どんどん切り離されて交わらなくなっていく、出産未経験者たちと経験者たちの世界

妊娠、出産をするということ

中村綾花 AMパリ支局がお送りする 結婚と幸せの方程式 フランス 純愛 Felipe Fernandes

最近、周りの友人たちはどんどん子供を産んでいる。

そして、その友人らが子供を産むとものすごい変化をとげることに動揺している。

それまで、同じ時間で同じ空間で、同じ話で笑えていたのに、彼女たちが妊娠してから腹がどんどんふくらみ、ついに赤ちゃんが世に飛び出してきたら、まるで別世界の住人になってしまうのだ。

それもそうだろう。それまでにいなかった新しい生き物が自分の目の前に出現し、生活の全てがその新しい生き物中心にまわりはじめてしまうのだから。

一番最初にこうした女性の変化を身近に感じ取ったのは、私の妹の妊娠と出産だった。

身内で初めての妊娠。彼女が妊娠したと聞いて私は会うのも恐かった。なぜなら彼女に会った時、私が事故でも起こして赤ちゃんになにかがあったらとんでもない、という理由からだ。

妊婦というのはガラス細工より繊細な存在だと思っていた。それくらい、妊娠や出産ということに私は触れてこなかったし、よく分からないことだった。

でも、妹に会ってみたら本人は日に日に強くなっていくように見えた。でーんと構えて、よく食べ、よく寝て、何ともないようだった。

ところが、赤ちゃんが産まれてすぐは彼女は神経質になっているのがよくわかった。普段なら勘にさわらないようなことが、異常に気になったりするらしい。

赤ちゃんがムクムクと大きくなって、子供の形をしてきたときには、それにつれて妹もムクムクと太っていくのだった。話を聞くと、子供を産んでから体重だけでなく味覚まで変わってしまったらしい。そんなバカな。それまでビールなんて飲んでる姿を見たことがなかったのに、いまでは夕食時のビールがかかせないという。