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  • 2016.11.14

恋に必要なのはfriendship!(続き)

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前回ちょこっと紹介した映画『ファクトリーガール』が“friendship”の不在による悲劇を的確に表現した映画だと、確か書いたので、その続きをば……。
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ファッショニスタ、シエナ・ミラーが60年代NYのit girlイーディ・セジウィックを演じた、ファッション界で公開当時話題をさらった映画です。
2012AWでもアナ・スイやDsquared2などにも見られた60sファッションが楽しめて、今シーズンのムードを感じるのにも最適な作品。
Dior、Erickson Beamon、Rodo、J-Mendelなどのブランドも協力しているだけあるので、スタイルを見るだけでも楽しめますが、ストリーがまさにこの“2種類の友達”を描き切っていて秀逸!



  (映画公開時の予告編はこちら)

イーディはイギリスの旧家に祖を持つお嬢様
異常なまでに厳格な家(作品中は父による性的暴力と、同性愛者の兄の自殺などが背景に描かれています)を飛び出し、アートを学ぶためNYに移るのですが、
イノセントなキャラクターと圧倒的で華やかな見た目から一気に社交界の華となり、そこであのアンディ・ウォーホルと出会います。
同じように親との関係をこじらせ、当時まだまだただの“異端児”的存在のアーティストだった彼は、イーディとともに表舞台へ。
時代の寵児となります。
彼らを中心に“ファクトリー”と名付けられたアトリエは、同じように行きづらさを感じつつも、才能をくすぶらせていた若いアーティストたちのたまり場となり、そこからコネクションを掴みスターになる者も。

無邪気なイーディは自分を仲間にしてくれたアンディの広告塔的存在に進んでなります。
さらに、イーディは初めてできた“オトモダチ”に嫌われないように、「優しさ」からアンディを褒めたり、わかりやすい世辞を言ったり……。

2人は“ファクトリー”を有名にするため蜜月関係というか、共犯関係のようになります。

結果ついに“ファクトリー”はマスコミの注目を集め、彼女自身も伝説のエディター、ダイアナ・ヴリーランドに引き立てられ、VOGUEやBAZAARにも登場し、時代を象徴する女性として紹介されます。
http://www.flickr.com/photos/56938397@N03/5292657387/(←イーディが飾った1965年Harper's BAZAARの表紙はこちら)
http://thredballoon.blogspot.jp/2012/05/style-crush-edie-sedgwick.html(←映画の1シーンにも出てくる有名な写真はこちら)
http://weheartvintage.co/tag/edie-sedgwick/(←珍しいカラー写真も)


※注:以下ネタバレあります

しかし、イーディに運命の人、ボブ・ディラン(劇中では「ビリー」という名前になっていますが)が現れます。
これまでの“ファクトリー”に所属した関係ではない、全く別の世界から来た男性。
映画の中でも、“ファクトリー”の小さな世界とは対照的な、広い世界で生きる孤高の歌手として描かれています。
小さなチームの中にいた、お金はあって有名人だけれど内向きに集っていた少女が、初めて自分と正面から向き合ってくれる人と出会うのです。


皮肉なことに、この運命の出会いが彼女の崩壊のきっかけになります。
態度はイケ好かないものの、人を見る目があるビリーは気付きます。
イーディの周囲にいる人間が、“ファクトリー”という“所属”だけを頼りに繋がった“オトモダチ”であって、“友達”ではないことに。
ある時は広報として、ある時はお金を都合よく工面してくれる会計係として、「利用している」ことに……。


アンディは、ビリーというすべてを持っている(ように見える)男性を見つけてしまい、自分が「世話できる」対象ではなくなったイーディを、仲間外れにします(まさに“仲間外れ”という幼稚な言葉がぴったりな子どもっぽい方法で)。
代わりのアイコンを見つけ、無視し、悪意を持った言葉で“友だち”が彼女から離れていくように仕向けるなどなど。
思わず、「アンディ、きったねーの!」と言いたくなるシーンの連続で、一気にアンディ・ウォーホルが嫌いになるようにこの作品はできています(彼自身の哀しみもよくよく見るとわかるのですが)。
足抜けしようとする人間に対するグループ全体による、必死の妨害工作です(なぜならグループを抜け出した人間は、グループの価値を存在意義を否定してしまうから)。


ビリーはそんな状況を見て、ついにアンディと対峙します。
関係の薄弱さを、アンディ自身の弱さを暴露するかのように、喧嘩を売ります(ここでの、本当に強い個人を目の前にしたとき、群れていた人間特有の慌てふためきが生々しい)。
しかし、この行為をイーディは非難します。


イーディ:今のは何?! 私の友だちなのに!
ビリー:君の友だち? 奴は吸血鬼さ。君を利用しているにすぎない。君はヤツの小道具にしか過ぎないんだ。使い捨てさ。君は、アンディを憎むべきだ!
イーディ:憎めるわけない!
ビリー:イーディ、こっちに来いよ。一緒に行こう。君は怖いんだ。すべてを失いそうで。
イーディ:……(拒否する)
ビリー:わかった。元気でな。


“友達”と“オトモダチ”の見分けがつかない人は、friendshipを望む真の友人が近づいてきても無視してしまう。
“友達”を求めている人が、うっかり“オトモダチ”をそうだと誤ってしまうと、とてつもない喪失を得る悲劇を、この映画は辛辣なまでに生々しく捉えています。


映画の冒頭でアンディの言葉が紹介されます。
“彼女に惹かれた ― 一種の恋に近いと思う”


“恋”をしていたはずのアンディは一生涯イーディを理解することなく、自分から離れて行ったビリーが、実はもっともイーディを理解していたという皮肉。
そして、イーディは“オトモダチ”を捨てきれず、引き換えにビリー(=ボブ)という“友達”を失ったことで、最大の理解者とともに、“理解されていた自分”まで丸ごと失うことになります。
実際、イーディは28才という若さで、退院後、同じく麻薬依存症だった夫が外出中、過剰摂取で死亡。

最後のシーン、麻薬中毒患者用のリハビリ施設で過去を回想するイーディはこう言うのです。


「あの選択は人生最大の過ちだったわ」


companyship(=群れる人たち)に依拠した“オトモダチ”は、互いのことも、自分自身すら何も理解してなかったりする。
そのことを『ファクトリー・ガール』の最後に、崩壊していくイーディに関しアンディが教会の告解室でつぶやくシーンで理解させられます。

「僕が何をしたっていうんだろう、なんであんな美人が自分から醜くなろうとする?」


一斉に「オマエのせいだよ!」と、スクリーンに突っ込む右手の甲を向ける用意をしてしまうくらい、滑稽な、そして哀しい場面。



☆オトモダチとpartnershipの間のとてつもない隔たり
友人には2種類います。それを見極められなければ、さらに高度なコミュニケーション術である恋愛にはステップアップできないのではないかと思うのです。
2種類あっていい。でもその違いを見極められない人は、本当の恋を見極められないどころか、人の善悪すら見分けられない、といういいのは言い過ぎ?


“オトモダチ”しか作れなかった人が、“友達”という関係を知らないまま恋愛をしようとすると、そのあまりの違いに戸惑い、疲れてしまう。
なぜなら深い付き合いや深い思いやりを、自分の友人にすら抱いたことがないから。
他人の心情に入り込む恋愛という状況を、いきなり体験させられるわけですから。
最新の調査によると男性の約8割がそう(小山調べ)。
「恋愛はめんどくさい」
「辛いからしない方がマシ」
「感情とか疲れる」
などとつぶやいたらそれがサイン。
まずは、友達とは何か、ご自分で気付いてもらうしかなさそうです。


そうしてまた自分たちの父親を思い浮かべてみるのです。
会社、結婚関係、同級生に、バーの常連……所属をすべて取り払って、“友だち”を僕たちに説明したことがあっただろうかと。


ああ、この人たちは“恋”を知らない。



本当にfriendshipがあれば、“友達”と“恋人”の間はすごく狭くなる。だからsexのアルナシしか違いはないのだと思います。
ときにはsexすらも邪魔になるほど……。
friendshipがないpartnershipは、“オトモダチ”とpartnershipの大きな隙間をsex(または子どもで)埋めなければいけない。
だからこそ、「たかがsex」と言えないのじゃないか……と、結論を伝えようとしていたときには、友人2人は爆睡。
ひとり、黒生片手に「ブログにアップしよ」とつぶやいたのでした。ちゃんちゃん。


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ライタープロフィール

小山圭一
小山圭一

フランスのリヨン大学第2大学にて「女性学」を学んだ後、テレビ制作にディレクターとして関わる。退社後、コンデナストパブリケーションズジャパンにて『VOGUE Nippon(現VOGUE Japan)』の編集者に。2年間、ファッションやライフスタイルページを担当。2008年、フリーエディターとして雑誌編集、及び執筆業をスタート。『marie claire』(アシェット婦人画報社)や『SPUR』(集英社)などに関わり、主に女性芸能人へのインタビューやファッションページなどを手がけている。フランス留学時に学んだ「女性学」結婚やキャリアに関する研究ベースとした、世界各地の恋愛事情に造詣が深い。
facebook:小山圭一