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  • 2013.10.02

恋愛は「文化」「趣味」と割り切るべき?/湯山玲子&二村ヒトシ対談(2)

「女性らしさ」とはいったいなんでしょう?男らしさと比べて語られることも多いワード、しかし生まれついて女らしく、自分が女であることに自覚的な女性は少ないと湯山玲子さんは語ります。心の穴は男性にもあり、でっぱった自己主張は女性も持っています。お互いの所有物を把握して、齟齬をなるべく減らすためには?

第2回:「女らしさ」に引き裂かれて

 上野千鶴子さんとの対談『快楽上等! 3.11以降を生きる』が好調の著述家・湯山玲子さんと、『すべてはモテるためである』『恋とセックスで幸せになる秘密』が話題沸騰中のAV監督・二村ヒトシさん

 4月16日(火)に開催された、「男女のモテと快楽について」をめぐるお2人の白熱したトークショーから、その内容のごく一部を抜粋し、全4回でお届けします。
第1回「すべての女は面倒くさい」もあわせてご覧ください。


女は自分の「女性性」にピンときていない?

二村ヒトシ

二村ヒトシさん(以下、敬称略): 女の人がなぜ面倒くさいかというと「つねに自我が引き裂かれているから」だと思います。
「自分」であることと「女」であることが、あんまりピタッと一致してないんじゃないかと思うんですね。

湯山玲子さん(以下、敬称略): その通り。私も『女装する女』で書いたけど、女のスペックは”女装”感覚ぐらいでいた方がうまく行く。

二村: それは男性社会からの要求であったり、実はお母さんからかけられた呪いであったりするんですが、「女らしくあらねば」ということをすごく内面化させられている。

湯山: そこにはもちろん、結婚しなければとか、子供を産まねばというのを含むよね。

二村: 強制されてそれに反抗しているだけならまだいいんだけど、自分でも「女らしくできない自分」というものの価値を低く見積もってしまっているんですね。そこで自己肯定できずに引き裂かれていく。

湯山: 最近では、その「女らしくできない自分」とその人生を、もうリアルに悩み追い求める事から逃げて、アイドルの世界に昇華していくということをしている。もしくは、こうあらねばっていう自分が常に外にある。
だから勘違いしてがんばって「美魔女」とかになろうとする。

二村: 思想家で武道家の内田樹さんが、レヴィナスという哲学者の説を紹介していたのを読んだんですが、彼は「男の自我というのは【でっぱっているもの】だ」と言うんですね。そして、男の自我は常に砂漠をさまよい太陽に照りつけられて疲れているんだと。その砂漠には【女性】というぽっかりと空いた空虚な穴があって、そこに収まって癒されることによって男性性というのは回復するんだって、むずかしい本なんだけどたぶんそういうことを言ってるんじゃないかと。

湯山: そんなことを言ったら、当然女性は怒り出すよね。「私たちだって砂漠をうろうろして、疲れてるんだよ!」って。だって本来、女の自我だって出っ張っているものなんだから。

二村: そうなんですよ。男にだって空虚な穴はあいているし、女だってそこに収まって癒されたい。でっぱっている自我を持っているのに、男を迎え入れる穴の役ばっかりやらされてきたから、女性は引き裂かれて当たり前なんです。

「女らしさ」を手口にして遊べ!

湯山玲子

湯山: 私は、自分が女らしいと思ったことがない。これって、実は女性がほとんど持っている感覚で、そもそも女の人の中に「女性性」とか「女らしさ」みたいなものがもともとあるかって考えたら、ないんじゃないかと。

二村: ふだん、「私、女だから」って思うこと、あんまりないでしょうね。

湯山: そう、人としてちゃんとありたいとか、責任を持ちたいとか、いろんなことを伝えていきたいと思ったときに、それを自分の中の「女」がやってるとは思えない。

二村: さっきの「自我とは勃起したものだ」という話と同じですね。

湯山: そう、これ言うと、フェミニズムの人に誤解されちゃうんだけど、人間っていう言葉は基本的に「男」を指している。自我のある人は男。
だから、仕事で意志的な女性は「私、男だからさ」という。嫌な言い方だけど。

二村: 女性性というのは【へこんでいるもの】だけど、自我というのは男女関係なく【でっぱっているもの】ですからね。女性は「自我」と「女」という矛盾する2つのものを抱えてなきゃいけないから面倒くさくなる。

湯山: だから私にとって「女性性」とか「女らしさ」っていうものがあるとしたら、それはもう「手口」でしかないですよ。自分の「女らしさ」みたいなものを「手口」だと割り切って、恋愛やセックスを「文化」や「趣味」のひとつとして遊ぶ、ぐらいに思ったぐらいでバランスが取れると思う。

二村: それはすごくいいと思います。苦しくなく、自分が面倒くさくなく生きていくための方法として。

恋愛は「文化」「趣味」と割り切るべき

湯山: というのも私、更年期が終わりかけてて、実のところ性欲もだんだんなくなってきてるんだけど、どうやって男の気を引くか、どういうデートをして落とすか、どう甘えるか、みたいな面倒くさい「恋愛文化」がこうなるといとおしい物になってきた(笑)。でも、それは決してアイデンティティの支えにするようなものじゃないんですよ。

二村: それこそ、男がバイクやサッカーにはまるのと同じで、すごく外部化された「趣味」なんですね。

湯山: そう非常に遊戯的なね。まあ、真面目でない恋愛ですかね(笑)。

二村: 「遊び」というとすごくふまじめに聞こえてしまうけど、恋愛やセックスというものを、自分の人生に喜びを与えるジューシーな楽しみとして確保しておこう、ということですよね。幸せや快感を感じるために恋愛をしているはずなのに、恋愛ですごく傷ついたり苦しんだりしてしまうのって、なぜなんでしょう?

湯山: それは、恋愛が彼女のアイデンティティだからでしょ。

二村: 男の場合は、前回も話した“インチキ自己肯定”ができるからまだいいんですよ。
女にフラれたり、うまくいかなくて傷ついても、「女なんか…」とか言って、お金を稼いだり、地位や名誉を得たり、社会的に自己実現のために努力することで、とりあえずの自己肯定感を得られるんですね。

湯山: 女性もインチキ自己肯定ぐらいのテクは持っていた方がいいのに。
ろくでもない男に恋をすると、テクどころか盲目的に献身しちゃう。だめんず好きな女って多いじゃない。

二村: そう、まさにそれについて書いたのが二冊目の『恋とセックスで幸せになる秘密』(イースト・プレス)という本なんです。なんで女はだめんずにはまってしまうのか、どうして恋愛で傷ついてしまうのか。

湯山: それもこれも、女性が男性に比べて自己肯定感を持ちづらいようにできているからだよね。

二村: そこに気付いて自覚できるだけでも、女性は恋愛に無用な苦しみを抱かずに済むんじゃないかと思っているんですよ。

【第3回へつづく】

Text/福田フクスケ

『快楽上等! 3.11以降を生きる』

湯山玲子
著述家。出版、広告の分野でクリエイティブ・ディレクター、プランナー、プロデューサーとして活動。著作に『ベルばら手帳 マンガの金字塔をオトナ読み!』(マガジンハウス)、『女ひとり寿司』(幻冬舎文庫)、『クラブカルチャー!』(毎日新聞出版局)、『女装する女』(新潮新書)、『四十路越え!』(ワニブックス)など。月一回のペースで、クラシック音楽をクラブ仕様で爆音で聴く「爆クラ」を主宰。
(画像右:『快楽上等! 3.11以降を生きる』/著者:上野千鶴子、湯山玲子/発行:幻冬舎/価格:1,575円)

『恋とセックスで幸せになる秘密』
『すべてはモテるためである』

二村ヒトシ
アダルトビデオ監督。MotheRs・美少年出版社・欲望解放・レズれ!という4つのAVレーベルを主宰するほか、ムーディーズ、エスワンなどからも監督作を発売。また、ソフト・オン・デマンド制作部門であるSODクリエイト社の顧問(若手監督への「エロとは何か」指導を担当)にも就任。
公式サイト:nimurahitoshi.net
twitter:@nimurahitoshi@love_sex_bot
(画像右:『すべてはモテるためである』/著者:二村ヒトシ/発行:イースト・プレス/文庫ぎんが堂/価格:700円)(画像左:『恋とセックスで幸せになる秘密』/著者:二村ヒトシ/発行:イースト・プレス/価格:1,260円)

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福田フクスケ
フリーライター。“くすぶり男子”の視点から恋愛やジェンダー、セックスなどを考察。

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