変わるべきは「私」ではない。容姿以外で自信はもてる――『ブスの自信の持ち方』

手を取る男女 David Yanutama

以前の記事、「私が可愛くなれば世界は変わる?ルックスに関する真実とその対処法」でキャサリン・ハキム氏の『エロティック・キャピタル』という本を扱った。ハキム氏はこの本で、「美しい容姿を持っていることが人生においていかに〈金銭的に〉得になるか」を解説している。だけど、収入が多いことや多額の資産を持っていることが必ずしも人生の幸福に結びつくわけではないと、多くの人はすでに知ってしまっているだろう。よって、「美しい容姿を持つことは人生の充実感や幸福度にどれくらい影響するのか?」という問いについて、私はいまだに答えを出せていない。

今回扱うのは、山崎ナオコーラさんの『ブスの自信の持ち方』だ。山崎さんは、作家としてデビューした頃からネットなどで「ブス」と悪口を書かれることが少なくなく、容姿差別についてはずっと主張したいことがあったという。今回の『ブスの自信の持ち方』は、反響の多かったウェブの連載を書籍化したものだ。

「メイクやおしゃれを頑張って、自分に自信を持とう」?

ところで『ブスの自信の持ち方』というタイトルから真っ先に連想されるのは、容姿についてコンプレックスを抱きがちな人は、メイクやおしゃれを頑張って自信をつけよう! みたいな内容ではないだろうか。もちろん、そういった行動が無駄なわけではない。だけど「ブス」と悪口を言われてしまう人がメイクやおしゃれを頑張る――〈自分を変える〉ことは、社会の中にある容姿差別を温存したまま、無抵抗に従うということでもある。本来変わらなくてはいけないのは〈私〉ではなく、誰かの容姿に対して何のためらいもなく「ブス」という言葉をぶつけてもいいと思っている、〈社会〉のほうではないだろうか。

『ブスの自信の持ち方』は、容姿にコンプレックスがある人はメイクやおしゃれを頑張って自信をつけよう! という内容ではなく、「変わるべきは社会」「メイクやおしゃれはしたい人がしたいときにするもの。特にやりたくない人は無理してそんなことはせず、容姿以外のところで自信を持てるようにすればいい」といったことが書いてある。

その「自信を持つ」ことが難しいんだよ~という意見もわかるのだが、この本はここで、とてもシンプルな自信の付け方を紹介している。それは、「自分で決めたことを、自分で続ける」こと。日記とか、ブログとか、筋トレとか、読書とか、他者の評価が介入しないものがよい。地味すぎて脱力してしまうかもしれないけど、この方法が実は最強であると私も思う。

1.好きなことを見つける
2.昨日も、今日も、明日も続けていけるような、小さな目標を設定する
3.こつこつと続けていくうちに自信が湧いてくる

本に書かれている3つのステップを試してみてほしい。上手い儲け話なんて存在しないように、「自信の付け方」も、実際はびっくりするくらい地味だ。