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  • 2014.07.08

こじらせ着ぐるみを脱ぎ捨てて…/雨宮まみ×トミヤマユキコ特別対談(1)

雨宮まみさんの新刊『女の子よ銃を取れ』(平凡社)発売を記念して、プライベートでも雨宮さんと仲良しなトミヤマユキコさんとの対談企画を公開します。キラキラしたファッション記事を他人事だとしか思えないというおふたりが、それでもおしゃれと折り合いをつけた体験をお伺いします。

 雨宮まみさんの新刊『女の子よ銃を取れ』(平凡社)発売を記念して、プライベートでも雨宮さんと仲良しなトミヤマユキコさんとの対談企画を公開します。
お二人に、美やファッション、年齢についてなど、女子がぶつかる外見の悩みとの付き合い方についてお伺いしました。
ぜひこちらを読んで、少しずつ悩みをつぶしていってくださいね!

白スニーカーに沸くお二人

雨宮まみ トミヤマユキコ 女の子よ銃を取れ

雨宮:私、今日トミヤマさんに影響されて買った白いスニーカーなんです。

トミヤマ:あっ!かわいいじゃないですか!

雨宮:トミヤマさんが『ROLa』の立ち飲みの特集で、白いスニーカーでめっちゃかっこよかったんですよ(笑)。
立ち飲み屋って足元汚れそうなのに、白いスニーカーで行くのってかっこいいなと思って。

トミヤマ:立ち飲み屋と白スニーカーを見て、そこまで深読みしてくれてたとは…!(笑)
あれはですね、足元を撮られると思ってなかったんですよ。撮るなら違う靴選んだのに!って思ってました。私は失敗したと思った靴をまみさんはほめてくれるという。
こういうすれ違いというか非対称ってありますよね。

雨宮:こっちはかっこよく受け止めてたっていう(笑)

トミヤマ:(笑)では早速本の話を!

キラキラ自己啓発においてけぼりの女子のために

雨宮まみ トミヤマユキコ 女の子よ銃を取れ
『女の子よ銃を取れ』(平凡社)
著者:雨宮まみ

―『女の子よ銃を取れ』はwebで連載していた時も大人気でしたよね。
書籍としてまとめるにあたっての経緯や、雨宮さんの考えていたことを教えてほしいです。

雨宮:
キラキラした自己啓発系のモテ本とかおしゃれ本とかは、自分のための本じゃないなって感じてる人が、読んで違和感を感じないものにしたい、と考えてました。
原稿を送るたびに編集さんが「この描写はちょっとハードルが高いです!」とか、細かくチェックしてくれるんですよ。
とにかくハードルを下げて下げて、誰でも入ってこれる状態にしたかった。

「きれいになりたいからかわいい服を買おう!」ってまっすぐに行けない、「私なんかがスカートはいちゃいけないんじゃないか」とか、そういうことをグルグル考えて苦しい気持ちになっている人が読めるものにしようと。
「You、やっちゃいなよ!」じゃなくて、「わかりますよ、そういうこともありますよね、だけどちょっと、履いてみて、スカートをっ…怖くないからっ…」みたいな感じです。

 そこの部分ってすごく置き去りにされてるじゃないですか。「かわいい服を買うのが怖い」とか、「おしゃれな店に入ること自体が怖い」とか、そういう気持ちって、ファッション誌とかの世界ではないことにされてるから。

トミヤマ:おいてけぼりの女子のために書いた本ですね。

雨宮:おいてけぼり!(笑)。
そうなんです、私だって、茶色の巻き髪の女の子が表紙の雑誌見るだけで「ああ、異世界の雑誌だなぁ」って感じるし。
なんか世の中の「キレイになりたい」っていう勢いについていけないっていうか、そういうメッセージは自分に向けられたメッセージじゃない、と思ってる人のためですよね。

私の時は……「私の時は」って言い出すともう高齢化が目立つんですけど(笑)。
私の時はなかったんです、ファストファッションが。
H&Mも上陸してなかったし、ユニクロも今みたいに使えるお店じゃなかったし、お金がないとおしゃれってできなかったんですよね。
でも逆にそれが言い訳にもなった。「お金がないからおしゃれになれないんだ」って。
今は「お金がない」っていうことも言い訳にならないから、苦しい人は昔よりも苦しいんじゃないかって気もして。

トミヤマ:かつて、女優やモデルはきれいでおしゃれが当たり前だけど、一般人は多少ダサくてブサイクでも別にOK!みたいな、美の棲み分けというか境界線がハッキリしていた時代があったはずなんですけど、最近はその境界がどんどんわからなくなってきて。

雨宮:ここ十年くらいで、道を歩いている人の容姿とかおしゃれのレベルがガーンッってあがったでしょ?
いや~この時代にヤングに生まれてたらマジつらいわ~って思いますもん!

トミヤマ:つらいです。しかも東京以外でもおしゃれレベル高いですし、逃げ場がない。

雨宮:私は福岡出身なんですけど、たまに福岡に出張に行った人とかに「福岡ってかわいい子が多いよね~」とか言われると本当死にたくなります。
「そこに居場所がなかったから私は東京出てきたんだよ!」って叫びたい(笑)。
福岡の人って、大幅にバランスを外した人は少なくて、全体的にあか抜けてるんですよね。
おしゃれな街だといえばそうなんですけど、変な格好してると浮くから、私にはすごく息苦しかった。

トミヤマ:服だけじゃなく、化粧のレベルも上がってますよね。

雨宮:おしゃれや化粧を気にしないでいられる人もいるけど、そういう人が少なくなったような気もしますね。

世間が「こじらせ着ぐるみ」を着せてくるところで…
『女子をこじらせて』の続編!

トミヤマ:気になるのは男の眼だけじゃないですからね、女同士の格付けもあるし。
生きていく以上、人と関わらざるを得ないから、何らかのものさしで測られてしまいますけど、その評価に満足いってない人はつらいですよね。
そういう人がまみさんの本を読むと泣くんじゃないですか…? オイオイオイオイ…って…。

雨宮:昔話みたいな泣き方(笑) 

トミヤマ:つらいよ、どうしたらいいんだよ(泣)みたいな。

雨宮:わかんないよね。
この連載がはじまったのは2012年で、当時は「こじらせってどうやったら治るんですか?」って質問されることが多かったんです。
でも、「こうすれば治ります」とも言えないし、「そもそもこじらせって病気かよ!? 私、医者じゃねーし!」とか思ってたんですけど(笑)。

 でも、どうにかしてもっと楽になる方法はあるんじゃないか? ってすごく考えてた時期で、外見のコンプレックスだけでも自分で乗り越えられたら自信がつくんじゃないかと思ったんですよね。
人から見たら素敵な人なのに、本人は悩んでる、みたいな人とたくさん会って、それが本当につらかったんですよね。
「なんでこんなに気をつかってキレイにしてる人が、自信を失ってるんだろう?」って。
本来素敵な人が、世の中の視線に蹂躙されてるように感じました。

トミヤマ:まみさんご自身の状況と本の内容が連動してますよね。
世間が、「こじらせ女子」という名の服をガンガン着せてこようとするところを…(笑)

雨宮:エルサの様にサッとマントを脱ぐのね…!(笑)「寒くないわ!」つって!

トミヤマ:「自分の服は自分で選ぶわ!」つって! そういう絵が見えたね、今。

雨宮:ひじまでの手袋脱いでね! でも本当にすごい着せてこようとされたんですよね。

トミヤマ:2012年ごろなんて、一番大変な時期でしたよね。
頼んでもない服が大量に届いて、「これ着ませんか?」みたいな。

雨宮:こじらせキャラの着ぐるみみたいなの用意されててね…。

トミヤマ:「これ入ってください!」って(笑)

雨宮:「面白いこじらせエピソード三つくらいお願いしまーす!」みたいな(笑)

トミヤマ:(笑) 「こんな着ぐるみもういやだっ!」みたいな気持ちと連動してたんでしょうね。
私、『女の子よ銃を取れ』は『女子をこじらせて』の続編だと思って読みましたもん。

 もちろんこのふたつの作品の間に別の本も出版されてはいるんだけど、この2冊はかなり親和性が高いなと思いました。
『女子をこじらせて』が総論で、『女の子よ銃を取れ』が各論。
「こじらせ」という内面を理解できたら、次は外見のことを考えてみましょう!みたいな。

雨宮:こじらせから脱出するステップワン!みたいな。
続編として読んでもらえたのは、すごく嬉しいです。

トミヤマ:自分の服や化粧のことだったら、人間を相手にするわけじゃないし、恋愛のことでもないから、とりあえずどうにかなるじゃないですか。
こじらせ女子が抱えている色々なお困りごとのひとつである外見の問題について、これはステップワンだし、割とハードル低いから安心して、って言ってくれてる気がしました。

雨宮:そうそう! 私はやっぱり対人関係が一番苦手で、そこは相手のあることだから難しいけど、服を買ったり髪型を変えたりっていう実験は一人でできるんですよ。
対人関係で急に自信を持てって言われても難しいし、「男はボディタッチで落とせ!」とか言われても、それ階段の踊り場から飛び降りるくらいの勇気が要る(笑)。
でも、お金さえ出せば服は買える!

でもね、それでも店に入れないとか、店員さんが怖いとか、そこでつまずくという話もよく聞くんですよ。
私も上京してきたころは、下北沢の古着屋が怖かったっていう…。

トミヤマ:アハハ!(笑)

雨宮:めっちゃ怖かったですよ、下北沢の古着屋。今思うとインディアンみたいな服とか売ってたんだけど、こっちは下北沢に売ってるだけでおしゃれな服だと思い込んでるから、「これを着こなせてこそおしゃれだ!」って、間違った服いっぱい買っちゃって…。
いまだに下北沢の古着屋、怖いですね(笑)。

とっ散らかるセルフイメージ

―読んでいて、確かにすぐできそうなことばっかりだなと思ったのですが、同時にセルフイメージというのがすごく気になりました。
セルフイメージが変えられれば結構変われそうな気がするんですけど、どんな風に進化をとげていったのかなって、お二人の軌跡をお教えいただければと思いました。

雨宮:トミヤマさん、セルフイメージをはじめて意識した瞬間って覚えてますか?

トミヤマ:小さいとき、完全に男に間違われてたんですよ。

雨宮:一緒だ(笑)

トミヤマ:小学校か、いや中学校に入るくらいまでかな。スカートをはいて、リボンをつけて、母親と手をつないでいても、「僕いくつ~?」って言われてた。
もうね、オーラが男だったんだと思います。ほんとにしょっちゅう間違われていて、おかしいな?っていうか絶望ですよね(笑)
これが、セルフイメージを意識した最初かな。

雨宮:あ~…わかります。私は、初孫だったんですよ。父方母方両方にとって初孫で、めっちゃ可愛がられてお姫様扱いなんですよ。
ほんとに自分はお姫様みたいなもんだって思っていたし、公団に住んでたのに、私のソファコーナーみたいなのがあったの。

トミヤマ:なにそれ!そんなコーナー普通ないよ!

雨宮:すごいでしょ。私はそこで「ハン!」ってふんぞり返ってて。五歳くらいの頃。

トミヤマ:腹立つわ~!(笑)

雨宮:その時、キキララのかわいいピンクの布で、フリルがついた服を祖母が縫ってくれて。
でも、それを着て鏡に写った時に、なんか日に焼けて金太郎みたいな顔してる女が、フリフリのついてる服を着ていて、「あれ? おかしいな」って思ったんですよね(笑)。
「私、お姫様じゃないんだ!」って。
その、自分はお姫様みたいにかわいいんだと思ってたら違ってた! っていう夢から覚めた瞬間はすごく覚えてます。

トミヤマ:フリフリキラキラは完全に違うってわかったんですね。
わたしは転勤族の子だったんですが、転校がイヤで、中高は私立の女子校に行ったんですよ。
そしたら転校生時代に使っていた人気者男子たちに紅一点としてすり寄っていくというあざとい作戦が通用しなくなって、そこで一気に暗い子になっちゃったんですよね。

雨宮:暗いトミヤマさんがいたんですね!(笑)

トミヤマ:いましたよ(笑)。ハブられたりとかもしたし。非常階段でお弁当食べたりとか。
明るい子たちというのは、バトン部に入っているような子でしたね。

雨宮:でも、逆に黒歴史とかなくてうらやましいです…(笑)。
この間、高校のときの写真が出てきて、前髪がおでこの真ん中ぐらいで、たぶんゴダールの映画を意識したんだと思うんだけど、だっさい制服姿でハサミを構えてる、「お前誰のつもりなんだよ!」っていう写真が出てきて(笑)。
破り捨てたくなったけど、これも思い出の一つだから…。

トミヤマ:それ見たいです(笑)。私は軽音楽部に入っていたんですが、普段の地味さと、文化祭とかでステージに立ったときの目立ちっぷりの落差がひどい部活で(笑)。
GLAYのコスプレとかして、化粧とかしまくってました。その時の写真は立派な黒歴史ですよ…。

雨宮:GLAYのコスプレってどういうことだよ!(笑)見たいです!

トミヤマ:友達から借りた蛇柄の短パンをはいて、「However」歌ったりして(笑)。
あの頃のセルフイメージは相当散らかってましたね。

雨宮:最初は、「なりたい自分」と「自分なりの良さ」みたいなのが分裂してて、なりたい自分の方向しか見てなかったりしますよね。
だから絶対にとっ散らかるんですよ。

本当の自分はいないけどいなくてもいい

―今のお二人を見ていると、一見肩の力が抜けていて、大人として成り立っているように思うんですけど、そこに行きつくコツはありますか?
散らかったセルフイメージから、どうやって、そこまで持っていけますか?

雨宮:以前は、「本当の自分」みたいなものがどっかにあって、それが見つかれば、自分らしい統一感のある装いができる! っていうイメージを持ってたんです。
だけど、この前のトークショーのときに、トミヤマさんに紹介してもらった『Kanata』というブランドの服を着たときに、もちろん好きで気に入ってる服なんだけど、普段とは違う服だし、いつもはあまり履かないフラットシューズも履いてて、その状況を「これって『自分がある人』のコスプレじゃん!」って思ったんです。

トミヤマ:確固たる自分あります風(笑)。

雨宮:新しい服にチャレンジしたい気持ちもあって着てたんだけど、自分がある人っぽく見られたい下心があったんじゃないかって思ったんですよね。
ヨージヤマモトしか着ない人みたいな、意志のある、スタイルを持って服を着てる人に見られたい、っていう。
『Kanata』の服で、「わたしはいない」って書いてあるニットがあったんですけど、そのときにその服のことを思い出したんですよね。
「私はいないけど、私はいなくてもいいんだな」って。
どっかに本当の自分があって、それさえ決まればスタイルのある人、自分のある人になれると思ってたけど、この服も好きで、別の服も好きでバラバラだけど、それで別にいいんじゃないかって。

トミヤマ:私もファッションに関する「私はいない」系の話があるんですけど、20代の後半に、ギャル好きな男の人と付き合っていた時期があって。
家の中だけでいいからギャル服を着てほしいと言われたんですよ。
それで初めてギャル服屋にいって、店員さんに相談したの。彼はこういう雑誌に出てるこういう子が好きみたいで~とか。

雨宮:「黒ギャルと白ギャルでいうとどっちですか?」「『nuts』っぽい方向でお願いします!」みたいなね(笑)。

トミヤマ:そうそう!(笑)。
そうすると、男の言いなりになっているだけだ、という言い訳の下に色々な服が着られるわけじゃないですか(笑)。
普通、服を着るということは「私がこの服を選びました」「この服が似合うと思っている、そんな私です」っていうことで世間様に相対しなきゃいけないんだけど、ギャル服のときだけは、自分が一切責任を負わなくてもいいから、ものすごく開放感を覚えたんです。
もちろん本当に好きな服とは違うし、長続きはしなかったけど、楽しかった。
似合わないとか、すぐ着なくなるかもと思っても、試着ぐらいしてもいいんじゃないのか?みたいなことに、26~7歳ぐらいで気づいてハッとなって。

雨宮:そうだったんですねー!

トミヤマ:自分をいったん他人にゆだねるのはオススメです。
そればっかりだと自分を奪われてしまうけど、ある程度自分をゆだねてみると「これは取り戻したい!」という自分が逆に見つかるというか。
ゆだねることをしないで、自分で何とかしなきゃと思って雑誌読んだり、情報収集していても限界があるので。
今日の服も、109で買ったんですけど、店員さんに、今日はこういうテーマでこういうお仕事をされている人と対談するんですけど、って言って選んでもらいました。

―プロに聞くのはすぐできそうですごくいいです。

トミヤマ:「プロなんだからちゃんと選んでね、頼んだよ!」っていう、少し上から目線の気持ちでゆだねてしまうのはアリだと思います。

雨宮:美容院のオーダーと似ていますよね。
なかなか言えないことですけど、あるとき意を決して自分で自意識を捨てた瞬間があって、「美人に見える髪型にしてください」とか、「女らしい髪形にしてください」とか。
一回言うと、ああ別に大したことじゃなかったんだって。

トミヤマ:そういうオーダーする人、絶対いっぱいいますよ。
客がその一言を吐き出すときはすごくハードルが高いけど、美容師さんからすれば「またか」ぐらいの感じかも。

雨宮:菊池凜子の写真持って行ったりしましたよ(笑)。
でも、髪型の話だし、顔を似せろとは言ってないから。
顔が違うのはわかってるけど、プロの腕前でいい具合に調整して下さいよ! って、今は写真持っていける。
美容師さんも、なりたいイメージが掴めたほうがやりやすいんですよね。

【続きます。お楽しみに!】

雨宮まみさん新刊『女の子よ銃を取れ』

  トミヤマさんが「『女子をこじらせて』の続編だ!」と分析した『女の子よ銃を取れ』(平凡社)。 章を進むごとに、女子の外見に関する悩みや嫌なことが癒されていきます! 周囲の「かわいい」に圧迫されている方、ぜひ読んでみてくださいね。

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