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  • 2015.03.30

ほんとうはまだ好きだよとエイプリルフールに君は言うんだ ずるい

読者の皆様から募集した「卒業にまつわる短歌&エピソード」の最終回!先生との不倫から、片思いのまま切ない卒業など、甘酸っぱくほろ苦い珠玉の短歌&エピソードが届きました!エロ歌人・佐々木あららさんによる丁寧な添削、解説は短歌ファンだけでなく、初心者にもおすすめ。ご自分のエピソードを思い出しながらどうぞ。

ほんとうはまだ好きだよとエイプリルフールに君は言うんだ ずるい
©Ryosuke Yagi

 大人になることの本質は「実務的になる」ことなんだと思います。

 学生のころは「勉強したくないなあ」「レポート書きたくないなあ」とだらだら時間を過ごしていても、許される。

 でも、社会人になると残念ながらそうも言っていられません。限られた時間で効率的に動いていかないと、こなすべきタスクはどんどん溜まっていきます。

 遊びも「漫然と時間をつぶす」みたいな小学生的な遊び時間はどんどん減ってきて、予定を立て、スケジュールをきちんと組んで遊ぶ、という機会が増えてきます。

 そして恋愛行動も、いつしか実務的に。

「あの人のこと、ぼんやりと好きだけどどうしようかな……」というような曖昧な気持ちをほったらかしにして何も行動せずに悶々とするのは、年をとって「実務」に慣れてくると、むしろストレスになります。代わりに考えるのは、

「自分をアピールするためにどういう服でどういう店でどういう会話をするか」
「この人は付き合う相手にふさわしい人間かどうか、慎重に評価しなければ」
「万が一、ホテルに行くことになった場合に備えてこういうシミュレーションをしておこう」

などなど、実務的戦略ばかり。「淡い恋心をそっとしまっておく」みたいなものだった恋愛が、いつの間にか「ゴールを設定してそれに向けてチャレンジするタスク」の顔をしています。

 実務型恋愛が行き着くところに行き着くと、デートの終わりに「今度よかったらセックスしませんか」「ああ、いいですね、今度ぜひ」みたいな会話をするようになったりします。

 あ、ごめん。

 単に僕が間違ったほうの大人の階段をのぼってしまっただけだ、これ。

 そんな僕を諌めるべく「これが恋ってもんなんだぜ」みたいな若者たちの投稿が今週も集まりました。

 怨霊ラブメモリー、今回は「卒業編」最終回です。

 まずは僕の中のさびついた青春回路がうずうずする投稿を2本、ご紹介。

結局、告白しませんでした

みわさん(東京都)
エピソード:

 高校の頃、同級生のことが好きでした。
 彼は毎日、朝早くに学校に来る人だったので、私も毎日早起きして、その人が来る10分前に教室に来ていました。
 結局、朝に教室で少し話すだけで、告白はできないまま卒業しました。

君が来ると知ってたから一番に来てた教室 誰も知らない(みわ)

結局、告白されませんでした

くまりんごさん(宮崎県)
エピソード:
「もしかして両思いなのかも……」と心の中だけで信じていた人がいました。
 卒業まぎわのある日の放課後、卒業アルバムのメッセージをみんなで書いていたら、たまたま二人っきりになる時間がありました。そして「あ、告白されるかも」という雰囲気に。
 でも、別の男子が私のことを呼びに教室に入ってきて、結局、そのまま何もありませんでした。

本当は好きだったでしょ 教室にあいつが来なきゃ付き合ってたでしょ(くまりんご)

 短歌の表記、マスあけなど、少し変えました。ご了承を。

 どちらも、見事に、何も起きてない。起きてないんだけど、なんてリアルで繊細な恋なんだ。

 恋の99%は、告白されずに終わるのだと思います。生きていると、意識の下でたくさんの小さな恋心が生まれ、理性がそれを却下するというルーティーンを繰り返すものです。笑顔でお釣りをくれたコンビニの女の子や、満員電車でちょっとだけふんばって自分を守ってくれる紳士に、ちょっとずつ恋をしては、ちょっとずつ却下している。

 もちろん、僕たちが生きているのは学校のように誰彼かまわず恋をしても許される世界ではないので、仕方ないのだけれど。教室内で二人きりで何かが起きそうで起きないどきどきした時間、また味わってみたくなります。

 みわさんの短歌は「知っていたから」にしたほうが音数が合うかも。「誰も知らない」は人に届けるにはちょっと意味が飛びすぎで、再考の余地がありそうです。

 くまりんごさんの短歌は「付き合ったでしょ」のほうがリズムが整いそう。

 僕も、昔を思い出して、何も起きない短歌をお返しにおいておきます。

遅刻する君にぶつかるちょうどいい曲がり角さえあれば今ごろ

先生との関係から卒業しました

るりさん(愛知県)
エピソード:

 高校3年生です。
 先生に1年ほど片想いを続けていましたが、卒業1ヶ月前にして、関係が発展してしまいました。
 きっかけは先生の突然の結婚。流行りの「別居婚」というものらしいです。
 別れがすぐに来るのは暗黙の了解でした。私は卒業、先生は異動。
 ドロドロのはずが、案外さっぱりした気分でいる自分に戸惑いながらの卒業です。
 最高の経験をありがとう。奥様、ごめんなさい。

春になる 今日からただの教え子ね お返しします ちゃんと奥様に(るり)

 何もないまま卒業する人がいる一方で、こ、こんなことが起きてたんですね。

 きっかけが奥さんとの不仲ではなく逆に「結婚」というところ、考え込んでしまいます。この先生、大丈夫なのかな。別居婚のメリットを享受してると言えなくもないですけど。

 まあ、さっぱりされているとのことなので、そっとしておきましょうか。美しい思い出を外から汚す権利なんてないですからね。

 僕は個人的に「先生が生徒と初めてするときは車の中が多い」という説を統計調査していて、るりさんにもぜひうかがいたいところなのですが、これも、我慢しておきます。

 短歌は、ひょっとすると順序を逆にしたほうがよくなるかもしれません。ご検討を。

奥様にお返しします あしたからただの生徒に戻る春です

 さて、締めくくりは月末恒例、「短歌だけ投稿してくれた方」への評。

おやすみを言い合える仲になれなくて おはようだけを言っていた仲(あずさ)

 これは、僕が好きなタイプのクレバーな短歌。
「言い合う仲に」にしたほうが、音数としてはすっきりするかな。

金髪が世界で一番似合ってた君が別れのときに黒髪(あずさ)

これは、助詞が動かせるかも。たとえば、

金髪が世界で一番似合ってた君の別れのときの黒髪

とか。あと、語順をいじって、

金髪が似合った君が黒髪に変えて別れを告げる三月

みたいな方向にも答えがあるかもしれません。

 というわけで、来週からは、お花見シーズンということで「お酒に関する恋愛エピソード&短歌」を募集します。

 お花見そのものの話も歓迎していますが、お花見に限らない、お酒の場での失敗&いっときの過ち、相手の酒乱ぶりに振り回された思い出など、「味のある」恋愛エピソードをお待ちしています。

 ご投稿はこちらのフォームから。どうぞよろしくお願いします。ではまた。

Text/佐々木あらら

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ライタープロフィール

佐々木あらら
阿佐ヶ谷生まれ阿佐ヶ谷育ちのエロ歌人

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