもそも、あまり金銭的に恵まれた状況の持ち主ではなく、またお酒を飲まないこともあって、外食自体をあまり好まない人でした。わたしはもともと、酒飲みでかつ、外食好きな女でしたが、同棲を始めたことがきっかけで、彼に合わせるかたちで内食するようになり、そのほどんとの食事作りはわたしが担当することとなりました。もともと料理を作ることは好きなので、ストレスはありませんでしたが、たまには「外食したいなぁ。〇〇が食べたいなぁ」と思うことは多々ありました。
しかし、何度か、誘いを「恥ずかしいんだけど、お金が厳しい」と断られたこともあって、外出した際にひとりで外食したり、たまに友人と会って好きなものを食べることで、なんとか外食欲を満たしていたのでした。

辛い思いでは楽しい思い出で上書きする

 その日は土曜日でした。彼は、土曜日の終業時刻が読めない職場で働いていたのですが、その日は昼の15時すぎに帰ってきて、こう言ったのです。「俺って酒も飲まないし贅沢な外食もしないだろ?だから、たまにはいいよなって思って、仕事帰りに鰻を食べてきた。今日は給料が出た後だから、奮発して二段にしちゃったよ」

 それを聞いた瞬間、「えっ!」とあっけに取られた気分になりました。もちろん、自分の金で何を食べようと自由ですし、付き合っているからといって、必ずしも行動を共にしなくてはいけないわけではない。現にわたしだって外に出た時はひとりで好きなものを食べていました。

 けど、モヤる。

 だって、ラーメンや蕎麦ならともかく、鰻の二段重ですよ。「お腹空いたし、さっとなんか食べて帰ろうかなぁ」と思った時に、仮に鰻屋が目に入って「あっ、鰻食いたい」と思ったとしても、「家にいる恋人も食べたいだろうなぁ……」と考える思いやりや配慮や優しさはないのか。

 決して、「ひとりだけ美味しいもの食べてズルい」ではないんです。ただ、「一緒に美味しいものを食べたい」と思ってくれないことが悲しかった――『鰻の二段重』に持っていたのは、そんな思い出でした。けれど、これから先は、『鰻の二段重』を見かける度に思い出すのは、「ひとりで食いやがったアイツ」ではなく「夫とふたりで結婚記念日に食べた」ことです。

 辛い思い出、腹の立つ思い出、悲しい思い出を消すには、楽しい思い出で上書きをするという方法があることを、私は3度目の結婚記念日に知りました。

…次回は《隠し切れないモテの戦略!?女をイラッとさせる「おエロマウンティング」》をお届けします。

Text/大泉りか

ライタープロフィール

大泉りか
キャバ嬢、SMショーのM女、ボディペインティングのモデルなどの経歴を経て、現在は官能小説家、ライトノベル作家。

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