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  • 2016.11.14

(続き)「北京五輪銅メダル。一児の母」

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前回の内容に「何がいけないの?」的反応がありました。
「スポーツ選手が結婚していると、なんだか安心する」
「子どもがいるスポーツ選手見ていると、自分も頑張ろうって思える」
だから、そういう情報が欲しいのだとか。
なるほど、こういう人たちのためにメディアは「00年結婚。一児の母」とプロフィールに書き添えてあげているのだとすると、
今時のスポーツ選手は、芸能人なみに私生活を切り売りして“親近感”を得ないといけない大変さにちょっぴり涙がでそうに……なわけがありません。

なんと、大衆は残酷なのかと絶望的になりました。

オリンピック女性選手に「できちゃった婚」の後、復帰した人がいたり、「できちゃった婚」のために2度目の大会を逃したりした人がいます。
各国それぞれ過去を振り返ってみると、一定数いるのです。

ここで、具体的な選手名を挙げることは避けますが、
厚生労働省の報告(平成17年)によると、日本において「結婚期間が妊娠期間より短い第一子の出生」、いわゆる「できちゃった婚」の割合は26.7%です。
第一子の4人に1人は婚姻前に妊娠した子どもということ(ちなみに県別1位は沖縄県46.8%、最下位は神奈川県20.3%)。

この数字には何の問題もありませんし、妊娠のタイミングはいつでもいいわけで、結婚なんかそもそもする必要もないといえばありません。
婚外子差別など消滅してもらいたいし、緻密な計算と策略のもとに婚前妊娠を謀る人もいるでしょう。
女性が選び取る「できちゃった婚」なら、「できちゃった」と表現する下品さを排除するまでもなく、喜ばしいことでどんどん推進していっていただきたいもの。

が、第一線のスポーツ選手が「できちゃった」となると、一瞬固まります。

―彼女の選手生命どうなるの?



☆スポーツ選手のキャリアを台無しにする「妊娠」を引き起こす男たち
いわずもがなですが、スポーツ選手は体が資本。

小さいころ陸上の選手だったものの、その後運動オンチが発覚した自分が言っても何の説得力もありませんが、徹底した訓練、食事管理を毎日続け、生活そのものが競技をささえる繊細な日々です。
オリンピックなど、その日の、その一瞬のために何年も積み木を重ねるように過ごしていく。
代表候補選手がケガをしたら、新聞がこぞって取り上げるのは、
スポーツという職業がひとつのケガによる休養が数年先の大会に響くくらい
繊細で常人には耐えがたい毎日の積み重ねによるものを知っているからこそです。

なのに、妊娠です。

10か月、トレーニングができなくなる。

3日トレーニングをしなかったら、取り戻すのに3月かかると言った陸上選手がいました。
スポーツ選手でなくても、楽器を演奏する人にもそれは言えます。
学生時代フランスでベビーシッターをしていた先のオルガニストは、「2日休んだら、元の感覚に戻るのに2週間かかる」と言って、
出産直前まで練習を続け、産後3日目で仕事に戻っていました。


それを思い出すと、同じスポーツ選手でありながら、なぜ自分の彼女が小さいころから丁寧に積み上げてきたキャリアを棒に振らせるようなことができたのだろうと、憤懣やるせない。

女性側がどうしてもやめたくて、もしくは休みたくて、ご利用を計画的に進めた「できちゃった婚」ならいいですが(でもやはり、それも言い訳を作るために子どもを利用しているようで、すんなり「別にいいのでは」とは言い難い気が)。


女性スポーツ選手の一生は、男性選手と比べなんと障壁が多い(兵役ある国などは男性もですが)のだろうと。
扱われ方も、選手生活の組み立て方も……。


芸能界も最近はあえて、誰の許可もとらず妊娠・結婚をする女性が増えています。
「親近感を持ってもらう」以外に、芸能とスポーツこんなところでも共通点があります。


結婚しようがしまいが、出産しようがしまいが、そのために失う時間と身体がすぐに取り返せるなら、「北京五輪銅メダル。◎◎年結婚、一児の母」と無邪気に掲載するテロップも、無視できますが、
女性スポーツ選手が結婚・出産に向き合うときの大変さを想像すると、「無邪気に説明してんじゃねえよ」とキレたくなるのは、自分だけでしょうか?

事務所に猛反対されてもアイドルとできちゃった婚したあの女優さん、出産後うまく復帰できるといいな(ボソッ)


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ライタープロフィール

小山圭一
小山圭一

フランスのリヨン大学第2大学にて「女性学」を学んだ後、テレビ制作にディレクターとして関わる。退社後、コンデナストパブリケーションズジャパンにて『VOGUE Nippon(現VOGUE Japan)』の編集者に。2年間、ファッションやライフスタイルページを担当。2008年、フリーエディターとして雑誌編集、及び執筆業をスタート。『marie claire』(アシェット婦人画報社)や『SPUR』(集英社)などに関わり、主に女性芸能人へのインタビューやファッションページなどを手がけている。フランス留学時に学んだ「女性学」結婚やキャリアに関する研究ベースとした、世界各地の恋愛事情に造詣が深い。
facebook:小山圭一