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  • 2015.08.16

近所で見て見ぬ振りをされる「田舎在住、30歳過ぎ、独身」

結婚したいのにできないのか、両親と一緒に生活をしていることが幸せだと感じているのか、結婚したくないのか、そんなことは本人しかわからないのに、田舎では独身でいることは悪いことのような気になってしまう…もっと「人の生き方のヴァリエーション」があってもいいのではないでしょうか。

田舎に存在する腫れ物的存在

中村綾花 AMパリ支局がお送りする 結婚と幸せの方程式 フランス 純愛
Iulia Pironea

 私の実家は九州のけっこう田舎のほうです。帰省すると、いつも立ち寄る東京と自分の田舎では同じ日本なのに異国のように思わされる風景があります。

 だだっ広い田んぼや国道があるだけでなく、そんな環境に生活している人間もそうです。

 特に目を見張るのは、巨大なディスカウント・スーパーとかに行くと驚くほど若い子連れのファミリーがいることです。10代で「できちゃった婚」するカップルの話は身内でもよく聞く話ではありますが、私がいま住んでいるフランスでもあまり見かけない存在なので、出会うとついギョっとしてしまいます。

 ところが地方では若くして子供を持つことは寛容に受け入れられているようです。一方で、30歳40歳を過ぎても結婚せずに両親と一緒に暮らしている人は近所で見て見ぬ振りをされるような、はれ物にさわるような陰気な存在です。

 たとえば、実家のとなりに住むお姉さんがそれです。これまで一度も話したことはないのだけれど、私が小学生だったころには高校生だったはずの彼女。弟さんは高校卒業と同時に東京へ行ったと聞いたので、彼女はご両親と3人住まいを続けているようです。

 ある年、まだ独身だった頃の私と既婚者だった妹と母が実家にそろった時、となりの家から女性の声が聞こえてきました。

 それはとなりのお姉さんらしく、その声を聞いた妹はこんなことを言いました。

「ねえちゃん(私)は、ゆくゆく隣のお姉さんみたいに、オカンとオトンと 3人暮らしをするんだろね(笑)」というのです。

 その瞬間、母は顔色を変えて妹に怒りはじめました。「冗談でもそんなこというもんじゃない!」と。私は母の激しい怒り方にびっくりしたのと同時に、そんなにも私に独身でいて欲しくないのだな、いずれは結婚して欲しいのだな、という強烈な意思を感じてしまったのでした。

 以降、婚活を世界でしてまで結婚しようとした娘の私は、フランスで無事結婚。母親は私が結婚すると報告したとき、涙を流してよろこんでいました。別に母親のためにした結婚ではありませんが、なんだかホッとしたのを覚えています。

人の生き方のヴァリエーションが少なすぎる、日本

 私が結婚して以降、帰郷する年ごとに、となりのお姉さんの 軽自動車が毎日家の前に駐車されているのを見て、今年もまだ両親と生活しているんだなと思い、なぜか暗い気持ちになっている私がいます。

 別に彼女は「結婚したいのにできない」人かどうかなんてわかりもしないのに、「結婚できずにかわいそうだ」と決めつけてしまう空気が近所中に漂っているのです。

 彼女本人は、両親と一緒に生活をしていることが幸せだと感じているのかもしれないし、結婚なんてしたいとも思わない人かもしれないのに、です。

 日本に戻ってくると、東京であっても「人の生き方のヴァリエーションが少なすぎる」ことに気がつき息苦しくなります。地方なんてなおさらです。

 私はいま、なんとか日本を出て結婚をしているけれども、日本をでていなかったら、東京から九州の実家に戻って、独身のまま両親と暮らしていたかもしれません。

 だからこそ、なんだかとなりのお姉さんの存在が無視できないというか、どうしようもできないのに、いつも気になってしまうのです。よけいなお世話なんですけどね。

Text/中村綾花

ライタープロフィール

中村綾花
ラブジャーナリスト/ライター。

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