• love
  • 2015.02.24

近づけば近づくほどに色褪せる君にそれでも近づいていく

2月バレンタインデー特集、最終回!小学生の時、チョコを作って男の子に渡しに行くことが親に見られていて恥ずかしい…なんて経験はありませんか?また彼氏の食へのこだわりが強く、作ったチョコにケチを付けられた…なんて悔しい思い出もあるのでは。そんなバレンタインデーのもやもやする思い出を短歌で吐き出して成仏させてやりましょう!

佐々木あらら 初体験 処女 童貞 エロ短歌
by Fey Ilyas

 バレンタインデーが終わりました。

 毎年、バレンタインデーの前後に打ち合わせや飲み会をセッティングすると、少し不安になります。

 「こいつ、チョコレートがほしくてわざとこの時期にミーティングを設定したんじゃないか」って疑われてたらどうしよう、と。

 女性の側もきっと「この時期に一緒に飲むのに何も用意してなくて『気が利かねえ奴だな』って思われたくないな」みたいに深読みして、慌てて用意してくれているに違いないのだけど。

 かといってわざわざ「いや、バレンタインデーとか関係なくてたまたまだから気にしなくていいですよ」と事前に言うのもそれはそれで「逆にそれはチョコのことを私に気づかせることで暗に『持ってこいよ』と強制しているのだろう」ととられそうで。

 あれです、あの、結婚式の二次会の「平服でお越しください」チキンレースとよく似た読み合いです。(あれ、平服で行くと結局少数派で恥をかくシステム、なんとかしてほしいよね)

 なんで人生って、どっちも負けるPK戦みたいな不毛な読み合いばかりしなきゃいけないんでしょうね。シンプルに、ただ人に会いたいだけなのに。

 とはいえ今年もそんな感じの気まずいミーティングをいくつかしてしまいました。そして、そんな感じのチョコレートをいただきました。

 なんだろう、なんかすいません。そして、どうもありがとう。

 さて、本題。

 バレンタインデーのもやもやする思い出を短歌で吐き出して成仏させるコーナー、今週でラストです。

母の送迎でチョコを渡しに行きました

たこはなさん(東京都)
エピソード:
 中学の時に住んでいた家が携帯の電波も入らないほどど田舎で、彼の家には車で峠を越えなければいけません。
 毎年母親に送迎を頼み、チョコを渡しに行っていました。
 ただでさえ恥ずかしいのに、車から母が見ているからなおさらで、彼の目を見てチョコを渡せた試しがなかった気がします。
 私は娘ができたら、車から覗き見るのはしないであげようと思っています。

 

 あー、これは顔が赤くなるなー。わかります。

 バレンタインデーって、母が介在するととたんに恥ずかしいメモリーになりますね。

 僕も小学校のころ、ホワイトデーは母の独壇場でした。

 ある年は、近くのサンリオショップでキティちゃんの顔の形のタッパーとかを買って(母が)、不二家でお徳用の飴の詰め合わせを買って(母が)、それをタッパにぎゅうぎゅうに詰めてラッピングして贈りました。

「いや、そんなことをしたいんじゃないんだ、というか本命とか義理とかの配分もあるから自分で決めて自分でしたいんだ」と思ったのですが、口には出せず、言いなりでした。

 母は「経済的だしかわいいし名案!」と思ってたのかもしれないけど、そのせいでこっちはあだ名が「タッパ」になりかけたんだからな! 全国のお母さんはどうか子どもの恋路には過剰に関わらないでいただきたい。

 ……たこはなさんより僕の怨霊度が満ちてきてしまいました。いかんいかん。気を取り直して、いただいた短歌を。

チョコレート 母の送迎デリバリー 私も娘のアッシーやるかな(たこはな)

 この手の想いは、おもしろさを説明しようとすると逆に平坦な言葉になってしまいます。短歌は、映画の紹介でいうと「あらすじ」の文の役割より「印象に残る1カット」の写真の役割を受け持つほうが得意な形式のようです。

 たとえばここらへんの1カットを見せてみるのはどうでしょう。

助手席で手作りチョコを抱えてる娘を初恋へと送る役

パティシエの彼に材料まで指定されて……

計量オーバーさん(埼玉県)
エピソード:
 同い年のパティシエと付き合って初めてのバレンタイン。
「なに食べたい?」と尋ねると、「◯◯社のクーベルチュールチョコの、カカオ分△%のやつと◻%のやつを6:4の配合で…」と材料指定から始まりました。
 それなら彼が作ったほうが早い気がしましたが、指定どおりに材料を買い揃え、作りました。
 バレンタイン当日、チョコを手渡す時のドキドキは彼氏へのそれではなく、採用試験の面接官へのものでした。
 その後も彼氏にはバジルペーストを買ったのを見咎められて「不精しやがって」と言われるなど、とにかく食事のことで人格否定が続いたので別れました。
 あれから8年たった今も、◯◯社のチョコを見ると苦々しい気持ちになります。チョコは本当においしいんですけど……。

分量外塗ったバターで反逆す酸いも甘いもご指定の愛(計量オーバーさん)

 おお、怖い。このコーナーの投稿の特徴として「終盤にさらりと書かれた一行が看過できないレベルに怖い」というのがあります。このケースでは「バジルペースト」のくだり。

(バックナンバーでもあえてツッコミを入れずに残していることが多いので、よければさかのぼって「唐突な怖い一行」をお楽しみください。)

 こういうのは怒鳴られ続けたほうはトラウマになりますよね。こういう風にきつくあたってしまうのは、「恋人といえども他人は他人」という割り切りができず、「彼女の失敗を自分の失敗のように感じてしまう」パターンが多いのだと思います。

 お母さんが子どものミスを我が事のように感じてしまい「なんでこんなこともできないの!」と叱ってしまうのとだいたい似た感覚なんじゃないかと。

 本人は「正しいしつけ」だと思い込んでるから人格否定をしている自覚がなく、たちが悪い。たぶん彼らの言い分を聞いてみると「それが相手の未来にとってプラスなことだから言っている」と答えると思います。

 ま、要するに余裕がない人なので、受け流し力を身につけて長期計画で彼らの「しつけ」にチャレンジするか、そんな面倒なことをせずとっとと離れるか、どちらかが正解だと思います。言葉通りに真に受けてがんばってもあんまり報われない愛です、きっと。

元彼の記憶が隠し味になり苦さばかりが味わえるチョコ

他にもいい短歌をいただきました

 他にも短歌だけ出してくれた方もいたので、駆け足でご紹介。

恥じらいを隠すためにはスピードを付けて投げるの 受け取れよチョコ(あずさ)

大好きをたくさん詰めたらこうなった あなたの血になる私の一部(あずさ)

味わうということめんどくさくなりすごい速さで食べるチョコ棒(たつたあげうさ子)

 常連になりつつある「たつたあげうさ子」さんは、今回はまあまあ。前半にちょっと傷があるように感じます。短歌をつくり慣れてくると「句またがり」でもリズムに乗って読めるようになってきますが、それがほんとうに遠くの人にも届くリズムなのか、自分があまり短歌を知らなかったころを思い出して読み返してみるといいかも。

 あずささんは疾走感がよかったです。スピードをもっと具体的で新鮮なたとえで表現できるとさらにグッとくる短歌になると思います。

 ……と、なんだか急に短歌教室みたいなことを言って、バレンタインデー編はおしまい。

来月は「卒業にまつわる恋愛エピソード」!

 というわけで、3月は卒業の時期。

「卒業」にまつわるエピソード&短歌を募集します。

 ご投稿はこちらのフォームから。

 この時期、人間関係がシャッフルされてしまうわけで、いろんな恋愛トラブルも多いんじゃないでしょうか。

「お互い別々の進路だけど、大学に行っても一緒にいようね」……みたいな約束、いったいどれぐらい反故にされてきたのでしょう。というか、こういう約束がちゃんと守られてたケースを寡聞にして知りません。

 それとも、今は、LINEとかTwitterとかでつながり続けるから、「卒業=別れ」みたいなイメージは薄くなっているんでしょうか。そんな現代の事情も聞いてみたいところ。

 長くてしっちゃかめっちゃかな文章になっても、こちらでまとめますので大丈夫です。お気軽にどうぞ。

 ではまた来月。

Text/佐々木あらら

関連キーワード

ライタープロフィール

佐々木あらら
阿佐ヶ谷生まれ阿佐ヶ谷育ちのエロ歌人

今月の特集

AMのこぼれ話