キラキラ自画撮り女子は人の心を動かせない/はあちゅう×田端×本田対談

今回は、田端信太郎さんと本田哲也さんの共著である『広告やメディアで人を動かそうとするのは、もうあきらめなさい。』発刊を記念して、下北沢B&Bで行われたトークショーのレポをお届けします! 第一回はこちらです。

キラキラ自画撮り女子は心を動かすのか?

はあちゅう 恋愛 田端信太郎 本田

本田:ここでイベントのタイトルを僕も思い出しました。今日は「キラキラ自画撮りで男を動かすのはあきらめなさい」です(笑)。

ここはぶっちゃけどうなんですか?増えましたよね、セルフィー。

田端さんはイベントが始まる前に「俺、案外心動くけどなー」って言ってましたけど(笑)。はあちゅうさん的にはどう? 女の子に対して。

はあちゅう:ふふふ…これ、本田さんが考えたやつだからあとで本田さんも自分で答えてほしいなと思うんですけど(笑)。
キラキラ自画撮り写真を100倍くらい盛れたとして、その写真で動くのは彼女の半径5メートルより外の人だと思います。
リアルな彼女を知らない人は動くんですけど、本質を知っている人っていうのは、ギャップをわかっているので、そこで動かないと思うんですよね。で、これって、広告とかにもいえることだと思って。

田端:そもそもツイッターとかFacebookでそこまでアピールして、男からモテようとしている動機自体を見透かされることがイカンということですよね。
だって、普通にリアルの人間関係で充足していたら必要ないじゃないですか。
だから、そこまでしてアピールするっていうことはその人がいかに欠落感を抱えた寂しい人かということを、裏返し的に証明しているということなんですよ。
それでいうと、本当にいい商品だったら今時広告する必要なくね?っていうことですよね。

本田:そこに行きついちゃうんですよね。

田端:感動しましたー泣いちゃいましたー! みたいな全米ナンバーヒット宣伝と同じですね。

本田:そういう100倍盛ったやつをみて、少し離れた誰かが「おっ、いいな」と多少スケベ心が動く。
でもそれは自画撮りした本人からしたら動かなくていい人だったりする。
だからそれでいくとキラキラ自画撮りはどっかの誰かは動かすかもしれなくても、本当の目的は果たせないということですね。

はあちゅう:ただ、キラキラ自画撮りをアップしている人たちには、そもそも特定のターゲットがないと思うんですよ。
なんとなく盛れた写真をアップすることによって、普段より何倍かいい自分という虚像がネットにできる、ということが楽しいんでしょうね。

田端:でもそうやって「いいね」がいっぱい付いたりすると、自信になって、特定の人に向き合ったときにその自信が下支えするっていうところはあるかもしれない。

はあちゅう:
そういう効果もあると思うんですけど、でも基本的にはリアルな知り合いのめっちゃキメキメの写真がFBに上がってきたら、こいつちょっと痛いな…って意地悪な気持ちになりますよね?

本田:まあ確かに動かないですね(笑)
でも、それでもやってしまうのはどういうインサイトなんですかね。

はあちゅう:変身願望みたいなのは満たされますよね。やっぱりいいセルフイメージを持ちたいと思うので、そこにイメージをあわせていくのは女性にとって必要だと思います。
全部そうじゃないですか。雑誌だって、フォトショで修正してあると分かった上でみんな買ってますよね。

本田:まあね、分かっていますよね(笑)

田端:みんなが盛っているからある程度盛らないと損みたいなところはありますよね。

本田:
ソーシャルな世界になって、僕らが関わっているようなメディアや広告も苦しくなってきているんですけど、個人の人間関係とか恋愛も面倒くさくなっているんでしょうね。

はあちゅう:それは確実にそうだと思います。
「男の子が合コンに行ったことがFacebookでわかる」っていう女の子がいるんですけど。なんでかというと、3人くらいと「○○さんと友達になりました」という表示が出るからだと。

田端:タグ付けしなくても、知り合い同士が同じ店にいって、逆角度の写真をアップしていたら、二人で会っていると分かってしまったりということもある。おそろしいよね。

はあちゅう:私の知り合いがすごい探知能力で、浮気を発見したんです。
ある日女の子のブログに、「友達の家でDVD観てる」という記事があがっていて、そこにアップされてるテレビ台が彼氏のやつだと気付いたらしいんです。そこから浮気していることがわかったとか。

田端:うわぁ~!

本田:男は「撮るのやめろよ~」って言わないんですかね。

はあちゅう:うーん、女の子はどこかでバレてほしいと思っているのと、男性はそもそも撮られたことに気付いていないですね。

田端・本田:ううーん(深く頷く)

SNS時代はコミュニケーション力が最重要!?

田端:SNSによって恋愛のゲームみたいな部分のどこが一番変わったんでしょうかね。

本田:今みたいな証拠把握ですかね。企業でもクライアントさんには残業でと言って、思わず、「忘年会で楽しんでます」っていう写真あげちゃってバレるということもあるじゃないですか。
そこはやりにくくなったんじゃないですかね。
でもいい面もあるんじゃないかと思っていて、はあちゅうさんはどうですか?
『恋愛炎上主義。』を読ませていただいたら、LINEの5往復で相性はわかると。

はあちゅう:
そうですね。コミュニケーション能力と、自分のほしい返答をくれる人かどうかは分かります。
私、昔よりは絶対コミュニケーション能力が長けてないといけない世界になっていると思っています。
ぶっちゃけこの人のツイッターつまんないなって思っていたら、本人もつまんなかったりして、やっぱり投影されるんです。
今まで直接会ったり電話だったりしたコミュニケーションも、メールのみのやり取りの方が絶対に多いじゃないですか。

だからこそ、言葉のちょっとした使い方が重要で、たとえば、この「レストランがいい」「このレストランでいい」この二つのニュアンスって全然違うと思うんです。
そういうことが、今までよりは求められている社会になっているとは思います。
実際に、ソーシャルを使いこなしている方っていうのは、文章能力が高いか、リアルで会っても感じのいい人か、何かしらの才能を感じますね。

本田:
確かにそれは同意です。本を読まなくなったとはいうけれど、逆に表現の豊かさは重視されていますよね。
LINEのスタンプもニュアンスを助けていますけど、恋愛も仕事もニュアンスの伝え方によって、うまくいくいかないというのはありそうですよね。20年前より。

田端:スタンプは、さっきいった7%しか再現されない中で(※心理学者アルバート・メラビアンによると言語からは情報を7%しか読み取れない)、俺の93%を少しでも復元しようと、声のトーンとか身振り手振りみたいなものの代わりとしてそこに入ってくる。
まあ同じ「ダメ」でも、スネてる感じとか、ガチで言っているとか、そういうトーンを盛り込めるのがスタンプですね。
あとどれだけの速さで既読になるかどうかで、流しながらやっているのか会話に集中してるのか、わかりますよね。

本田:そこも含めてコミュニケーションということですよね。
フリークエンシーというか。

田端:でも昔よりも筆まめじゃないと生きにくい世の中になりましたね。
レスマメっていうか。自分でも俺こんなに筆まめだったっけ?って思うもん。

一同:(笑)

本田:色々うだうだ考えるよりは、リアクションした方がいい空気にもなるし、そこでコミュニケーションをつくっていこうという気分なんでしょうね。