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  • 2015.01.19

何事もゴメンで済んで警察が要らない国に移り住みたい

【1月テーマは初体験】恋愛にまつわるいやーな思い出、モヤモヤする思い出、ありますよね。眠れない夜に苦い記憶でクヨクヨしていると、いつしかそれは怨霊のように膨らんでしまうかもしれません。そんな怨霊ラブメモリーを短歌にすることで、成仏させてやりましょう。エロ歌人佐々木あららが、あなたの恋の「除霊」を短歌でお手伝いいたします。

初体験 処女 佐々木あらら 短歌 エロ短歌 公募
Andrea Rose

 スキーが嫌いでした。

 だいたい、道具がたくさん必要なスポーツが苦手です。昔から筋力がないので、重いものを持って移動したり装着したりするのが嫌なんです。

 というわけで、中学のときは陸上部でした。道具がほとんど何もいらないから。あと、紙と鉛筆だけあればずっと楽しんでいられた文芸部。

 たぶん、いまセックスが好きなのも「道具がいらない」「身軽なままできる」という理由は大きい気がします。

 もし中学校に「セックス部」があったら迷わず入部してたと思う。男子校だったけど。

……さておき。

 ゲレンデ以上にリスキーで、大事故の危険がある、初体験。

 今回も大事故エピソードがいっぱい届いております。

まちがったほうの穴に……

卯野抹茶さん(青森県)
エピソード:

 お互い初めてだった私たち。
 灯りを消した中で、彼の巨人は進撃すべき穴がわからず、必死に手探りで探すのですが、彼が触れた私の穴はことごとくのっけからアブノーマルプレイになる部分でした。
 ノーマルとアブノーマルって紙一重なんだな……。
 彼も私も、相手としたいというより「ここに入れさえすれば童貞/処女を捨てられるんだ!」というゴールに向かって必死で、お互いのことを見ていなかった気がします。  あの時の彼は胸にタトゥーを入れたあと実家のまんじゅう屋さんを継ぎました。

リンダさん(東京都)
エピソード:

 わたしは初めて、相手は二人目という状況で、はじめてのセックスがアナルセックスでした。
 ゴムがなかったのか、生でやりたくてせめてもの危険回避だったのかは知りませんが。

 初体験あるあるの王道「穴違いの悲劇」、未遂編と完遂編ですね。

 お笑い芸人の「おぎやはぎ」の小木さんも、初体験で間違った穴に指を入れてしまってものすごく臭かった、という体験談をどこかで話してらっしゃいました。

 リンダさんの初体験は厳密な意味で初体験なのか、結果的にヴァージニティは守られたままじゃないか、というのは哲学的難問ですが、ともあれ、「初めては別の穴」という過ちが繰り返されるのは減らしていきたいところです。

 先日、成人の日に思い出したのですが、西日本の一部には明治末期まで「ふんどし祝い」という儀式が存在したそうです。

 男児が成人になるお祝いに、母方のおばさんからおニューのふんどしを仕立ててもらうとともに、セックスの手ほどきを受けたのだとか。

「初セックスができるけど相手は親戚のおばさん」。童貞が直面するにはあまりにハードな人生の岐路だけれど、「初体験で間違った穴に入れられる」女子の悲劇を思えば、小さな犠牲じゃないかとさえ思ってしまいます。

 うん、僕が選挙に出るならマニフェストには「ふんどし祝いの復活」を入れることにする。

「間違った穴の悲劇」を短歌に

 さて、このエピソードをそれぞれ短歌にしていただいています。

「ここ」「そこ」とふたりゴールを探してる おたがいのこと見えないままで(卯野抹茶)

童貞であればいいのに「入れる場所を間違えた」と言われたかった(リンダ)

 アナルとか肛門とか、直接の言葉を避けているところが、この連載と違って上品です。

 卯野さんの短歌は、単品でどこかに出したらプラトニックな青春短歌として読まれそうですね。たぶん意図的にそう書かれたのだと思います。

 短歌にはこういう「当初書かれたのとは別の解釈で読める」ということがよく起きます。昔、

雷がなる ゆっくりと君がいく 僕もいく また雷がなる

 という短歌を発表したとき、「荒野を進んでいく二人の友情が目に浮かぶようだ」みたいな評をもらってびっくりしました。もちろんセックスの歌なんですけど、いろんな読みかたがあるものです。

「想像の余地を残す」というのと「誤読を放置する」というのとは作者の態度としてはまったく違うので、そういう意味で僕の雷の短歌は失敗作と言えるのですが、ええっと、すいません、カタい話になりそうなのでどこかまた別の場所で。

 まあ、卯野さんの歌がどこかでほめられても、

「すいません、それ、アナルです……」

という告白を作者からするのは野暮みたいなので、墓場まで持っていかれるのが吉です。

 さて、僕がこのテーマで作るなら、こんな感じ。

あせってるあなたも好きだ いりぐちはそこじゃないけど教えずにいる

 心の余裕をスパイスとして加えてみました。正しい場所がわからなくてあせっている男を愛おしく見つめる感じ。

 気持ちをストレートなまま短歌にするよりも、ちょっと事実と違っても余裕や欲望を足してあげたほうが、リアルの重さという怨霊からは解放されやすい、かも。

「まだ処女!」と言い切ることにしました

あずささん(和歌山県) エピソード:
 初めては、心から好きな人としようと決めていたのに、寂しくて、一瞬のときめきに身を委ねてしまいました。ただのイケメンに、ほだされるなんて……。
 葛藤しましたが、惨めになりたくなかったので「まだ処女!」と言い切ることにしました。

「もしも思い出がコピペで切り貼りできるなら、今までした中でどのセックスが初体験だったらよかった?」

……そんな質問をベッドの中でしたことがあります。

 まあ結局「あなたがいちばん」って言ってほしかっただけなんですけど。

 そんな僕の女々しい言葉と似て非なるあずささんの「まだ処女!」の宣言は、凛々しい。

 ほんとうの凛々しさというのはいつも弱さや切なさから立ちのぼってくるものですね。

 ここから葛藤の部分が薄れてゆくと、やがて「永遠の二十歳」を自称するウザい中年のようになってしまいそうなので、気をつけて。

血が出ても 生理がきたと言い切れば わたしまだ処女わたしまだ処女(あずさ)

 いただいた短歌も、自分に言い聞かせている呪文のようで、魅力的でした。

 こういうほんのり苦みのある怨霊エピソードは、思い切ってかっこいい系に舵を切ってもいいかもしれません。あずささんのようにコミカルで自虐的な方向性もアリなんですが、「自虐ネタ」ってわりと供給過剰で、食傷気味な感じもあるので。

納得のいかない初夜を駆け抜ける 処女の定義は私が決める

 とか。凛々しさと勢いを全面に出して、怨霊を脚力で追い越してみました。どうでしょう。

今日からは新テーマ「バレンタインの怨霊メモリー」

 さて、童貞喪失・処女喪失体験のエピソード・短歌の募集は今日でおしまい。新しいテーマで募集します。

 お題は、2月なので「バレンタインデーにまつわる怨霊メモリー」

 バレンタインデーやホワイトデーをめぐるエピソードと短歌を募集します。苦ければ苦いほど僕の大好物。

 チョコをあげたりもらったり、手作りチョコに何かをつめてみたり。恋の思いが募るほど、そこには怨霊が巣食う暗黒のエピソードが生まれてるのでは、と期待しています。

 【こちらのフォーム】からお送りください。たくさんのご投稿、お待ちしてます。

Text/佐々木あらら

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ライタープロフィール

佐々木あらら
阿佐ヶ谷生まれ阿佐ヶ谷育ちのエロ歌人

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