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  • 2014.12.15

クリスマス!ひとりでがっかりしてないで僕と一緒にがっかりしない?

恋愛にまつわるいやーな思い出、モヤモヤする思い出、ありますよね。眠れない夜に苦い記憶でクヨクヨしていると、いつしかそれは怨霊のように膨らんでしまうかもしれません。そんな怨霊ラブメモリーを短歌することで、成仏させてやりましょう。エロ歌人佐々木あららが、あなたの恋の「除霊」を短歌でお手伝いいたします。

佐々木あらら 短歌 エロ歌人 AM アム クリスマス 失恋
Winnie Liu


 今年もまた、孤独がもっとも絵になる一日が近づいています。 そう、それはクリスマス。 外に出れば冬風が吹きすさび、ショーウインドウはこれみよがしなハートだらけ。 かじかんだ指でiPhoneをいじれば、Facebookやinstagramにはよろしくやってるカップル・ファミリーたちのこじゃれた食い物写真がズラリ。 「淋しいのはお前だけじゃな(by枡野浩一)」とばかりに僕たちの孤独を引き立ててくれます。

街じゅうがこじゃれちまったかなしみにつつまれて今クリスマス前(佐々木あらら)

 というわけで、AMの洗練された読者のみなさま、はじめまして。佐々木あららと申します。 エロ歌人を自称して10年。みなさまから不遇な恋のエピソードを募集し、その思いを短歌(57577)に昇華させて「お祓い」をしてしまうコーナーを担当させていただきますよ。

 ではさっそく。

坂輪さん(東京都)の投稿

エピソード:
 観覧車でてっきり一番上でキスをすると思っていたけれど、2時あたりだと他の観覧車から見えないのだと元彼に教えてもらいました。 私は観覧車でキスをすることが初めてだったので、元彼は前にも違う人とキスをしていたことが分かったクリスマスでした。

 このエピソード、観覧車・キス・クリスマス、と定番恋愛アイテムがそろっているのにほのかに不幸の匂いを感じるのはなぜでしょう。 それはもちろん「前にも違う人とキスをしていたことが分かった」ところですね。

 こういう「うっすらと釈然としない思い」が、今回ご提唱させていただく「怨霊ラブメモリー」です。 ハッピーなメモリーになるはずの素敵な観覧車のゴンドラの中で、ご投稿者は恋愛の怨霊に憑かれてしまったのです!

「57577」で恋の怨霊を成敗!

「あ、私じゃない人とも、こういうことしてるってことだ……」

「私にとっては人生最高の思い出だけど、彼にとってはいつも通り、計算通りのデートをこなしてるだけなんだ……」

「彼にとって私なんて、たくさんいる女の一人にすぎないんだ!」


 脳内に住まう天才高校生探偵が「謎はすべて解けた!」とばかりに、彼の供述の小さなボロから、次々と巨大な陰謀を(そんなものはなくとも勝手に)解き明かしてしまいます。 ああ、私の脳内の金田一一も憎いがうかつなお前はなお憎い。

 いやいや、ここは素直にキスされておこう、といったんは飲み込むものの、いや、飲み込んだが故に、心の中で怨霊はすくすくと育ちます。

「彼」じゃなく「元彼」になっているということは、もしかしたらこういう小さな「おや?」という気持ちが徐々に大きくなってお別れを招いてしまったのかもしれません。 だとしたら恐ろしいですね。

 こういう思いは、もやもやが肥大化する前に、言葉という霊障レーダーできっちり捕捉し、みんなと共有して笑ったり泣いたりしてふっ飛ばしてしまうことが大切です。
誰かのつくったラブソングに自分を代弁してもらうのも悪くないですが、「57577」の怨霊捕獲マシンをつかって、自分で短歌にして自分で祓ってしまうのも、かっこいいんじゃないでしょうか。

 というわけで、坂輪さんがご自身でこのエピソードを短歌にしてくださった作品はこちら。

「天辺じゃなく二時頃が見えない」と君がキスする何度かの聖夜(坂輪)

 あ、これは危険です! あなたに取り憑いた観覧車の地縛霊がまだしっかりと描ききれておりません!
おまけに少し美化されていて、真の怨霊はあなたの無意識に巣食ったままです。

 実際よりも美しく描かれた短歌ももちろん素晴らしいのですが、ササキとしてはむしろ、自分のエゴや苦しみの細部にくっきりピントを合わせた短歌を追求していきたい。 というわけで、その恋愛怨霊メモリーのお祓い、助太刀いたします!

ゴンドラが二時の位置まで来たときのキスがあなたの奥の手なんだ

 ちょっと改作してみたのがこれ。観覧車であることがよりわかりやすいようにしてみました。 でもまだ後半が説明的で、ぐっとこないですね。もう少し本音に近寄せたいところ。

ゴンドラが二時の位置まで来たらキス(あの子もこれで落としたくせに)

 後半を独白っぽくして、嫉妬と猜疑心を多めに振りまくパターン。

 うーん、もう少し思いを吐き出したいですね。 こういうときは、思いきって視点をずらしてみましょうか。元彼の視点になって、この怨霊を見つめてみます。

あなたではない誰かにもしたようなキスを続けている観覧車

 どうでしょう。 いろいろばっさり切り落とし、怨霊メモリーの本体である「キスをしているアツい瞬間のはずなのに、先例を脳内サーチして冷めている主人公」にピントを合わせてみたパターンです。

 遠くから、近くから、いろんなところに視点をおいて、作品化することができるかと思います。 そうやってためつすがめつしているうちに、怨霊は実体化され、昇華されてゆくのではないでしょうか。

 坂輪さんに観覧車の中で取り憑いてしまった恋の霊、うまくお祓いできていたらいいんですが。お幸せに。


 次回からは1回に2、3エピソードずつご紹介できればと思います。

 引き続き、「クリスマスの怨霊メモリーのエピソード&短歌」募集しています。 「怨霊」とはうたっているものの、ハッピーなものでも構いませんよ!
アンハッピーな思いのほうが短歌になりやすいけどね。ぜひぜひチャレンジを。

 では。

Text/佐々木あらら

5・7・5・7・7の分け目ごとにマスあけをされている方が多いのですが、このコーナーでは佐々木あららが親しんでいるスタイルにしたがって表記を変えさせてください。ご了承を。

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ライタープロフィール

佐々木あらら
阿佐ヶ谷生まれ阿佐ヶ谷育ちのエロ歌人

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