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  • 2014.02.27

乱交パーティーで渦巻く欲望、視線…『愛の渦』で三浦大輔監督が描く人間の動物性


 前回レビューでご紹介した、3月1日公開の映画『愛の渦』。
劇団ポツドールを主宰し、本作の原作・脚本・監督を担当された三浦大輔さんにインタビュー!
恋愛やセックスについてなど、本作にからめて伺いました。

「エロいものを見たい」と思って来てくれた人は
逆にがっかりするだろうなと(笑)

鈴木みのり 愛の渦 三浦大輔


———この作品は、三浦さん主宰の劇団ポツドールでご自身が書かれた戯曲で、乱交パーティーという舞台が話題になっています。
その様子がとてもリアルだと思ったんですが、三浦さんは乱交パーティーに行かれたことがあるんでしょうか?

三浦監督: あ、行きました行きました。
僕がこの原作の舞台をはじめてやったのがもう10年近く前なんですが、その時に3~4回取材で行きました。
もちろん経験がそのままドラマにはならないんですが。
例えば、明らかにヤりに来ているのに最初にぎこちない会話があって探り合ったりという状況は実際にあったので、「こういう風になるよな」と、ところどころ反映させていました。
でも、全部ではないですね。
あとは店長の説明もディテールの部分に使っています。

———セックスそのものよりも、コミュニケーションが丁寧に描かれているなと思いました。
そのプロセスから人間関係が浮かび上がってくる様子がおもしろいな、と。

三浦監督: そうですね、そこですね。
人間関係と言いますか、この乱交パーティーという設定を作って人間の普遍的なものを描くという。
「エロいものを見たい」と思って来てくれた人は、逆にがっかりするだろうなと(笑)。
濡れ場はあるんですけど、エロく撮ろうとは思っていないんですよ。 単純に「そこにあるセックス」という、客観的な視点でセックスを撮ることを心がけていました。

セックスから恋愛感情は生まれるのか?———
「精神的なつながりを求めるなら、動物性は否定できない」

鈴木みのり 愛の渦 三浦大輔
 


———「ヤるかヤらないか」という基準がベースの乱交パーティーでの人間関係において、池松壮亮さん演じるニートの男性は、割と感情の交流を求めているキャラクターに見えました。

三浦監督: もともと彼は、この場に何か精神的な支えを求めて来たわけではなく、単純な自分の欲求を満たすために来たんです。
でも、やっぱり何回も身体を重ねるうちに、自然発生的に交流したい感情が芽生えだしてきた、かなあ? ……そんなところで朝を迎える、という感じなんですけど。
芽生えているかどうかは彼自身もよくわかってないんですがね。
ニートで自分がどこにも属していないっていうことがあるから、パーティーで起きたことも日常の延長線上としてとらえてしまったため、そんな感情が芽生えた。
この人がもし会社に勤めていて、スーツを着なきゃいけないっていう社会人としての立場があるとしたら、もしかしたらもうちょっと割り切れたかもしれないというのはありますよね。

鈴木みのり 愛の渦
(C)2014映画「愛の渦」製作委員会

———セックスから恋愛感情が生まれることもあると思います。
女性誌なんかでよく取り上げられる話題ですが、このふたつを切り離すことができるのか?というテーマについてどうお考えですか?

三浦監督: 切り離せる、と考えるのは普通のことだと思います。
「興味があるならセックスしてもいい、自分の動物性を認めたくない」という思いは、女性の方が強い。
逆に言うと、男性がいいわけを作ってあげれば女性はヤらしてくれる。
「僕はこんなに落ち込んでるんだから慰めてよ」って言うと「じゃあ、しょうがないかな……」と。
女性は、仮にそこに「ヤりたい」という気持ちがあっても認めたくないんですよね。
男性は、自分の動物性を素直に認められるからこそ、実は精神的な繋がりを感じると引きずってしまう。

 この作品の中には、まさに動物的に肉体を求めるけれども、生まれてしまう精神的な繋がりというものがあるんですよ。
しかし、精神的な繋がりというのは断ち切りたくなってしまう。
それは、乱交パーティーに来た自分が精神的な繋がりを求めてしまったら、動物性を否定できなくなるっていう発想から、なんですね。

主演の池松壮亮くんと門脇麦さんは
その場に行って、自分の感情を体感して感じられる人

鈴木みのり 愛の渦 三浦大輔


———主演の池松さん、門脇麦さんは「若手の新進俳優」としての立場があって、今伸びているところでこういった強烈なイメージをつけられやすい作品に挑戦された。
三浦さんから見てお二人はどうでしたか?

三浦監督: 本人たちじゃないし、どう捉えているか本心は聞けてないんですけど。
役者は「自分を見られたい」っていう欲求が強い人たちで、そこから得られる快感は知っているはずだから、その作品がおもしろいと思えばやると思うんですよね。
門脇さんの場合は、出演には抵抗があったけど、テーマに興味があったし、作品をおもしろいと思ったから参加することにしたそうです。
作中、門脇さんが演じる女子大生は、パーティーに参加することにためらいながらもその扉を開ける。そこが同期しているので、ドキュメンタリー的なんです。

———舞台演出と違って、映画になるとアップのシーンもあるし、役者さんに委ねないといけない部分が大きかったのではないでしょうか?

三浦監督: 池松くんと門脇さんについては、あまり何も考えずに役を作らないでそのままその場にいて感じたようにやってください、という指示を出したので、彼と彼女のドキュメンタリー的に見えればいいと、記録のように僕は撮っていました。
「こういう風に感情を出せばいいんでしょ」と、変にあざとい人や、動揺している時は動揺している顔の演技をしないと表現できない人もいるけど、二人は違ったので。
二人とも、その場で自分の感情を体感できる人だし、感受性が豊か。
「こういう演技をしよう」っていうプランがなくても、自然と表情は撮れたんです。

鈴木みのり 愛の渦
(C)2014映画「愛の渦」製作委員会

———今はネットやSNSが一般化して、他人からの視線を気にしすぎて、「動物化する」ことを恐れる傾向にあると思います。
まさにAMの読者もそういう方が多いのですが、なにか思うところやメッセージがあればお願いします。

三浦監督: それはそれでいいと思うんですよねえ(笑)。
みんなが自分の動物性を認めてしまったらダメっていうか、おもしろくなくなると思うんで。
ただ、この映画で描かれている場所は、動物性に素直に生きなきゃだめなところじゃないですか?
自分の解放の仕方がわかって、これが本当の自分だったと自覚する快感は意外に悪いことじゃないよ、と。

 映画にからめて言うと、女子大生の彼女は自分を解放して、このパーティーにいることを「楽しいです」と言っている。「楽しくなさそうに見えるけど、実は楽しい」と。
その「楽しい」って感情は、人の視線とか社会的な立場とか、色んなものがあって覆い隠されているとは思うんですけどね。
……だから、乱交パーティーを皆さんもやってみたらどうですかね?(笑)
怖いかもしれないですけど、解放した自分を知ることで人生を有意義に過ごせたりするのかも。
またそれで、認められなかったら認められなかったで、戻ってくればいいと思うんですよ。
一度味わってみて、自分はどう感じているのか? 本当は自分の奥底に動物性が眠っていないか? と、問いかけてみてほしいです。
でも、乱交パーティーをやろうなんて言ったら、引かれちゃうと思うけど(笑)。


3月1日(土)よりテアトル新宿ほか全国ロードショー

原作・脚本・監督:三浦大輔
出演:池松壮亮、門脇 麦、新井浩文、滝藤賢一、三津谷葉子 、窪塚洋介、 田中哲司
制作プロダクション:ステアウェイ
製作:映画「愛の渦」製作委員会(東映ビデオ、クロックワークス)
配給:クロックワークス
2014年 / 日本映画 / 123分
URL:映画『愛の渦』公式サイト 

Text/鈴木みのり

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鈴木みのり
某出版社の編集者にナンパされて、流れるままにはじめたライター2年目。

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