不良男子とのプラトニックな純度100%の恋愛!少女性が蘇る/能年玲奈主演で話題『ホットロード』

 少女マンガに登場するステキな王子様に胸をときめかせていたあの頃——いつか自分も恋をしたい。
そんな風に思いながら、イイ男とは何か、どんなモテテクが効果的なのか、少女マンガを使ってお勉強していたという人も少なくないハズ。

 時は流れ大人になっても、少女マンガによって植え付けられた恋愛観や理想の王子様像は、そう簡単に劣化するものではありません。
むしろ王子様の亡霊に取り憑かれて、リアルな恋愛がしょぼく思える人もいたり?
この連載では、新旧さまざまなマンガを読みながら、少女マンガにおける王子様像について考えていきます。

第4回:あぶなっかしい王子様『ホットロード』

 紡木たく『ホットロード』は、少女マンガ×ヤンキーカルチャーという組み合わせが奇跡のような化学変化を起こしている作品です。
泣けるし感動できますが、泣いてスッキリというよりは、その奥底に沈殿する痛みとか切なさが後を引く感じ。

 1986年から約1年半にわたって雑誌掲載されたのち、単行本化や文庫化を繰り返し、いまや累計700万部を突破しているといいますから、まさに少女マンガ史に残る名作のひとつです。
それにしても、この複雑で繊細な感情表現が日本中が浮かれていたバブル期に描かれたなんて、なんだかウソのようです。

 身近にヤンキーや暴走族がいない読者にとって、本作はまさに「異世界の物語」ではないでしょうか。
不良たちの生活、ファッション、恋愛……それらは、独特の価値観によって支えられています。

 集団での暴走行為や鉄パイプで喧嘩することは危険というより興奮することで、仲間の溜まり場に行くとレイプされる危険性があるかも知れないのに楽しくて、みんな家庭環境に問題がある寂しさを抱えた子どもだけど妙に大人びている……危ないことやいけないこと、不幸なことや悲しいことが渦巻いているのに、彼らの世界はある種の連帯感によってなんとも言えない温もりを帯びていて、世間のほうがずっと冷酷で無慈悲に見えるのです。