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  • 2016.11.14

生物学者の堀川大樹さんと恋愛工学対談(2013年11月17日付 週刊金融日記 第84号 再掲載)

最近、理化学研究所所属の小保方晴子さんが、iPS細胞に続く、新たな万能細胞の作り方を発見し、世界中で話題になっていますね。

体細胞の分化状態の記憶を消去し初期化する原理を発見
http://www.riken.jp/pr/press/2014/20140130_1/

週刊金融日記でも生物学の話題はよく取り上げています。

第13号 女の生理周期と浮気の関係
第15号 ガガンボモドキが教える男がディナーを奢るわけ
第25号 なぜちんこはああいう形をしているのか?
第26号 アレの形から人類の先祖への思いを馳せる
第82号 モテスパイラル現象の生物学的な根拠―グッピーによる実験
第83号 HIV感染リスクを考える

今日は、第84号での生物学者の堀川大樹さんとのメルマガの対談記事を無料公開します。
これはまぐまぐ社のはからいで、一枚4500円のとんかつ(第77号掲載)を食べながら行われました。

4500円のトンカツ・ランチなう。
https://twitter.com/kazu_fujisawa/status/382711497392017408

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生物学者の堀川大樹さんと恋愛工学対談

堀川大樹
北海道大学大学院で博士号を取得後、2008年から2010年までNASAエームズ研究室にてクマムシの宇宙生物学研究に従事。真空でも死なないクマムシの生態を解き明かしたことで、一躍有名研究者に。2011年からはパリ第5大学およびフランス国立衛生医学研究所に所属。ブログ「むしブロ」、有料メルマガ「むしマガ」を運営。著書に『クマムシ博士の「最強生物学」講座』(新潮社)。

クマムシ博士の「最強生物学」講座
http://goo.gl/Hv9ozh

有料メルマガ「むしマガ」
http://www.mag2.com/m/0001454130.html


藤沢:堀川さんは今パリに住んでるんでしたっけ?

堀川:2年ちょっと前からパリに住んでいます。パリ第5大学でクマムシの研究をしているので。

藤沢:ちゃんと堀川さんの本読みましたよ。クマムシって、過酷な環境にも耐えられるタフな生物なんですよね。放射線とか、超低温とか、真空でも生きられるという。

堀川:そうですね。乾燥してカラカラになっても仮死状態で生き延びるんです。

藤沢:宇宙空間でも生き延びるんですよね。

堀川:そうなんです。フランスに来る前は、アメリカのNASAでクマムシを研究していたんです。いわゆる宇宙生物学というジャンルなんですが。

藤沢:なるほど。クマムシの耐性を他の生物で再現できないかとか、研究してるんですよね。

堀川:ええ。たとえば移植用臓器の乾燥保存とか。究極的には人間カップラーメンですね。人間を丸ごと乾燥させて保存して、お湯をかけると復活するみたいな(笑)。他の惑星に旅するときにも、乾燥状態で何年間も過ごして、目的地到着の直前に復活したり。色々な用途が考えられますね。

藤沢:パリでポスドクをしながら、そのクマムシの耐性のメカニズムの研究をしているわけですね。

堀川:そうです。今は基本的なメカニズム、たとえばなぜクマムシが乾燥したり高線量の放射線を照射されても大丈夫なのか、ということを解明しようとしています。メルマガでは最新のクマムシの知見とか、その他の最新の生物学の知見などを、面白おかしく紹介しています。動物の恋愛を含めた行動生態学についても書いているので、藤沢さんの恋愛工学に少し共通する部分もありますね。

藤沢:まあ、ちょっとクマムシだけだと、マニアック過ぎますからね(笑)。

堀川:そういえば僕がメルマガをやっていて意外だったのは、読者さんから結構な量のメッセージが来ることですね。それまでもブログにメールアドレスを公開していたんですけど、メールなんてまず来ないんですよね。メールってけっこうハードルが高いので。でも、メルマガを始めてからは感想とかがメールで送られてきたりします。ブログと違ってポジティブなのばっかりなんで、それはうれしいですね。応援してくれてるんだな、というのがわかりました。

この前、オフ会みたいなのをやったんですね。クマムシ観察会なんですけど。メルマガ読者限定でやったんですけど、実際に来たのは女性が9割近くでびっくりしました。実際の読者は男女比が半々くらいなんですが、会いにきてくれる人は女性が多いぞ、と。その辺も意外だったりして。

藤沢:女性が9割って凄いですね。

堀川:虫とか、男の趣味っぽいじゃないですか。でも、女性が多いんですよ。

藤沢:子供の頃は男の子はすごく虫好きだけど、ある時、急に嫌いになりますよね。嫌いにならなくても、なんかどうでもよくなる。逆に大人の女の人のほうが虫が好きなのかも。クマムシは昆虫ではありませんけどね。

堀川:小学生の頃とかは、虫好きの女の子はクラスでカミングアウトしづらいんじゃないかと思うんですよ。周りから変な目で見られてしまいやすいというか。でも、20代や30代になると、そういうことを気にしなくてすむので。もちろん、大人になってムシ好きに目覚める人もいると思いますけどね。あとは、「虫好きの博士が好き」みたいな、そういう「虫博士萌え」の人もいるかも。

藤沢:理系男子ですね。堀川さんのファンクラブですね(笑)。

堀川:そのカテゴリーなのかな、と。これは定性的な話ですけど、女性は、男性に比べると異性に対する好みがものすごくバラけていると思うんですよ。

藤沢:そうなんですよね。女の人のほうが「蓼食う虫も好き好き」ですよね。

堀川:たとえば、流行りのアイドルとかモデルとかって、そんなに違いは無い。おじさんになると顔の区別がつかなくなると言われるぐらいみんな似ている。もちろん、スラッとしたタイプの女の人が好みの男性もいれば、ぽっちゃりした感じが好きな人もいます。ギャル系が好きだったりゴスロリ系が好きだったりと、様々です。でも、やっぱり、男性から見た場合の「理想」の女性のストライクゾーンはかなりかぶるし、大きな差異は無い。それは、男性向け雑誌の表紙やグラビアを飾る女性の容姿に如実に表れている。そのモデルについての情報だって、年齢に加えて身長、体重、そしてスリーサイズがお決まりでついてくる。男はきわめて単純な物差しで女性を評価しているな、と。

けれど、女性から見た男性の好みって凄くバリエーションがあるんですよ。外見的特徴にしても、年齢にしても、属性にしても。いわゆるイケメンじゃなくても、面白かったり、何かのツボに入ればOKとか。「虫博士」というジャンルに萌えてしまう女の子までいるわけで・・・。

藤沢:女の男に対する好みのほうがバリエーションが圧倒的に多くって、男の人の場合、女の人の好みってやっぱり外見なんですよね。もうみんな似てて「若くて可愛い女」っていう、一言でいえば・・・。とにかくセックスしたい女というのはそうですよね。付き合うとなると、性格とか色々あると思いますけど。

進化論的に考えたら当たり前で、オスにとってはなるべくたくさんのメスを孕ませることが遺伝子プールの中で、自分の遺伝子の陣地を増やす最適戦略になる。だから、妊娠しやすく、健康な子供をたくさん産めそうなメスを追いかけることになる。

堀川:藤沢さんは金融が専門なわけですけど、そういう金融工学、そして生物学や心理学を取り入れた恋愛工学というのをメルマガで展開しているわけですが、利害が異なる男女それぞれの立場に立って好きな人を手に入れるにはどういう戦略を取ったらよいか、ということを解説されていますね。

生物学的には、動物のオスは精子を無数に作れる一方で、メスは持っている卵子の数が決まっている。メスはその上、妊娠や授乳の期間があるので時間などの様々なコストもかかる。生涯に残せる子供の数の理論的な最大値がオスとメスでは全然異なります。だから、オスは数の戦略で、とにかく多くのメスと交尾をして自分の子供を作ることがよいわけですよね。でも、メスは数よりも質、よいオスの遺伝子が欲しい。オスを選り好みする傾向があるわけです。

藤沢:それが進化生物学的な男女の恋愛観ですね。それと人間って、子供を育てる期間がすごく長いから、男の人の社会的ステータスとか、子育てするのにいい環境をこの人は作ってくれるかっていうのが重要なんですよね。だから、女の人は、まずは自分の遺伝子との相性で相手の男を選ぶし、遺伝子と関係ないところの社会的な、男の人がどう成功しているかとか、どうやさしくしてくれるとか、いい家庭を築けるかっていうのを見ているから、選び方も多種多様なんですよ。でも、男の人が本能的に見てるのは女の妊娠能力が大きいんですね。

堀川:そうでしょうね。そうしたオスとメスの進化論的対立は、軍拡競争の様相を呈しています。これはメルマガにも書いたんですけど、アメンボだと、オスはほとんどレイプみたいな感じでメスの上に乗って交尾しようとするんですよ。しかも、なるべくしっかりとメスにしがみつけるように、オスの触覚がフックみたいな形になっていて、それをメスの目玉に引っ掛けるんです。

で、メスはメスで、オスがしがみついても交尾できないように、ペニスを挿入できないように、自分の生殖器に可動式のシールドを進化の過程で作り上げたんです。まるで、お店のシャッターが閉まったり開いたりする感じですね。オスが交尾をしようとしても、メスのお店のシャッターが閉まっているので、入店できないんですよ。気に入ったオスの時だけ、シャッターがガラガラと上がって、お店の中に入れる、と。

藤沢:なるほど。そうやってアメンボのメスはオスを選り好みするわけですね。

堀川:そうです。でも、オスはさらにすごい方法を進化させて。アメンボって、水面にいるじゃないですか。で、メスが交尾を受け入れないと、オスは水面を脚でバンバン叩いて自分たちの天敵の虫を水中からおびき寄せるんですよ。この天敵の虫はマツモムシというのですが、このマツモムシが下から攻撃してくると、いつもメスだけが致命的なダメージを受けることがわかっているんです。オスはメスの上に乗っているので、マツモムシの攻撃を回避できる。

もう、メスからしたら、天敵に殺されるか、それともオスのレイプを受け入れるかの究極の選択を迫られるわけですね。もちろん、死んでしまってはどうしようもないので、オスとの交尾を受け入れるわけですが。まあ、こんな感じでオスとメスの対立、駆け引きはシビアですよね。人間にしても、男女の間で異なる思惑とかを持っているので、自然と利害が対立してしまう。藤沢さんはそのあたりをテーマにして、メルマガを書いてらっしゃると思いますが。

藤沢:いや、それはテーマではないですね。

堀川:じゃあ、愛がテーマとか?

藤沢:テーマはね・・・、それは秘密です(笑)。

堀川:はぐらかしますね(笑)。

ところで、ぼくが面白いと思うのは、たとえば社会的ステータスとか、お金とか、忠誠心とかね、そういうのを女性が重視しているのはわかるんですけど、明らかにお金が全然なかったり、浮気性だったり、いわゆるヒモみたいな男にメロメロになってしまう女の人はけっこういるわけですよね。

藤沢:恋愛工学でもダメンズの魅力はまだ完全には解明されていないんです。僕が思うにダメンズがモテるひとつの理由は、女の人は、この人の良さは自分しかわからないっていう、そういう感覚がときに大切だったりして、なんかツボに入ることがあるんだと思います。自分しか良さがわからないってことは、男を他の女に盗られる確率が少ないわけだから。そういう意味では、進化論的な合理性はあるんですよね。でも単なる非モテじゃなくて、なんかキラッと光るものがないとダメだと思いますけど。

堀川:虫博士萌えとかも、そうのなのかもしれませんね。

藤沢:あとね、女の人って、お金持ちが好き好きっていうわりには、女の人の脳ミソって現代のお金の価値を過小評価していると思うんですよね。これは世間の常識に反しているんですけど、僕は女の人はお金の価値をみんながいうほど重視してないと思ってるんですよ。本能的な部分では。

お金って最近出現した物だから。どこからが人類かってのは定義によりますけど、基本的に人類が生まれてから3万年くらい経ってるでしょ。その間のほとんどが狩猟採集時代なんですよ。それで農業なんかが生まれたのは最近の出来事だし、お金なんてものがこれだけ幅を利かせるようになったのなんて進化論的なタイムスケールで見れば、最近のほんの一瞬の出来事ですよね。だから、まだ女の人の本能は、お金の価値を直接的には認識できないような気がするんです。

だから、年収が5千万くらいある人と、年収500万円で誠実そうな人を見たら、多分年収500万円で誠実そうな人を、Good Dadだろう、いい父親だろうと認識するようになってるんですよ。意外とね、お金を過小評価してるんですよ。女子の脳ミソは。
相手がまともな仕事をしてれば、最悪、男が他の女のところに行ってしまっても、法治国家の日本では養育費とかちゃんと取れるわけだから、表面的な誠実さよりは、そういう法的な権利関係を見たほうが合理的なんですけど、女の人の脳ミソの進化はそういうことには全く追いついていないですね。

堀川:日本人に比べると、西洋人の男性って、ヒモになる人が凄く多いんですよ。要するに、メンツ的に女の人に頼ることを全然気にしないんですよ。でも、親に頼るのはすごくメンツがつぶれるんで、絶対親には金銭的援助を頼まない。

藤沢:それは欧米人といっても国によって全然違って、アメリカはお金の価値が強いからそうでもないけど、フランスとか北欧とかの大陸系は男が養って貰うのに何にも悪びれないですね。逆に一緒に子育てとかやるけどね。

堀川:そうなんです。で、無職で、「俺は音楽でビッグになるから」、みたいなことを言い続けて、家でテレビゲームばかりしていたり。その結果、その男の彼女の方は凄く貢がされて。で、彼女も彼氏に文句を言うんだけど、でも離れられない。そんな日本人やアジア人の女性を国外で多く見ました。

あと、彼女がそういう彼氏に文句を言うと、その彼氏は開き直って彼女のことを上手いことディスったりするんですよ。で、たまにすごく甘い言葉で彼女をなだめたりとかして。結局、文句は言うんだけど、離れられない。

藤沢:ダメンズはね、やっぱりいいんですよ。現代社会では、生活ができないダメな男だけど、あれが石器時代では割りと役に立ったと思うんですよ。いつも近くにいるし、他の女に盗られないし。

堀川:まあ、だから近くにいるということは凄く大切なことですよね。子育てに協力したりとか、外敵から身を守ったりとか。

藤沢:逆に、高学歴で仕事をいっぱいしていた人のほうが、子孫を残せなくなってる。現代社会ではね。そういう人は、研究したり、ビジネスを一生懸命頑張ったり、ちょっとね、動物としての生き方から離れているわけですよ。

堀川:そうですね。日本国内でも、東京都民は富裕層が多いけれど、出生率は全都道府県中最低ですし。いずれにしてもモテたければ、仕事をバリバリするよりも、音楽にしろ何にしろ、本能的に訴えるほうがいいかもしれませんね。動物の求愛行動みたいに。

藤沢:僕ね、動物行動学とか進化生物学とかを勉強したのって10年以上前だから、リチャード・ドーキンスの『利己的な遺伝子』とか、一般書では竹内久美子さんの本とかけっこう熱心に読んでたんですけど、当時の利己的な遺伝子仮説を人間に応用したような一般書って、だいたい、無理やりこの行動は子孫の数を最大化するためにやってるんだよっていう説明になってるんですけど、ちょっとおかしいんですよ。たとえば、先進国のほうが子供の数がどんどん少なくなっていくわけだから。

それでこれに対するひとつの説明として、ネズミよりライオンのほうが産む子供の数が少ないみたいに、食物連鎖なんかで上のほうの強い動物ほど少ない子供を産んで確実に育てようとするから、人間も、豊かな先進国のほうが子供が少ないんだ、みたいなことが言われますが、これは明らかに間違ってると思うんですよね。だって、ネズミもライオンも子孫の数を最大化するように進化してきて、エサなどの限られたリソースのなかでの最適な子供の数が決まってきているわけです。目的は、子孫の数の最大化に違いない。だったら、エサが無限にある先進国のほうが、子供を産めば産むほど増えるわけで、先進国で少子化になる理由にはぜんぜんなってないんです。

それで、僕は、人間の脳って、狩猟採集時代にほとんど作られてて、最近の100年、200年の急速な科学技術や資本主義経済の発展にまったく適応していないと思っていて、それが先進国の少子化の理由だと思ってるわけです。遺伝子の立場から見れば、性欲を使って個体を扇動して子孫繁栄していて、狩猟採集時代にはそれでよかった。でも、いまはコンドームもピルも中絶手術もあって、性欲だけでは子供が生まれなくなった。それで、人間の本能は、コンドームをつけると妊娠しないなんてことは認識できない。人間のオスって、メスとセックスしたいという極めて強い欲求はあっても、子供が欲しいという欲求はそんなにあるわけじゃないですからね。先進国が少子化になるのは、たったそれだけの理由だと思うんですよね。

人間の脳が、本質的には狩猟採集時代のままだと考えれば色んなことが説明できると僕は昔から思っていて、そういう考え方って、進化生物学なんかの学会では当たり前なのかと思っていたんだけど、じつは最近数年くらいに出てきて、まだ議論している段階なんですよね。

だから、恋愛工学だと、女の人は相手の遺伝的な資質と子供に対する環境を提供できるっていう、Good GenesかGood Dadのふたつを見ているっていうのは確かにそうなんだけど、その見方っていうのは、1万年前の狩猟採集時代と同じなんですよ。だから女の人が見ているイケメンっていうのは、その時代に流行った寄生虫や病原菌やウィルスに対する免疫力なんかを見ているはずなんですよ。

誠実さとかそういうのも、その時代の誠実さで、今の時代の誠実さじゃない。現代社会では、将来は音楽でビッグになるとか言いながら、家でテレビゲームばっかりやってる男は、別に役に立たないわけ。でも、石器時代だったら、そういう人はどこにも行かないわけだから、ある意味ちょっと役に立つわけですよ。現代社会では、不誠実なお金持ちのほうが、本当はGood Dadとしての本質的な価値があるんだけど、女の人の古い脳ミソがそれを認識しないっていうのが、僕が思ってることなんですよね。

堀川:それはね、合ってる気がします。イケメンとか、マッチョな男もモテることがありますね。

藤沢:イケメンはべつにそれはそれで良いんだけど、女の人がGood Dadを見ることに関しては、石器時代のままだから、現代社会にはフィットしていなくて、だから、意外と変な男がモテると思うんですよね。

でもね、イケメンはイケメンで良いんですよ。イケメンはなぜ良いかというと、これもさっき言ったように、もともとは寄生虫や病原菌やウィルスに対する免疫力とかそういうのをメスが見極める手段だったと思うんですよ。でも、そういうタイプの男がモテはじめると、そういうタイプの外見だけでモテはじめるから、今度はルックスそのものが価値があるようになってくる。孔雀の羽みたいな。

孔雀の長い羽は生存上有利にならないけど、美しい羽は免疫が強くないと長く伸ばせないらしいんですよ。最初はきれいな長い羽っていうのは病原菌やウィルスに対する強さの目印だったんだけど、それをメスが見分けようとすると、今度はただ単に、羽が長いだけでモテるようになるから、どんどん羽が長くなってくるんですよ。

堀川:それは性淘汰ですね。

藤沢:羽の長さが、生存上、これ以上長くなったら生きられないってところまでいっちゃうんですよ。

堀川:ランナウェイ仮説ですね。だから、イケメンも孔雀の羽的に、それが生存するためになんの役に立たなくても、それだけで価値が出てくる。メスに好まれるオスの特徴が、オスの遺伝的資質を表すシグナルになっていたんだけど、今度は何らかの本質的な価値に結びついていなくても、その外見を持っているだけでモテるから、そのモテるための外見の特徴だけがどこまでも強調されていく、という。

藤沢:だからもともとはその伝染病に対する耐性を見分けるためだったと思うんですけど、そういう孔雀の羽的な進化をしたかも知れないですね。つまり、イケメンは遺伝的な優秀さとは関係なくなって、単にイケメンはモテるからイケメンに価値がある、みたいなトートロジー的な意味のない価値になったわけです。

堀川:いったん羽の長い孔雀のオスがモテはじめると、子孫は羽が長くなっていって、もうこれ以上伸ばすと生存できない、というギリギリのところまで性淘汰で行っちゃうわけですね。ランナウェイ仮説というのは。

藤沢:堀川さんは、現在、フランスに住んでいますが、フランス人とかイタリア人の男の人はやっぱり恋愛上手ですね。普通の人でも街でナンパしてますからね。

僕ね、フランス人の男の人は、独特の倫理観を持ってると思うんですよ。アメリカ人とかイギリス人は、友達の奥さんとかはやっぱり避けるんですよ。でも、フランスの男はそれを悪いこととは思ってないんですよね。もう、身内でぐちゃぐちゃしていて平気みたいな。

堀川:そういう話をフランス人に振ると、それは誤解だろ、みたいなことは言いますよ。でも、わからないです、その国の人たちはよその国に行かないと、自分の国の文化のことを客観的に見れませんからね。僕も、海外に住んで初めてわかった日本人の特徴がありますし。だから、フランス人の恋愛に関する倫理観というのも、どれくらい違うかはわからない。

藤沢:フランス人の男って、友達の彼女とか職場の微妙なところにもガンガン行って、それを悪いことだとぜんぜん思ってない。

堀川:それはあるかもしれない。これは実際によく見聞きするんですけど、既婚者だとわかっていながら口説く人がいますからね、こっちは。このまえ、僕の親しい子どもがいる既婚女性が眼科で診察を受けたんですが、彼女はその時に眼科医から口説かれたと言ってました。「今度、ウチに遊びにきてよ。でも、子どもは連れてこないでね」って。日本じゃまず考えられないですよね。でも、日本では社内不倫が多いって聞きますけど、どうなんですかね。統計はわからないですけど。

藤沢:多いんじゃないですかね。だって。日本って逆に、外での出会いが少ないから。

堀川:あとは基本的に欧米の人たちは、みんなだいたい、仕事が早く終わって、家族やカップルで一緒に過ごすのが普通ですから。

藤沢:いや、仕事が早く終わるのはフランス人だけですよ。イギリス人とかは働いてますよ。

堀川:まあ、北欧も早く仕事が終わりますけどね。4時とか5時には終わってる。

藤沢:アメリカとイギリスは日本と同じように働いていますね。エリート層は、日本よりも労働時間が長いと思います。

堀川:日本だと割と残業があったりとか、つきあいや呑み会があったりとかで、家族とか恋人と顔を合わせない、グレータイムみたいなのがあって、そこでうまくやりくりして、不倫が起きたりとかもあるのかな、と。そういうところに時間を使いやすいかな、という気もしますよね。

藤沢:デュレックスの調査だといつも日本人はセックスの回数が一番少ない。主要国の中で圧倒的に少ない。

堀川:少ない。ギリシャあたりが1位ですよね。

藤沢:ギリシャとかフランスとかね。日本は圧倒的に少ないですよね。

堀川:バーチャルのほうに向かっている、というのはあるんですかね。たとえばポルノとか、2次元のほうに向かったりとか。これも明らかに日本人の文化的な特徴なんですけど、オタク気質というか、リアルの人間関係よりも、妄想、ファンタジーの世界で楽しむのが好きな人が多いですから。

藤沢:もともと、日本人の男は、性欲も少ないような気がしますね。

堀川:会社の人間関係のほうが大切ということですかね。

藤沢:いやもう、遺伝子レベルで少ないんじゃないかな。

堀川:それはどうかと思いますけど。

藤沢:日本って稲作文化だから、稲作って村の秩序が大切だから。そこで、性的に活発な男は村八分にされて殺されちゃったと思うんですよ。そういう淘汰の圧力が働いたんだと僕は思ってますけどね。

堀川:数十世代ぐらいで、そこまで変わりますかね。

藤沢:稲作が始まったのが縄文時代くらいじゃないですか。数千年前は、もう稲作が始まって村社会がはじまって、昔は多分15歳くらいで子供を作ったと思うから、千年で70世帯くらいが交代するんですよね。だから稲作が始まってから300世代くらいはいってるから、人間の性格が変わるのには充分だと思いますね。

堀川:まあ、そういう閉鎖的な文化が日本中のどこでも強く根付いていたとしたら、それが淘汰圧となって、世代を重ねるうちに遺伝子レベルでも変化が起きるかもしれないですが。ちなみに、夜ばいはどのくらいあったんですかね。僕は専門外なのでわからないですが、たとえば、初潮が起きて、赤飯を炊くと、それが合図でそのあとに。

藤沢:夜ばいっていうか、やっぱり村のしきたりとか、権力者にアレンジしてもらってという活動が多かったと思うんですよね。だから日本の会社とかは、ああいう文化ができているんじゃないかな。

堀川:そうやってヒエラルキーの強い文化ができてきた、と。

藤沢:でも欧米も別にヒエラルキーが強いですけど、もうちょっと違うヒエラルキーですよね。違う種類のね。日本は同調圧力が強いですよね。

堀川:僕は、前はアメリカに住んでいて、今はフランスに住んでいるんですけど、日本の一番特徴的な文化って何かなと考えると「同調圧力」だと思うんですよね。他人のことをものすごく気にするし。たとえば、凄く単純なところで言ったら、実名でブログを書くことにしても、職場の半径5mにいる人間から、「あいつブログなんか書きやがって」みたいなことを思われる。そんなちっちゃいことですら同調圧力を感じてしまうみたいな。

藤沢:同調圧力というか、出る杭を打つというか。だから恋愛とかでも、自由に抜け駆けしてやっちゃう人は、叩かれる。それが、デュレックスの調査結果につながってるんじゃないかと思ってるんですけど。

堀川:そこにつながりますかね。

藤沢:でも明らかに性格は違いますよ。アングロサクソンの人たちと日本人は。僕自身は、大学のサークルとか研究室とか、そういういかにも日本的な集団のなかにいたときは、なんか僕はすごく違うタイプの性格というか、そういう日本的な組織には合わないとずっと思ってました。それも、海外に行こうと思った大きな理由ですね。

堀川:どんなところが?

藤沢:合理的というか、こう考えてこうだったらこうでいいじゃん。なんでそんなふうにやらないといけないの、みたいな。あと、個人主義なところ。僕は僕、君は君、みんな違っていいじゃん、みたいな。同調しようとかもぜんぜん思わないし。

堀川:僕も少しそういうところがあります。

藤沢:あと、日本人って嫉妬心が特殊だと思うんですよね。欧米とひとくくりにはできませんが、あっちの人たちも凄く嫉妬深いんですよ。会社で出世競争をしていて、自分のライバルがいると、めちゃめちゃ嫉妬深くて、ホントにたたきつぶそうとする。組織の中で権力がある人に媚びたりもするし。でも、あの人達の嫉妬深さは、あくまで自分の利害関係の上の嫉妬深さなんですよ。

堀川:わかります。

藤沢:自分の利益のために嫉妬深くなってるんですよ。自分の利益を脅かされるから、そいつを叩き潰そうとする。でも、日本人は、全然利害関係のない人がいきなり嫉妬深いんですよ。

堀川:そうそう。端的なのが、ダルビッシュとの離婚で月に生活費が1000万円とかで噂になったサエコさんに対するバッシングとか。

藤沢:まあ、程度の差ではあるんですけど。

堀川:叩いても自分の利益にならないのに、全然関係ないところに嫉妬の炎を向けていく、というのは凄く感じますね。日本人の嫉妬心なんかが遺伝子レベルで違うことが分かったら凄くおもしろいですけどね。

藤沢:分子生物学的な遺伝子レベルできっちりわかることは、多分ないですよ。人間とチンパンジーでもDNAの99%が共通みたいですし。色んな心理学のテストで、違うよ、っていうのは証明できるかも知れないけど、DNAの配列レベルでは証明できないですよね、多分。

堀川:まあ、いまだとなかなか難しいでしょうね。でも、ヒトでもうつ病と関連する遺伝子の候補も出てきているし、環境にすごく左右されそうな学歴についても、相関する遺伝子が最近報告されていますからね。一般的には、性格を決める遺伝子はひとつじゃなくて、複数がかかわっていると考えられているので、解析は大変だと思いますが。ただ、行動遺伝学もだいぶ盛んに研究されているので、けっこう近い将来、民族間の性格の違いが遺伝子レベルでわかるんじゃないかな、という気がします。

藤沢:テストステロンだとか、人間の性格に影響を与える生化学物質の分泌の濃淡なんかのちがいはわかるかもしれないですね。僕も、恋愛工学は、今後は、そういった生化学物質にまで遡って、いろいろな恋愛戦略を考案していかなければいけないと思っているんです。

堀川:それは楽しみですね。僕もクマムシの研究を頑張ります。

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ライタープロフィール

藤沢数希
藤沢数希

理論物理学、コンピューター・シミュレーションの分野で博士号取得。欧米の研究機関で教鞭を取った後、外資系投資銀行に転身。以後、マーケットの 定量分析、経済予測、トレーディング業務などに従事。ブロゴス2011年の経済部門では、経済・金融賞を受賞し、活躍は多岐に渡る。また、高度なリスクマネジメントの技法を恋愛に応用した『恋愛工学』の第一人者でもある。 月間100万PVの人気ブログ『金融日記』を運営。恋愛情報が豊富なメルマガも大人気!