“職人のおじさん”に見る、男性の「気の遣い方」

ひと目惚れは突然に…

中村綾花 AMパリ支局がお送りする 結婚と幸せの方程式 フランス 純愛 TAKUMA KIMURA

我が家は昨年から、相変わらずリフォーム大工事が続いている。
毎日朝早くから2人の職人が作業をしてくれている。
1人は60歳近く、もう1人は50代前半といったおじちゃんらだ。
彼らはセメントをまるで、ケーキ職人が扱う生クリームのように手慣れた感じで扱う。私がこれまで触った事もないような、荒々しい鉄のマシーンを使って火花を散らしても微動だにしない。
戦いに挑んでいる様に洋服を汚すから、作業用と、普段着と、ちゃんと着替えて作業する。
意外にも普段着は結構おしゃれだ。

60歳のおじちゃんなんて、照り&刺繍のあるジャンパーを着て来たりする。床屋にも定期的にいってさっぱりしている。
なにより、2人とも毎日香水をかかさない。
おかげで私は、彼らの残り香でどっちの職人さんか判断つくまでになってしまった。

そんなリフォームでごった返した中、我が家に日本人の女友達が遊びに来てくれた。
彼女が到着して、玄関からリビングまで歩いて行く際、玄関で作業をしていた50代の職人のおじちゃんの方が、彼女を見て固まった。
いや、固まったのは身体だけで、彼の顔は「すーーーーっ」と、私の友人を追いかけて、まるで彼にスローモーションがかかったような風に見えたのだった。
突然彼の目の前に現れた乙女に、彼はただただ、目を奪われた。

そう、彼は私の友人に一目惚れしてしまったのだ。
それ以降毎日、彼は私と話せるタイミングを見つけては、「君の友人によろしくいってくれ」と、甘くとろけそうな表情で話しかけてくる。
「いやいや、もう彼女はもうすぐ日本に帰って、フランスに戻ってくる予定なんてないよ」
なんて、言えない。
それくらい、彼は夢中になっているのだ。

一目惚れのリアルな現場を見たのは、これが私の人生の中における初めての体験だった。
なんというか、恋というのは本当にいつやってくるかわからない。
それをわかっているからか、職人のおじちゃんは、汚れる仕事であっても、香水に、お気に入りの洋服をかかさないのかもしれない。

フランスの男は、油断がないのだ。

Text/中村綾花