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  • 2015.05.12

起承転結でいうなら好きなのは転から始まるようなセックス

【5月のテーマはオフィスラブ】職場やバイト先で起こる「オフィスラブ」。彼のスーツ姿にキュンとして…気がついたら好きになって…気がついたらセックスしてしまって…。今日もどこかでたくさんのオフィスラブが生まれているかもしれません。

佐々木あらら 初体験 処女 童貞 卒業 エロ短歌
Valetina Manjarrez

 美人と付き合うのがとても苦手でした。

 なぜか無愛想になってしまうんです。

 美人を憎んでるとか、美人につっけんどんにすると異様に興奮するとか、幼少期に美人の鬼にさらわれて性的ないたずらをされた過去があるとかではありません。

 自己分析するに、自分に自信がなかったからだと思います。

「あの子みたいな美人がなんで僕なんかと付き合うんだろう?」という疑念が払えないんです。美人に「好き」と言われても、その言葉がどうしても信じられない。自分がそんなに人に好かれる人間だと実感できないからです。そればかりか、後ろ向きの脳細胞が疑惑の仮説を検証し始めます。

【美人局説】彼女は僕の財産を狙っている巨大組織の秘密工作員である(財産なんかないのは棚に上げておく)

【勘違い説】彼女にはマッドサイエンティストの手により強力な催眠術がかけられており「どうでもいい男をモテ男だと思い込ませるとヒトの雌と雄はどういう行動をとるか」の人体実験が行われている

【同姓同名説】むかし片思いをしていた男の子のことが忘れられず、たまたま同姓同名の男に恋をしてしまった

【ワケアリ説】実は元男性。その秘密を他のいい男には言い出しにくく、なんとなくそういう事情を気にしなさそうな男を選んでみた

 そんな風に悩み始めると一緒にいてもどんどん笑顔がこわばるようになるし、どんなひとことにも裏の意味があるんじゃないかと疑ってかかるようになる。「ころっと引っかかったな、この単純野郎」と心の中で嘲笑されてたら悔しいから、こっちからは絶対デートに誘わない……。

 バカだったと思います。

 いろいろと悩み抜いた末に出る結論は、いつも「あなたみたいな美しい人は、そこらへんにいっぱいいる僕よりいい男とつきあうべきだ」でした。

 冷静に考えれば、美人だろうとそうじゃなかろうと人は人のことを自由に好きになるものだし、逆に、美人じゃない人だって美人局やら勘違いやら同姓同名やらワケアリやらの可能性があるかもしれない。結局のところひどい偏見なんです。

 まあ、美人だろうと誰だろうとガンガン付き合うようなタイプだったら、今ごろAMじゃなくてもっとマッチョな男性誌に「性豪伝説」みたいな連載をして、今よりモテない男になってたかもしれないから、結果的には良かったのかもしれないけどね。

 あ、そうそう、年をとった今は、どんな美人とも「きっと僕の欠点をいいほうに勘違いしてくれてるだけに違いないけど、真相に気づくまでの短い時間だけでも僕なんかに構ってくれるんだからありがたいことだなあ」と手を合わせつつお付き合いするようになってております。

 さて、そんな勘違いばかりでできた恋愛怨霊エピソードが今回もたくさん届きましたよ。今月は「職場恋愛」編。

コック服の魔力に惑わされました

饅頭パンナさん(兵庫県)
エピソード:
 学生時代、バイト先のひとまわり以上も年上の料理人と付き合っていました。
 白いコック服を着こなしヒゲを生やした彼は、私にとって漫画「ワンピース」のサンジでした。
 しかし、付き合い始めてすぐ私がバイトを辞めてOLになると、休みの合わない彼と会えるのは毎週水曜の深夜だけに。
 彼に教えられたことといえば、上手なフェラのしかたぐらい。サプライズのプレゼントは数種類のローターでした。
 別れてから1年あまり経った今、改めてあの頃の写真を見ると、ハゲかけてやせ細った40前のおっさんと私は一体何をしていたのだろうか……と、コック服の魔力を呪うばかりです。

「サンジみたい」コックのあなたに憧れて 脱いだらオヤジ 食材わたし(饅頭パンナ)

 こういう男には「仕事してるときがいちばんかっこいい!」「コックの格好して!」とか巧いことおだてたおして、オフでも「いちばんいい彼の状態」を維持させるタイプの女性がぴったりなんじゃないかな、と思います。

 仕事モードのスイッチをオフにした途端にみすぼらしくなっちゃうのは中年の宿命みたいなものですね。

 むしろ、たいていの中高年は仕事モードというファンタジーの中でだけ鑑賞すべき動物であるような気がします。オフもかっこいいのはオフもどこかでオンでありつづける「待機電力高め」の一部のエコじゃない人たちだけじゃなかろうか。

 まあそれはさておき、饅頭パンナさんはもしかするとコスチュームに極端に弱いタイプなのかもしれない。男だったらイメクラにハマるタイプの人。男女限らずときどきいるんです。

 以前付き合ってた女の子にもいました。

 僕の以前の職場にときどき仕事で来る人だったのですが、スーツを着ている僕がものすごく好きだったみたいで。

 デートのとき、というかホテルに行くときに「スーツ着てきて!」とよく指定されていました。興奮の度合いが全然違うのだとか。

 昼間からスーツでホテル街を歩くのって「お前はどういう仕事してるんだ?」という周囲の視線を感じて、ものすごく恥ずかしいんですよ。彼女は彼女で半分イメクラ状態の彼氏に興奮していたかもしれませんが、僕にとっては完全に別のプレイでした。羞恥プレイ。つらかったです。

 まあ僕もお返しとしてクリスマスに恥ずかしめのミニスカサンタコスとかお願いしてたから、お互いさまの関係ではあったんだけどね……。

仕事中の真顔のほうが好きという君とのデートは仕事のようで

後輩とセックスしてしまいました

豆腐屋ななさん(佐賀県)
エピソード:
 同じ部署の何人かで飲みに行った帰り、後輩の一人とセックスしてしまいました。
 毎日顔を合わせるし、後輩には遠距離とはいえ彼女がいたので油断しており、流されるままに……。
 しかも、関係は一回だけでは終わらず、依存心が強い私はどんどんハマってしまい、気づいたら好きになってしまっていました。
 そんなある日、彼が別の部署の、私が嫌いな女の子と連絡を取っているのが発覚。
 私だけじゃないのはわかっていたけど、よりによって何であの子と……!
 いろんなものが爆発しそうになっていたら、今度はまた別の女の子と遊んでいたことも発覚。
 口にする言葉が何も見つかりませんでした。
 今でも関係は続いていますが、彼女でもないのでいろいろな感情を押し殺したまま、ただただ毎日悶々としています。

あの子とかあの子とあの子とあの子とか 私は一体何番目なの(豆腐屋なな)

「好きな男には、せめて、自分でも好きだと思える子と浮気してほしい」という思い、なんとなくわかるけれど、たいへん濃厚な怨霊に包まれた恋心ですね。苦しみ、お察しします。

 でも、後輩くんとの関係が万が一ラッキーに転がって彼氏彼女の関係になっても、いま「好き」と思い込んでる気持ちが霧消して憎々しさだけ残りそう……そんな気がするのはなぜだろう。

 文面から「自分のことを好きにならなくてもいいけど、自分の価値観には従っていてほしい」という欲望を感じるからかな。

 この感情はわりと曲者。

 たとえば、ツイッターで大好きな芸能人をフォローしてたとします。その人があるとき「この小説おもしろかった!」とあなたの大嫌いな作家の小説を絶賛するつぶやきをしたら、自分にどう折り合いをつけますか。

「大好きだったのに、あんな作家のことを好きなんて失望した。ちょっと好き度が下がったわ……」

と思う人も

「あの人が言うなら、嫌いな作家だったけど、考えを変えて読んでみようかな……」

と考える人もいると思いますが、どちらにしても、

「自分が好きな物を好きでいてほしいし、自分が嫌いな物を嫌いでいてほしい」

という「自分と同じ意見でいてほしい欲」が働いているという意味では同じです。

 この欲は性欲みたいなもので、たまると無性に誰かに処理してほしくなってしまうもの。

 ストレスがたまってるときに「意見は求めてないから私の言うことにうなずいてろ!」としゃべり続けたくなる感情と、ストレスをためた男性が風俗に行って「いいから抜いてくれ!」となる感情とは、だいたい同じなんじゃないかと思っています。

 恋愛と重なる部分はあるけど、あくまで「やってくれるんなら相手は誰でもいい」欲望処理。

 ななさんの恋愛はなんかそんな「さみしさから来る欲望を処理しようとしている」気持ちと「人を好きになる」気持ちとがごっちゃになってご自身でも判別できてないような気がします。

 憶測が過ぎました。歌人の僕にできることは短歌をつくることでした。憶測をささやかな短歌にして、ななさんの幸せへの祈りに代えたいと思います。

「さみしい」と「すきだ」をいつも間違える ごめん昨夜は間違いのほう

本日はここまで

 投稿、たくさんいただいております。全部ものすごくハラハラしながら読んでいます。ありがとうございます。

 引き続き「オフィスラブ」「職場恋愛」をテーマに、怨霊エピソード&短歌を募集しております。黒ければ黒いほど僕の好物です。

 こちらのフォームからご投稿ください。ぜひに。

Text/佐々木あらら

ライタープロフィール

佐々木あらら
阿佐ヶ谷生まれ阿佐ヶ谷育ちのエロ歌人

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