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  • 2014.12.29

紅白で締めくくられる大みそか ねんまくは紅 たいえきは白

恋愛にまつわるいやーな思い出、モヤモヤする思い出、ありますよね。眠れない夜に苦い記憶でクヨクヨしていると、いつしかそれは怨霊のように膨らんでしまうかもしれません。そんな怨霊ラブメモリーを短歌することで、成仏させてやりましょう。エロ歌人佐々木あららが、あなたの恋の「除霊」を短歌でお手伝いいたします。

メイン2
Katharina Schffr

 今年も終わり。

 この時期はいつも、この一年で結婚した知人たちのことを振り返ったりします。

 結婚を祝福するときバツイチの僕が思うのは、マーマレードのこと。

 僕はマーマレードとかジャムがとても苦手です。大人になってからなんとなく食べられなくなってしまいました。

 でも、きっとみなさんのほとんどはマーマレードやジャムを美味しく感じるでしょうし、パンケーキや焼きたてのパンにつけて食べれば幸せを味わえるでしょう。僕だって無邪気な子供のころは、なめるたびに幸せだったはず。

 他の人にとっては幸せで自分も昔は幸せだと感じていたことが、もう幸せには思えない寂しさ。結婚とマーマレードは、僕にとってはそんな感じのものです。

 もちろん、ハッピーのど真ん中にいる新郎新婦に水を差すような言葉はつかいたくないから、「幸せそうですね」「うまくいくといいね」「僕みたいにならないでね」あたりで揺らぐ気持ちを隠しつつ、祝福はするのですが。

「俺の屍を越えてゆけ」というのが、いま僕が贈れる嘘じゃない言葉の中でいちばん優しい言葉かな。

 みなさんおめでとう。来年も再来年も、お幸せに。

 では、年の瀬のさみしさが心の怨霊になってしまう前に、今週もみなさんの怨霊ラブメモリーを鑑賞していきましょう。

セフレにお祈りされて……

湯川亜美さん(大阪府)
<エピソード>
 無職だったころ、半年以上の仲のフリーデザイナーのセフレがいました。  ある日、彼から「恋人として付き合いたい」というニュアンスのことを言われました。でも、不安定な収入の彼と付き合うのは不安で、返事はしませんでした。
 その後、私は再就職の活動で忙しくなり、会うことも減りました。20社以上から不採用の「お祈りメール」をもらったものの、12月に就職が決定。自分の足場が固まったので、クリスマスの日に思い切って告白しました。
 ところが「君の事を好きだった。でも今は他に気になる人がいる」と。
 別れ際、駅の改札で立ち止まった彼は「誠に残念ですが、弊社としましては不採用で。就職も決められたようですし、今後のご活躍をお祈りしております」。 誰がうまいこと言えと?
 体の相性だけは良かったので、非常に残念です。

 あー、なんかもう、闇より濃い怨霊が深く深くあなたに巣食っていますね。  セフレにはセフレの仁義というものがあります。

(1)二股上等。相手を独占していいのは、セックスの最中だけ。

(2)口先主義。性的高揚感を求め合うためだけに「永遠の愛」を口にせよ。

(3)発展禁止。「恋人として付き合いたい」「結婚しよう」とか言い出さない。

 亜美さんの元セフレは、こういう仁義をことごとく守れていません。毛筆で大書して、彼の家の壁に貼っておきたいぐらいです。

「今は他に気になる人がいる」という言葉も、一見、誠実なように見えますが、ほんとうに誠実ならそもそもセフレ状態にはならないわけで、結局は自分を「間違いのない正しい人間」側に置きたいエゴに基づく発言でしょう。

 自分からはっきりと告白できないところとか、別れ際の冷淡な皮肉とかから察するに、自尊心が高い男なのだと思います。

 将来を考えたらこんな男とは別れて正解ですが、亜美さんの心は瘴気にむしばまれてしまいました。

 こういう割り切れない思いは、フタをするのではなく、見つめ続けて作品化してしまいましょう。

短歌にできるちょうどのサイズで切りとる

 亜美さんがつくってくれた短歌はこちら。

神様のごとくお祈りされ続け かいなくたたむ枕営業

 前半はいい響きですね。ただ、後半は、自分を小さな笑いに閉じ込めてしまっていて、怨霊と対決できていないような気がします。

 また、「不採用」のことを「お祈り」と呼ぶのはある時期以降に就活をした人たちのつかうスラングなので、悩ましいところです。

神の国だからだろうか お祈りのメールばかりが届く就活

みたいな短歌は(いま適当につくっただけですが)、通じる人にはおもしろいのかもしれないけれど、このスラングを知らない人には届きにくく、また、流行語のような側面もあるために時が経つと一瞬で古びてしまいます。

 というわけで、短歌にしようと思うと取り扱いの難しい恋愛エピソードです。

 ひとつの恋愛がひとつの短歌だけで語れるわけもないので、短歌にできるちょうどのサイズずつ切り取っていくとよいかもしれません。

 ちょっと遠くに離れますが、「不採用」の部分から妄想を拡大させて、

告白をしないままするセックスは面接みたい 不採用です

とかではどうでしょうか。亜美さん、業の深そうな人生ですが、ますますのご多幸を「お祈り」いたします。

イルミネーションにうるさい彼氏

やすこさん(東京都)
<エピソード>
 彼氏とクリスマスのイルミネーションを見に行けません。
 というのも、彼はクラブなどの照明演出をやっているので、職業柄、イルミネーションを見ると「ああ、このLEDは●●制御だね」「この光らせ方はセンスがない、△△で見た作品の方が面白かった」と専門家視点からのdisモードになってしまうからです。そう言われてしまうと、確かにちょっと光り方がダサいかも、と思えてきてしまうから不思議です。
 でも、私も彼氏と普通に新宿とか中目黒とかで、カフェラテ片手に「うわー綺麗だねー」ってやりたいんだけど!

 知識が豊富だと「素朴に楽しむ」ってなかなか難しいですよね。

 泣ける映画を見て、ただただ感動して余韻に浸ってる帰り道に、隣の男から、

「脚本のあの部分の書き込みが甘い」

とか、

「この伏線の回収が不十分だったよな」

とか言われたらほんとうにうんざりします。あ、僕のことです。ごめんなさい。

 とはいえ彼氏にしても、本心を封印するのはストレスが溜まります。自分の気持ちに嘘をついて「綺麗だねー」などと話を合わせていたら、無意識の中に、いらだちという名の怨霊が育ってしまうでしょう。

 やすこさんが送ってくれた短歌はこちら。

「付き合う」ってイルミネーションの配線を見て見ないふりすることじゃない?(やすこ)

 心のもやもやをただの体験談として短歌にするのではなく、説得力のある比喩にまで昇華させていて、お見事です。最初の5音はもうちょっとリズムのいい別の言葉に変えられるかもしれませんね。

 この件、お互いがハッピーになる解決策は「彼氏も納得する究極のイルミネーションを探し求めて二人で修羅の道を進み続ける」ではないでしょうか。

 彼氏もあなたも納得する完成度のイルミが、世界のどこかにはきっとあるはずです。二人の全精力を傾け、どこかにあるイルミの理想宮の発見を二人の共通のライフワークにしていきましょう。

 結婚式も日本ブライダル史の伝説になるぐらいにイルミで飾ってほしいです。目黒雅叙園をイルミで通天閣に変えてしまうとか。

 そのころには、イルミネーションに囲まれた生活こそ、あなたにとっての「普通のデート」に変わっていると思いますよ。

ふつうにはなれない君といる朝はきっといつかのわたしのふつう

 あ、将来生まれる二人の娘さんは「るみ」と「なりえ」で。

エロ短歌の道は茨の道です

鯖太郎さん(東京都)
パンパンと叩いて赤くしたケツに白をぶっかけクリスマス色

 エピソードは省略。怨霊というより男の欲望のままに書いていただいたエロ短歌です。

「便所の落書きのようだ」というのは僕の短歌を揶揄するときによく使われる文句ですが、この一首も男子トイレの個室に書かれていたら絵になりそうですね。

 とはいえ、便所の落書きにも、すぐにでも消してほしい言葉と、こっそり写メをとってInstagramに流したくなるような言葉とがありますよね。

 このスタイルを目指すなら、後者にたどりつかないと、煩悩は煩悩のままです。エロ落書きの道はけっこうな茨の道なのです。

 たぶん「ただおもしろい言葉」と「そこに人間が見える言葉」とがあるのだと思います。エロは人間の営みなので、情念や視線に人間の匂いがちょっとだけマーキングしてあると、もっと見栄えがします。

 そうそう、ササキも昔、

クリスマスカラーに染まるクリスマス ねんまくは赤 たいえきは白

紅白で締めくくられる大みそか ねんまくは紅 たいえきは白

というペアの短歌をつくったことがあります。かぶりましたね。ハッピーアイスクリーム! 



 というわけで、次回からはテーマが変わります。新春ということで、「初体験の恋愛怨霊エピソード&短歌」

「相手が童貞だった!」みたいな話も、相手の立場からすれば「初体験」ですのでOKにしましょうか。そういうのって、女性側から気づくことが普通なんでしょうか。気になります。

 こちらのフォームから、ご投稿ください。

 お待ちしております。

Text/佐々木あらら

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ライタープロフィール

佐々木あらら
阿佐ヶ谷生まれ阿佐ヶ谷育ちのエロ歌人

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