選り好みせずに雑食であれ!/安彦麻理絵に聞く『オンナノコウフクロン』(1)

 結婚ばかりが女の幸せではないことは頭でわかっている。けれど、「しない人生」を選んだわけでもなく、たまたましっくりくる相手がいないだけ。世の中の半分は男のはずなのになんで!? 
というわけで、今年の8月に『オンナノコウフクロン』をイースト・プレスから上梓したばかりの安彦麻理絵さんにお話を伺わせていただきました。

第一回:『男仕事』のできる芋が狙い目

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大泉りか(以下、大泉): 今日はよろしくお願いいたします。

安彦麻理絵さん(以下 安彦): わたし、人に話を聞くのは全然平気なんですよ、でも聞かれるっていうとドキドキしちゃいますね。「自分が何か話すことあるか」っていうと……別にないんですよね(笑)。むしろ、大泉さんのほうがネタを持ってるんじゃないですか? SMとか。

大泉: あぁ、はい。SMは、昔やってました。最初はSMショーのM女だったんですよ。会員制のバーとかお金持ちのホームパーティーとかで。で、その後にSMクラブでも働いたんですが、お客さんがとにかく面白くって。まぁ、変な人ばっかり。

安彦: ええ、どういう?

大泉: 今は、いろんなフェチに対応した店があるんですが、昔はあんまりなかったから、変わった性癖の持ち主の受け皿がSMクラブしかなかったんです。だから、本当に、いろんな人がくるんです。足の指のささくれが食べたいっていう人とか。SMはSMでも、ささくれマニア(笑)

安彦: あっ、はっはっはー! なんか、わたし、前に六本木のそういうお店に連れていっていただいたことがあったんですが、「こういうところ、初めてなんですぅ!」とかそういう子っていません?

大泉: あぁ、いますよ。お金持ちっぽいおじさんが連れてる若いオナゴ。

安彦: わたし、ああいうの、むかつくんですよ。実生活とかでも、「わたし、Mだからぁ」っていう子とか。楽して愛されたいとか、腹が立つんですよね

大泉: Mとかいいつつもマゾではなくマグロな女ですね、いますいます。
でも、おじさん接待は、仕方ないかなって思うんです。わたしもたまーに、そういうところに連れていかれますが、「あのロウソク、全然、熱くないよね」とか思いながらも口では「すごーい、こんなの初めてっ!」とか言いますもん。

安彦: あれ!? ちゃんと女仕事するんですねー。でも、まぁ、女のほうが、何事においても賢いっていうか……男性のほうが弱いみたいな感じはありますよね。小さい子供でも、女の子のほうがぜんぜん図太いし、打たれ強い。新しい環境でも、女の子は入って行けるけど、男の子はまったく馴染んでいけない。

大泉: 確かに、男性って見知らぬコミュニティーに弱いですよね。内弁慶が多い。うちの旦那とか、普段がガキ大将のくせして、知らない場だとわたしに耳打ちして言わせるんですよ。船場吉兆の女将みたいに(笑)。

安彦: 女はやっぱり器用なんじゃないかなって思うんですね。

大泉: じゃあ、場を円滑に回すのが『女仕事』だとしたら『男仕事』って?

安彦: わたし、あらゆる男仕事って、あらゆる女をちゃんと『女扱いすること』って思ってるんです。

大泉: 頭をポンとか(笑)。

安彦: それやられると、女って弱いですよね。くしゃ、とか(笑)。

大泉: あれやったらみんな、モテますよね。

安彦: でも、女の頭をくしゃってできる男って、いくえみ綾の漫画くらいしか……。
あとは「おまえ」って呼ばれるのが好きな女も多いですよね。でもわたしはダメです。なんか「ガルル」ってなっちゃう。コテってお腹出す女がいることはわかるんですが。

大泉: たまに女向けの官能小説を書くことがあるんですが、男性向けと全然違うんですよ。
『(お前が)好きすぎて痴漢』とか、『好きすぎてレイプ』とか『好きすぎて監禁』とかそういうのがウケるんです。まぁ、もちろん、イケメンに限るって話なんですが。
あと、職種も大切で、社長か御曹司、あと、パティシエとか。でも、男向けでは、ヒロインが料理人とかないわけですよ。女って食いしん坊。金と食べ物が好き(笑)。そう考えると、川島なお美は、ザ・女の欲望の権化ですね。