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  • 2015.05.02

高校生カップルのセックスシーンから「人間とは?」を問いかける『寄生獣 完結編』の魅力

昨年11月に公開された映画『寄生獣』の完結編に当たる『寄生獣 完結編』。大人気マンガ・アニメの実写化ということで賛否入り乱れて話題沸騰中です。今回は「性」と「生」の視点で本作の魅力をご紹介します。

 『寄生獣 完結編』は2部作の後編に当ります。物語は前作『寄生獣』のその後を描いていきます。

柳下修平 寄生獣 セックス 映画
©2015映画「寄生獣」製作委員会

 この物語の設定は一応日本。人間の頭部を乗っ取る寄生生物「パラサイト」と人間との戦いを描いています。
よくあるエイリアンものと異なるのは、このパラサイトが人間の形のまま人間を乗っ取ること。つまり脳に寄生するのです。

 ですので、ぱっと見では判断できない。これが厄介。ある日夫の様子がおかしいと思ったら、夫はパラサイトに脳を乗っ取られていて、妻の頭部をガブリ。パラサイトは人間を食べるので、この夫は猟奇殺人者ではないかと疑われます。

 しかしどうもそうではない。徐々に明らかになっていくパラサイトという寄生生物の正体。物語は後編『寄生獣 完結編』に移って、人間VSパラサイトの全面戦争に。
人類とパラサイトの共存は可能なのかという命題を持ちながら、物語は終焉へと突き進んでいきます。

 前編の『寄生獣』は染谷将太演じる主人公・泉新一と、彼の右手に寄生したミギーとその周囲が描れていましたが、後編は群像劇的に。そうすることで、物語としての面白さだけでなく、私たちが生きる上での究極の問いを何度もぶつけてきます。

 前編でも言及された、「人間は様々な生物を食すが、パラサイトは人間しか食べない。パラサイトの方が慎ましいではないか」という問いは、後編でも答えを出さずに私たちにぶつかってきます。

「本当の悪は人間なのでは?」
「年間失踪者や自殺者は万単位に及ぶ。少し食べたところで変わらない」
「人間こそが寄生虫そのものではないか!」

 これらには「いやいや!」と即答したくなりますが、反論するだけの論拠建てができないのが強烈。

 マンガ原作のエンターテイメント映画でありながらも、私たちの価値観にストレートにぶつかってくる作品でもあるわけです。

 それでは「性」と「生」について具体的に魅力を語っていきましょう。


橋本愛が演じる里美の美しき処女喪失シーン


『寄生獣 完結編』はPG12ですが、グロさ以外にラブシーンもギリギリなラインを攻めています。

 主人公泉・新一とその同級生・村野里美のラブシーン。染谷将太と橋本愛が演じていますが、設定上この二人は高校生。つまり高校生の初体験セックスを描いています(小中学生には刺激が強いかも!)。

柳下修平 寄生獣 セックス 映画
©2015映画「寄生獣」製作委員会

 このセックスシーン、私が率直に感じたのはエロさではなく美しさです。

 そもそも男性でも女性でも、初体験はあたふたするもの。え?しますよね。しました(余計なこと書いたかもしれない)。

 泉新一も村野里美も初体験なのは明らか。つまり、童貞と処女のセックスシーンなわけです。しかしそこに迷いもあたふたもありません。とはいえ、処女の里美は痛がります。
これが実にリアル。それにどうこう突っ込みたいわけではなく、ただ単純に「美しいなぁ」と思ったんです。映画に理想や幻想を入れ込むのは、フィクションであればあって当然のこと。

 迷いなく愛を感じるキスシーンから、恥じらいなく自然と服を脱ぎ、下着を剥ぎ、そして重なり合う肌。そして「していいよ」の頷きからのセックス。

 里美の喘ぎは痛みからくるもの。リアルや映画でセックスの喘ぎ慣れしてない男性からしたら興奮ものかもしれません。
しかし、冷静に見ればその姿は本当に美しく幻想的。外の雨の音もBGMのように、そのムードをよりいっそう盛り上げているように感じるほど。

 物語の進行上、やっと通い合った愛情がセックスに結び付いたんだと思うと、本当に身も心も運命として繋がった二人なんだなと微笑ましい気持ちになります。


「性と生」


 セックス描写の美しさは、人間の美しさ、そして「人間って悪くないかも」ということに繋がります。つまり「性と生」です。

 セックスとは恋人同士、いや、付き合っていなくても性的衝動に駆られる行為です。
快楽や刺激、ストレートに言えば気持ち良さを追求するのが一般的ではありますが、人間という種が半永続的に存在するための、究極的には子孫繁栄のための手段・行為になります。

『寄生獣 完結編』のセックスは、高校生同士の行為かつ、たった1回なので子供は宿りません。しかし、この作品は人間の存在意義そのものを問いているので、セックスという行為を入れたことに意味があると思っています(原作でもあるようですし)。


柳下修平 寄生獣 セックス 映画
©2015映画「寄生獣」製作委員会

 美しきセックスは人間の美しさを示すもの。美しき愛の形は人間の美しさを示すもの。

 人間はありとあらゆるゴミを出し、他生物の承諾なしに「食物連鎖」というあたかも正当な理由を掲げて命を奪ってきました。
そんな実態を踏まえた上で、「人間は悪しき生物かもしれないけれど、全てがそうではないんじゃないかな?」を『寄生獣 完結編』は示してきます。

 映画におけるセックスを見ながら、実際にセックスをしながら、人間の存在そのものや子孫繁栄を真面目に考える機会なんて普通はないでしょう。

 映画のセックスは二人の気持ちにフォーカスして、それがレイプシーンなら被害者と加害者の気持ちに思いを馳せる。
実際にセックスをするなら、目の前の相手を思い、自らの快楽を感じます。「人間とは?」なんて考えません。それが普通であり、それで良いのです。

『寄生獣 完結編』は“美しきセックス”としての魅力を放ちながら、「人間とは?」を考えさせます。しかし、その答えは「こうだ!」と正解を示すわけではありません。
私たちが悩み考えて、仮に答えを出せなくても、その考える行為から「生きる」ことの意味を改めて感じることができます。

『寄生獣 完結編』の美しきセックス。でも、それは映画の一側面の一魅力でしかありません。
本作の広義テーマは、エンターテイメント映画です。前編『寄生獣』と合わせて、是非ゴールデンウィーク期間中に楽しんでみてはいかがでしょうか。


絶賛公開中!

監督・VFX:山崎貴
キャスト:染谷将太、深津絵里、阿部サダヲ、橋本愛、新井浩文、岩井秀人、山中崇、ピエール瀧
配給:東宝
2015年/117分/PG12
URL:映画『寄生獣 完結編』公式サイト

Text/柳下修平

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ライタープロフィール

柳下修平
1986年生まれ。映画ライター・ブロガー。100人規模の映画ファンイベント「映画ファンの集い」主催者。

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